
急性炎症のおもな症状は,局所における発赤,熱感,浮腫,疼痛,さらには中枢を介した発熱や視床下部-下垂体前葉-副腎皮質系応答なども含まれる.アスピリンに代表される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は,これらの炎症症状を鎮めることから,これら症状はプロスタグランジン(PG)の作用として説明できると考えられてきた.実際,PG受容体欠損マウスや受容体選択的薬物を用いた解析によって,各症状にかかわるPGやその受容体,作用機序が明らかとなった.その結果,急性炎症の各症状を発現する末梢や中枢の部位において,PGは共通の作用様式ではなく,部位ごとに異なる受容体・作用機序を介して,さまざまな作用を発揮していることがわかった.本稿では,急性炎症の各症状にかかわるPG受容体とその分子機構について概説し,NSAIDs作用との相関について考察する.

アスピリン, prostanoid, edema, hyperalgesia, fever