
近位筋優位遺伝性運動感覚ニューロパチー(HMSN-P)は常染色体優性遺伝形式をとり,近位筋優位の筋力低下・萎縮,著明な線維束性収縮,感覚障害などを主徴とする緩徐進行性の疾患である.その原因遺伝子として2012年
TRK-
fused gene(
TFG)のミスセンス変異p.Pro285Leuが報告された.病理所見では下位優位の運動ニューロン障害および感覚系障害を認め,興味深いことにTFGおよびユビキチン陽性の神経細胞質内封入体のみならず,筋萎縮性側索硬化症のマーカーとされるTAR DNA-binding protein 43kDa(TDP-43)やoptineurinが陽性の封入体も伴う.また,変異TFGを過剰発現させた培養細胞では核外にTDP-43が蓄積する.TFGは細胞内の小胞輸送にかかわる蛋白であり,その変異に伴い,TFG自体の異常蓄積に加えてTDP-43など他の蛋白の輸送障害も生じると推測される.

近位筋優位遺伝性運動感覚ニューロパチー(HMSN-P),TRK-fused gene(TFG),TDP-43