
自律神経失調症における起立性低血圧は生活の質を大きく損なう病態である.起立に伴って重力の影響によって静脈灌流が妨げられるためである.自律神経機能が正常であった場合には圧受容体反射が機能し,抵抗血管・容量血管が調節され,起立に伴う血圧下降は最小限にくいとめられるが,自律神経失調症では重症になると圧受容体反射機能は廃絶する.したがって,圧受容体反射の機能を定量的に評価することは病態把握の第一歩である.白色雑音システム同定法を用いた圧受容体反射機能の新しい評価法によって自律神経失調症の起立性低血圧には特徴的な過渡応答がみられることが明らかになった.このような過渡応答にも注目した起立性低血圧の病態評価からさらに新しい知見がうまれることが期待される.

交感神経系,白色雑音システム同定法,伝達関数,定常応答,過渡応答