
発がんやがん細胞の増殖・生存をつかさどるドライバー遺伝子を標的とする分子標的薬は,高い奏効割合と無増悪生存期間の改善が得られるため,肺がん診療におけるキードラッグであり,個別化医療の要である.上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異を除く,個々のドライバー遺伝子陽性の割合は非小細胞肺がんの数%にとどまるため,患者の同定には網羅的な遺伝子解析が必要である.LC-SCRUM-Asia(旧LC-SCRUM-Japan)は全国・アジア規模で次世代シークエンサー(NGS)を用いた肺がんの遺伝子スクリーニングを実施し,ドライバー遺伝子陽性例の同定と臨床試験の登録に貢献し,ROS1,BRAF,NTRK,MET陽性例に対する分子標的薬の保険償還につながった.2020年7月までに日本の215施設と台湾の6施設が参加しており,スクリーニングを行った症例は1万例以上に達している.今後もスクリーニングを継続し,まだ治療標的となっていないドライバー遺伝子に対する分子標的薬の開発,血漿検体に対するNGSの臨床応用,耐性例に対する治療開発などをめざしている.

LC-SCRUM,個別化医療,次世代シークエンサー(NGS),肺がん,ドライバー遺伝子