
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを応用して,神経変性疾患に対する遺伝子治療の開発が進んでいる.Parkinson病には,L-DOPAをドパミンに変換する芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)の遺伝子を被殻の神経細胞に導入する方法の臨床試験が行われ,運動症状の改善効果が得られている.この方法が有効なことは小児のAADC欠損症でも示された.現在,AADCに加えてL-DOPAの合成に必要な酵素の遺伝子も導入し持続的にドパミンを供給する方法の治験が計画されている.Alzheimer病には,血液脳関門・髄膜脳関門を通過するAAVベクターにより,アミロイドβ(Aβ)を分解するネプリライシンの遺伝子を広範な脳領域で発現させる方法などがある.バキュロウイルスを応用してGCTP基準のAAVベクターを大量に作製する技術が開発されている.

アデノ随伴ウイルス,AADC欠損症,ネプリライシン,血液脳関門