
今世紀に入ってから,わが国は飲酒運転による交通死亡事故を大幅に減少させた.飲酒運転による重大事件がマスメディアを通じて広く伝えられたことも影響し,飲酒運転を忌避する社会的規範が確立し,飲酒運転に対する厳罰化を柱とした対策がうまく機能した.一方,飲酒運転をした人への治療あるいは教育(リハビリテーション)に関する科学的根拠は十分に蓄積されているとはいえない.背景にあるアルコール使用障害への医療的措置が行われることが最優先であるが,明確なアルコール使用障害あるいは飲酒行動上の問題を示さないサブグループへの対処も重要である.その際,飲酒行動だけではなく,飲酒運転という問題行動の回避と除去に目配りをし,個々の問題を汲み取ることに注力した心理的介入が有益と考える.