
わが国では,次世代シークエンサーを用いて固形がん組織に生じているがん関連遺伝子の変化を一度に調べる遺伝子パネル検査が2019年に保険収載され,全国200超のがんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院・連携病院で保険検査として行われている.これらの検査では,体細胞変異の他,腫瘍変異負荷(TMB),マイクロサテライト不安定性(MSI),生殖細胞系列変異,LOHスコアなどが測定される.得られたゲノム変異データと診療情報は,医師たちと臨床検査企業の尽力により,がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に集約されている.現在,血液腫瘍などに対して新たな遺伝子パネル検査の実装が進められているとともに,固形がんにおいては,より侵襲性の低いリキッドバイオプシーを用いた遺伝子パネル検査の薬事承認申請もなされている.一方で,国内外を問わず,遺伝子パネル検査で得られる遺伝子変化の情報が患者の薬剤投与に結びつく割合は10%程度であり,その向上には意義不明変異(VUS)の解決,既知の遺伝子変化に対応した新規治療法の開発,新たな治療標的遺伝子の同定などが必要である.

遺伝子パネル検査,ゲノム医療中核拠点病院・拠点病院・連携病院,がんゲノム情報管理センター(C-CAT),リキッドバイオプシー,全ゲノムシークエンス