内容紹介
・うつ病は,生物学的要因,心理社会的要因,そして個々の人格や発達の特性が相互作用して発症する複雑な疾患である.働き盛りでの発症が多く,2030年代には社会的損失の最大要因になると推測されている.
・診断は精神科医の主観に頼り,治療は十分な効果を示さない抗うつ薬に依存する現状.いまだ解明されない病態メカニズムという大きな壁が立ちはだかるが,客観的な診断法と確実な治療法の確立は切実な課題である.
・そうしたなかでも,脳科学研究の着実な進歩が新たな光明を投げかけている.『医学のあゆみ』第5土曜特集として14年ぶりにうつ病を大特集.病態・診断・治療の3つの側面から,第一線の研究者らが最先端の知見を余すところなく解説する.
目次
病態
うつ病のゲノム研究とその臨床応用(藤野淳也・他)
うつ病の内分泌的研究─コルチゾールを中心に(中川 伸)
古くて新しいうつ病の病態仮説:モノアミン仮説(山脇洋輔・山脇成人)
うつ病の神経可塑性仮説─海馬の組織学的変化を中心に(森信 繁)
うつ病の神経細胞新生仮説(朴 秀賢)
うつ病の炎症仮説(岩田正明)
うつ病の病態におけるエピジェネティクス(宮城達博・淵上 学)
うつ病とアストロサイト(梶谷直人)
脳の免疫細胞ミクログリア─うつ病の鍵を握る隠れた存在?(古賀農人)
逆境的養育体験のうつ病に与える影響とそのメカニズム(戸田裕之)
慢性ストレスによる行動変容の個体差を創発する分子・神経回路メカニズム(内田周作)
高齢者のうつ病─老化・認知症との関連性(馬場 元)
診断
うつ病における構造MRI研究(原田 舟・松尾幸治)
うつ病治療のバイオマーカーとしてのガンマオシレーション(田村俊介・他)
fNIRSとうつ病(金沢徹文)
うつ病の血液バイオマーカー:mRNA(伊賀淳一)
うつ病におけるmicroRNAの役割,バイオマーカーの可能性(吉野祐太)
DNAメチル化に着目したうつ病の治療反応バイオマーカー研究(吉田朋広・沼田周助)
うつ病の血液バイオマーカー:テロメア(越智紳一郎)
うつ病の病態における脳由来神経栄養因子(BDNF)とインターロイキン6(IL-6)(吉村玲児)
うつ病の血液バイオマーカーを探索する─メタボロミクス(松島敏夫・他)
うつ病の音声バイオマーカー(徳野慎一・他)
治療
抗うつ薬の歴史と最近の進歩(竹林 実)
うつ病のプレシジョンメディスンの実現に向けて(島本優太郎・加藤正樹)
うつ病治療における補完代替療法の可能性(清水雄一郎・他)
うつ病治療における電気痙攣療法(ECT):歴史・作用機序・有効性と安全性(青木宣篤・他)
高出力ECT機器をどのように使うか(安田和幸・野田隆政)
うつ病におけるrTMS療法(橋 隼)
経頭蓋直流電気刺激(tDCS)によるうつ病治療の現状と展望(西田圭一郎)
脳科学研究が指し示すうつ病の認知行動療法の未来(大久保 亮)
うつ病治療における栄養学的配慮(功刀 浩)
睡眠障害に着目したうつ病治療(新里輔鷹・高江洲義和)
次号の特集予告
サイドメモ
ゲノムワイド関連解析(GWAS)
計算論的精神医学(computational psychiatry)
Neuropil
グリンパティックシステム
グリオトランスミッター
コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)
スパインヘッドフィロポディア
C3/C3aR経路
エピジェネティック修飾
HPA(視床下部-下垂体-副腎皮質)軸
ミトコンドリアと細胞老化
うつ病の精神療法
フォルマントと韻律
補完代替療法(CAM)
発作閾値
右片側性ECTの有効性と安全性
うつ病へのrTMS療法
現代生活において意識して摂るべき食材
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