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236巻5号 2011年1月29日
第5土曜特集ロコモティブシンドローム運動器科学の新時代
“ロコモティブシンドローム”特集にあたって
第5土曜特集 ロコモティブシンドローム──運動器科学の新時代 “ロコモティブシンドローム”特集にあたって 中村耕三
  日本は世界に先駆けて超高齢社会を迎えた.臨床現場でも大腿骨頸部骨折や変形性関節症,変形性脊椎症の症例が非常に多くなり,それを実感する機会が増えている.
 日本で介護を必要とする人は現在 450 万人で,この 6 年間で約 2 倍に増加している.その原因として転倒,骨折,関節障害があり,約 5 人に 1 人は運動器の障害による.最近の研究では骨粗鬆症,変形性膝関節症,変形性腰椎症の変化がある人は40 歳以上で 4,700 万人いると推定されており,その数は今後さらに増えていくことが予想されている.
 2010 年 9 月の総務省の発表では,65 歳以上の高齢者は 2,944 万人,80 歳以上は826 万人と,はじめて 800 万人を突破したとのことである.長寿社会になり,多くの人々が運動器を 80 年以上という長期間使用し続ける必要が出てきた.
 この数が経験したことがないほど膨大なことが重要である.運動器の障害のある人が少数であったときの対応法の単なる延長では解決できない.新宿駅のように 1日 100 万人以上が利用する駅の運用システムを構築するのに,1 日 100 人程度が利用する駅の運用システムを単に大型化することでは対処できないのと同様で,あらたな発想が必要であろう.このようなあらたな時代を迎えていることを新しい言葉で表現する必要を感じ,“ロコモティブシンドローム”を提案した.
 年齢が要因となる運動器障害に関する研究は,いま急速に進歩している.本特集は,これらの進歩を“人が高齢になってもできるだけ自分で歩く”という視点でとらえ直し,あらたな発展を期待する基盤となることを目指した.“人が高齢になっても歩く”という目標を達成するには多くの側面があり,それを支える医療・医学は広範囲に及ぶ.
 日本は急速な高齢化のため,現在の状況を示す疫学データの集積が急がれる.貴重な研究として,大規模住民調査(ROAD study),運動器疾患の長期縦断的疫学研究,DPC データからみた運動器疾患の概要,転倒に関する疫学研究,地域住民の歩行形態の変化に関する縦断的研究などがある.
 本特集ではロコモティブシンドロームについてその概念,具体的な対処法としての自己チェック法,トレーニング法を紹介した.転倒予防教室や医療現場でも実績があがっている.また,運動器障害診断ツールの開発が進んでおり,現場で利用されていくことが期待される.
 運動器疾患の多くは保存治療が重要である.特に愁訴の多いものには,変形性膝関節症,腰痛のほか,姿勢の変化や脊椎・大腿骨頸部の骨脆弱性骨折が問題となる骨粗鬆症があり,これらについては臨床現場で有用な体操療法がある.また,運動器疾患のある高齢者を支えるには,在宅医療,地域連携パス,介護保険制度への理解が欠かせない.
 運動器変性疾患の医療をさらに発展させるには,その診断と評価により一層客観的な指標を開発していく必要がある.変形性関節症の本態である軟骨の変性,変形性脊椎症の本態である椎間板の変性について,画像診断,代謝マーカーに関する研究が大きく進歩している.筋肉は運動器の要素のなかでも再生力が優れていることから注目されており,筋量や筋力の評価法の開発やその経年的変化が明らかにされてきている.
 臨床的には運動器障害はそれぞれ個々の疾患についての対応と同時に,運動器全体として“起立・歩行”が可能であるかどうかという 2 本立てが必要である.このためにはおもな疾患と中高年者の姿勢と歩行,そして転倒の基礎への理解が重要である.運動器の構成要素に関する基礎研究として,骨,軟骨,筋肉,脊髄のバイオロジーは今後の発展を支える基盤である.
