126巻6号 2015年5月25日 p.693-693
|
![]() |
栄養療法のピットフォール−よりよい栄養ケアのために | ![]() |
まえがき
滋賀医科大学医学部附属病院 栄養治療部
佐々木雅也 |
![]() |
![]() |
特集にあたって | ![]() |
臨床栄養に関するセミナーでは,受講生からさまざまな質問を受けます.セミナーを受講される医師やメディカルスタッフの先生方は熱心に栄養療法に取り組まれ,そこで生まれたさまざまな難題に対して,いろいろな成書をもとに学び,解決策を見出そうとされている気持ちが伝わってきます.私自身の経験においても,いわゆる成書からの知識だけでは,これらの問題に対する適切な解決策が導き出せないことも少なくありません.このような背景から,『臨床栄養』の臨時増刊号として「栄養療法のピットフォール」を企画させていただくこととなりました.私としては,待ちに待った一書だと思っています.
栄養療法がすべての患者にとって基本的な医療であることが広く認識され,病院では多職種から構成される栄養サポートチーム(NST)が精力的に活動しています.しかしながら,栄養療法は,@栄養スクリーニング・栄養アセスメントからはじまり,A患者に適した栄養投与ルートを選択し,Bエネルギー必要量や栄養メニューを算出し,C食事を提供したり,栄養輸液製剤,経腸栄養剤を投与し,D栄養効果や合併症についてモニタリングし,E栄養管理計画を見直して修正する.といった多くのステップがあります.各ステップにおいて専門的な知識やスキルが必要であり,内容は多岐にわたります. 病態栄養や臨床栄養に関する成書は数多く出版されています.これらの書籍を読んで栄養療法に関する基本的な知識を得ることは重要です.なかでも,栄養療法に関するガイドラインは多くの臨床研究の成績からエビデンスレベルをもとに作成されたものであり,栄養療法を行ううえでの指針となるべきものです.しかし,基本的知識だけでは実践的な栄養療法は行うことはできませんし,教科書(成書)通りに栄養療法を行っても,必ずしも上手くいくとは限らないのが臨床のむずかしさです.たとえば,エビデンスレベルの高い論文は欧米人を対象とした臨床研究が多いために,その内容をそのまま日本人に適用するのはむずかしい場合もあります.体格も遺伝的素因も異なるからです.臨床の現場では,基本的な知識に加えて,いわゆる「コツ」や「ノウハウ」のようなものも大事です.これらは本来,豊富な臨床経験から身につくものであり,「実践力」として,臨床現場で大きな力となります. 本書では,栄養アセスメント,経腸栄養,静脈栄養,ライフステージ別の各領域において,わが国でもっとも専門的な立場の先生方から,基本的な解説に留まらず,栄養療法のピットフォールやその対策について解説していただきました.そこには,一般の成書には書かれていないような,筆者の臨床経験から生まれた「コツ」や「ノウハウ」が詰まっています.これらを共有していただくことは,日々の臨床栄養の実践で大いに役立つものと考えています. 最後に,たいへんご多忙のところご執筆いただいた先生方に,この場を借りて心より御礼申し上げます. 2015年5月 滋賀医科大学医学部附属病院 栄養治療部 佐々木雅也 |
![]() |
126巻6号 2015年5月25日
月刊(B5判,210頁) 発行時参考価格 2,800円 注文コード:740860 雑誌コード:09320-05 |
![]() |
|
![]() |