
乳がん領域では個別化医療をめざし,サブタイプ分類や多遺伝子アッセイ,遺伝学的検査,がん組織のがんゲノム検査が臨床導入されている.乳がんの薬物治療はサブタイプ分類に基づいて選択される.原発性乳がんの周術期治療では保険適用外ではあるが,多遺伝子アッセイにより患者個人の再発リスクを分類することが可能になり,多遺伝子アッセイのリスク分類を使用して化学療法追加効果が検討されている.再発治療ではエストロゲンレセプター(ER),HER2の発現状況に応じて,遺伝学的検査やPD-L1検査を行い,治療方針を決定する.がんゲノム検査の導入により,免疫療法,遺伝性乳がんの治療,腫瘍ゲノム異常を標的にした治療や腫瘍ゲノム異常と既存の治療の抵抗性など,幅広く新たな知見が集積されつつあり,個人別に最適な治療が選択,実施できるよう,検査・治療薬の開発,適応への展開が注目される.