 立てる,歩けるということが当たり前ではなくなった時代が到来し,だれもがロコモティブシンドロームになる危険がある.本特集が運動器の科学の新時代の到来を伝え,今後の大きな発展につながれば,企画者としてこのうえない喜びである.
目 次
運動器疾患の疫学
大規模住民調査からみえてきた運動器疾患の実態――ROAD study……吉村典子 詳細
運動器疾患の長期縦断疫学研究……下方浩史安藤富士子 詳細
転倒の疫学と予防対策――ロコモティブシンドロームの視点から……鈴木隆雄 詳細
DPCデータベースからみた日本整形外科の現状――超高齢社会を迎えて……門野夕峰 詳細
地域在住高齢者の歩行能力に関する横断的・縦断的分析……坂田悍教 詳細
ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドロームの概念……中村耕三 詳細
ロコチェックの運動機能低下の予見性と,ロコトレの運動機能改善効果……石橋英明 詳細
病院における転倒予防教室――その運営・効果・課題……岡田知佐子 詳細
臨床現場におけるロコモティブシンドローム……大江隆史 詳細
運動器障害診断ツール(足腰指数25)の開発……星野雄一星地亜都司 詳細
運動器の保存治療
中高年者の背筋力維持・向上のための運動……宮腰尚久 詳細
変形性膝関節症に対する運動療法・体操――ロコモ予防への取組み……帖佐悦男・他 詳細
腰痛管理のためのエクササイズ(体操)……松平浩 詳細
介護保険制度と在宅医療
高齢者医療での運動器疾患――老年症侯群と総合機能評価でとらえる……林泰史 詳細
介護保険制度から見た運動器障害……太田秀樹 詳細
在宅医療からみた運動器障害――訪問リハビリテーションは寝たきり予防に有用である……腰塚裕 詳細
ロコモティブシンドロームと大腿骨頸部骨折地域連携パス――浜松方式を中心に……藤野圭司 詳細
運動器障害の診断と評価
【骨】
骨粗鬆症の診断と薬物治療開始基準……藤原佐枝子 詳細
骨粗鬆症における骨折リスク評価法の進歩――骨密度評価から骨強度評価へ……大西五三男 詳細
骨の代謝マーカー……遠藤直人 詳細
【軟骨】
変形性膝関節症X線画像自動読影システム(KOACAD®)の開発……岡敬之 詳細
関節軟骨,椎間板のMRI評価――最新の形態的・質的評価法……渡辺淳也・吉岡大 詳細
Kinematic MRI による関節の評価……中田研 詳細
変形性関節症の診断・評価における軟骨代謝マーカー……山田治基 詳細
【筋肉】
筋力と筋量の評価……猪飼哲夫 詳細
筋力と筋量の経年的変化および運動器疾患との関連……村木重之 詳細
歩行と姿勢の評価
歩行分析の手法と中高年者の歩行……芳賀信彦 詳細
高齢者の姿勢……仲田和正 詳細
主な疾患
原発性骨粗鬆症の治療……萩野浩 詳細
変形性膝関節症の診断と治療……宗田大 詳細
変形性股関節症の診断と治療……別府諸兄・太藻ゆみこ 詳細
腰部椎間板ヘルニアの診断と治療……細金直文・他 詳細
腰部脊柱管狭窄症の診断と治療……牧野孝洋・米延策雄 詳細
サルコペニア――そのメカニズムと防止策としての運動……石井直方 詳細
運動器疾患の基礎
骨の代謝と骨粗鬆症のバイオロジー……安井哲郎・田中栄 詳細
変形性関節症の分子メカニズム――治療標的分子の同定をめざして……川口浩 詳細
サルコペニアの発症メカニズム――廃用性筋萎縮との類似点と相違点から……河野尚平・二川健 詳細
椎間板の代謝とバイオロジー――椎間板再生への細胞移植法も含めて……持田讓治 詳細
姿勢・歩行能力と脊髄機能――ロコモティブシンドロームと脊髄機能……緒方徹 詳細
転倒による大腿骨近位部骨折に及ぼす軟組織や体重の影響……田中英一 詳細
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