
最近,遺伝子の非翻訳領域,すなわちイントロンと5’・3’非翻訳領域(UTR)に存在する特定塩基のリピートが異常に伸長して発症する神経変性疾患が多数知られるようになった.この疾患群では共通して変異RNA配列が異常構造を形成するRNA fociがみられる.その一疾患であるSCA31は日本人特有の常染色体優性遺伝性脊髄小脳変性症で,16番染色体長腕に存在する遺伝子
BEAN1と
TK2が共有するイントロンに,変異配列TGGAAリピートが存在するために起こる.変異は
BEAN1方向の転写産物としてUGGAAリピートが,
TK2からはUUCCAリピートが発現する.対照健常人ではTAGAAやTAAAAなど別のリピートが存在しても,TGGAAは存在しないことからRNA配列の特異性が発病の鍵を握ると考えられる.本稿では,SCA31におけるRNAレベルでのリピート配列の異常病態について解説する.

脊髄小脳変性症,non-coding repeat expansion disorders,RNA foci