
糖尿病性腎症は透析導入の原因疾患の第1位を占め,その早期診断や重症度判定は重要な課題である.微量アルブミン尿は早期診断のマーカーとして世界的にコンセンサスを得ているが,さまざまな問題点も指摘されており,よりその病因や病態に基づいた新しいバイオマーカーの開発が求められている.そのようななかで現在,日本医療研究開発機構における難治性疾患等実用化研究事業(腎疾患実用化研究事業)において「糖尿病性腎症の進展予防にむけた病期分類・病理・バイオマーカーを統合した診断法の開発」として,腎症の評価に有用なバイオマーカー開発の基盤研究が進行している.今後,病因および病態を反映したバイオマーカー開発がなされれば,それに基づいた創薬など,有効な治療法の確立につながる可能性もあり,この分野におけるさらなる研究の進展が期待されている.本稿では腎症における既存のバイオマーカーだけでなく,近年,多くのあらたな報告がなされている尿細管障害性マーカーなどの検討も含めながら概説する.