
下垂体後葉ホルモンとして知られるバゾプレシンは,視床下部に局在する神経分泌ニューロンの細胞体で産生され,下垂体後葉に投射した軸索終末から血中に分泌され,血管収縮,抗利尿作用を有する.一方,バゾプレシンは脳内でも分泌され,中枢神経系を介して体液調節はもとより自律神経系からストレス,社会認知まで多彩な生理機能に関与していることが明らかになりつつある.本稿では,線虫でのバゾプレシンに相当するネマトシンの役割,緑色蛍光蛋白を用いたバゾプレシンの可視化,バゾプレシンニューロンの浸透圧センサー,ストレス,自律神経,概日リズム,社会行動との関連など,バゾプレシンの基礎研究における最近のトピックスを概説する.