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277巻3号 2021年4月17日
冬眠研究の最前線−人工冬眠への挑戦
はじめに
AYUMI 冬眠研究の最前線――人工冬眠への挑戦 はじめに 櫻井武
  コロナ禍の冬はいつにも増して陰鬱で長く感じられたが,ふと,頬に射す陽の色が変化していることを感じると,やがて風はどこかに咲く花の香りを運んでくる.季節の移り変わりは動物たちの生活にも多くの変化をもたらす.のどかに小鳥の声が聞こえるころには,クマやリスのような動物が“冬眠”からめざめる.
 本来,恒温動物である哺乳類が,冬季や飢餓などを乗り切るためにとる生存戦略である冬眠のメカニズムは,体温調節機構を考えるうえでも大変興味深い.しかし,通常用いられる実験動物が冬眠をしないこともあり,それは未知のベールに包まれてきた.冬眠中には脳機能を含むさまざまな生理機能は大幅に低下する.通常の体温恒常性は一時的に解除され,体温は著しく低下するが,体温制御システムは新たに設定されたセットポイントに従って機能しているため,低体温の新たなレベルで適応的に維持される.そして,組織・機能障害を伴うことなく自発的に元の状態に戻る.
 冬眠する動物は多岐にわたることから,特定の動物種が獲得した特殊な能力ではなく哺乳類に広く存在する機能であり,また通常の体温調節機能の可逆的な変容によってもたらされるものである可能性が高い.実際に近年,冬眠しないマウスなどの哺乳類においても,神経系の操作により冬眠に似た低体温状態を誘導できることが明らかになり,中枢制御による人工冬眠の実現にも光明が差し込んでいる.人工冬眠は医療や有人宇宙探索などに応用しうるポテンシャルを有しており,その実現が待たれる.
 一方,体温制御メカニズムの観点からも,従来GABA作動性ニューロンが主役を演じると考えられてきた視床下部視索前野において,グルタミン酸作動性の興奮性ニューロンが低体温誘導に重要な役割をしていることが示されており,新たな展開になっている.レプチン受容体(LepRb),EP3受容体(Ptger3),Opn5,PACAP,BDNF,TRPM2などを発現する視索前野ニューロンはグルタミン酸作動性であり,視床下部背内側に作用して低体温を誘導する.とくに,神経ペプチドQRFP遺伝子を発現するニューロン群(Qニューロン)は最も少数であり,また効率的に低体温・低代謝状態を冬誘導するためのエッセンシャルな集団である可能性がある.
 将来の人工冬眠の実現と応用を視野に入れたさらなる研究展開が期待されるところであるが,中枢性の制御機構にくわえ,末梢臓器の低温耐性機構の理解も含めた,体温調節機構とその拡張モードとしての冬眠の理解が求められる.冬眠研究の春とも思えるこの時期に本特集が組まれることはタイムリーである.体温制御および冬眠研究のさまざまな専門家らによるさまざまな観点からその一端に触れていただきたい.
目 次
人工冬眠技術の未来と臨床応用……砂川玄志郎
哺乳類冬眠の現象論……山口良文・大塚玲桜
哺乳類屈指の低酸素・高二酸化炭素耐性動物――ハダカデバネズミ……岡香織・三浦恭子
匂い物質による恐怖反応に伴う体温低下の神経メカニズム……櫻井勝康
冬眠様の低体温・低代謝状態QIH……櫻井武
トーパーの神経メカニズム……山口裕嗣
TOPICS
【循環器内科学】
虚血性心疾患におけるマイオネクチンの役割……柴田玲 
【社会医学】
順天堂大学オープンイノベーションプログラム“GAUDI”――医療・ヘルスケア領域における社会実装追求型オープンイノベーション……飛田護邦・他 
【医療行政】
EU離脱と英国医療――「合意」成立を受けて……松田亮三 
連載
【この病気,何でしょう? 知っておくべき感染症】
4.トキソプラズマ症(悪性リンパ腫? トキソプラズマ症?)……阪本直也 
【いま知っておきたい最新の臨床検査――身近な疾患を先端技術で診断】
3.Nematode-NOSE:線虫の嗅覚によるがんの一次スクリーニング検査……羽立薫・広津崇亮 
速報
大阪市内の熱中症死亡に対する気象・居住環境の影響……片岡真弓・他
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冬眠研究の最前線
277巻3号 2021年4月17日
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