
飲酒に関連したエタノールとアセトアルデヒドにはヒトへの発癌性があり,飲酒は口腔・咽頭・喉頭・食道・肝・大腸・女性の乳癌の原因となる(WHO,IARC).飲酒発癌にはエタノールやアセトアルデヒドの作用,葉酸やエストロゲンへの影響,種々の発癌物質を代謝するP450の誘導,酸化ストレス,肝の慢性炎症,並存する喫煙や野菜果物摂取不足などの因子が関与する.少量飲酒で赤くなる体質のALDH2へテロ欠損型と多量飲酒の翌日に酒臭い体質のADH1Bホモ低活性型は,飲酒と喫煙とともに,食道と頭頸部癌のリスクを相乗的に高める.とくにALDH2へテロ欠損者の飲酒は多発重複癌のリスクとなる.ビールコップ1杯で顔が赤くなる体質の有無を現在と過去について質問する簡易フラッシング質問紙法は,ALDH2欠損を約90%の感度・特異度で判定する.ADH1B/ALDH2遺伝子判定はアルコール依存症や発癌などの種々のアルコール関連障害のリスクを予測し,その予防戦略として普及が期待される.

食道癌,頭頸部癌,乳癌,大腸癌,肝癌,アルコール脱水素酵素1B(ALDH2)