
遺伝子治療の進展につれて,各種遺伝子治療用ベクターの改良とともに,その特性・機能がより明確になってきた.そして最近では,疾病や投与法,投与部位(標的細胞)に応じて各ベクターの使い分けが進んできた.アデノウイルスは,現在では免疫反応を伴うことを逆に利用して,HIVやエボラ出血熱,高病原性インフルエンザなどの新興・再興感染症に対するワクチンベクターとして,あるいは腫瘍細胞特異的にウイルス増幅することで癌細胞を死滅させる腫瘍溶解性ウイルスとして盛んに非臨床・臨床試験が進んでいる.本稿では,組換えアデノウイルスの開発に関する最近の話題について,著者らの知見もまじえながら紹介する.

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