セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(sexual reproductive health and rights:SRHR,性と生殖に関する健康と権利)は,基本的人権のひとつでありながら多くの国ですべての人に保障されている社会には至っていない. 持続可能な社会の発展のために,2015年から2030年までの目標として制定されている持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)のゴール3“すべての人々の健康的な生活の確保と福祉の促進”,ゴール5“ジェンダー平等の達成とすべての女性および女児の能力強化”のターゲットや指標にも,SRHRへの言及がされているが,SDGsのターゲットや指標だけではとらえきれない課題も山積している. 本特集では,妊娠中絶や望まない妊娠,性感染症,性暴力被害,LGBT,SOGI(性的指向・性自認)に関わる課題や妊娠・出産における自己決定などについて知識を深め,次世代への教育や実践についても考える機会となるよう各専門家に執筆いただいた. 日本は世界のなかで最も赤ちゃんが安全に生まれる国ではあるが,SRHRに関しては,決して進んでいるとはいえない現状がある.世界的な動向を把握し,それと比較しながら,日本の社会的・文化的背景のなかでの現状と課題を整理し,課題解決に向けてSRHRのアプローチについての理解を深め,世界共通の課題としても考える機会につながることを期待する. SRHRの課題は政策,法律,教育,文化,経済など多次元の問題を包含しているが,ここでは医学的な側面に焦点を当て,次世代のためのセクシャル・リプロダクティブ・ヘルスにとって実効性のあるアプローチを考える一助となれば幸いである.