
放射線治療は今日では悪性腫瘍の三大治療のひとつとして重要であるが,良性疾患の治療手段としての歴史も長い.現在でも放射線治療が行われているおもな疾患はケロイド,甲状腺眼症,デスモイド,翼状片,動静脈奇形,Langerhans 細胞組織球症,上咽頭血管線維腫,そして有痛性増殖性骨関節疾患である.放射線誘発癌のリスクについては,正常組織の防護を配慮した標準的治療では多くの場合,問題にはならない.世界中でもっとも認知されている良性疾患の放射線治療は,良性脳腫瘍を除くとケロイドである.ケロイドは肉体的かつ精神的な患者の苦悩が強く,おもに難治例・再発例に対し術後放射線照射が行われる.標準的術後照射線量は 15 Gy で,連日 3 分割で術後ただちに投与する.再発率は 10〜20%である.しかし胸骨部,肩甲部,恥骨上部は再発率が 30%前後と高いため,投与線量を 20 Gy/4 分割とする.耳垂のピアスケロイドは再発率が低く,10 Gy/2 分割でもよい.治療後しばらくは自己管理が必要である.

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