
Niemann-Pick病C型は細胞内の脂質輸送に関与するNPC1/NPC2遺伝子の欠損により,スフィンゴミエリン,コレステロール,糖脂質の蓄積を起こし,@脾腫,肝脾腫などの内臓症状と,A失調,嚥下障害,カタプレキシー,垂直性核上性注視麻痺,ジストニア,知的退行,精神症状などの中枢神経症状を示す,比較的まれな常染色体劣性遺伝性疾患である.スフィンゴ糖脂質合成の最初の酵素であるグルコシルセラミド合成酵素の阻害作用を有するミグルスタットが嚥下障害を含む神経症状の進行に有効であることが明らかになり,2012年日本でも治療薬として承認された.現在,Niemann-Pick病C型と診断され治療を受けている日本人は約20名であるが,ほとんどが20歳以下である.近年,欧米では思春期以降の発症例が多く診断されるようになっており,日本人でも今後多く診断される可能性がある.