
わが国におけるアルコール総消費量は1999年をピークに若干減少傾向を示すようになった.しかし,女性の飲酒率増加は著しく,また大酒家,問題飲酒者は依然として増加している.慢性的な過剰飲酒により引き起こされる臓器障害でもっとも高頻度なもののひとつがアルコール性肝障害(ALD)である.ウイルス性肝炎の減少も伴い,全肝疾患におけるALDの比率は増加しており,臨床上の重要性が増している.従来より抗酒薬として用いられてきたシアナミドとジスルフィラムに加え,わが国でも飲酒欲求抑制作用をもつアカンプロサートが使用できるようになり,治療成績向上が期待される.しかし,ALD患者の背景には,人格,家庭環境,社会因子などが複雑に絡み合い,治療に難渋することが多く,基礎的知識を身に着けるとともに個々の患者に対する指導が求められる.

アルコール性肝障害(ALD),アセトアルデヒド,アルコール性肝炎,アルコール性肝硬変,アルコール性肝癌