
アデノ随伴ウイルス(AAV)は一本鎖DNAをゲノムとする小型ウイルスで,ヒトには感染できるが病原性は知られていない.遺伝子治療のためのウイルスベクターの研究がはじまってから,安全なウイルスとして注目されるようになった.動物実験で,筋肉細胞や神経細胞などの非分裂細胞に高い効率で遺伝子導入が可能であることが明らかになり,
in vivo遺伝子治療のベクターとして開発が行われてきた.AAVベクターを使った遺伝子治療では,ベクターに対する免疫反応,生殖細胞への遺伝子導入,挿入変異の可能性などが議論になっているが,これまでの臨床研究で重篤な副作用は起きていない.最近では遺伝性網膜疾患,血友病,神経変性疾患などに対する臨床研究で有効性が確認されている.すでに複数のAAVベクターが医薬品としての販売が承認されている.あらたにAAVベクターを使ったゲノム編集の技術開発も開始されている.AAVベクターの臨床応用はさらに広がっていくものと思われる.

アデノ随伴ウイルス(AAV),遺伝子治療,レーバー黒内障,血友病