
自閉症スペクトラム障害(ASD)では対人交渉などの社会性の障害が中核をなすが,その脳基盤は未解明である.また,一卵性双生児での一致度が非常に高く遺伝要因の関与は 90%とされるが,多因子疾患のためか,いまだ責任遺伝子の同定に至っていない.一方で脳画像を用いた病態研究も行われ,脳の機能的・形態的異常が報告されている.さらに,健常人では表情認知から他者の意図の理解に至るまで,対人交渉や社会性の基盤をなすきわめて高次の精神機能をつかさどる脳基盤も明らかにされつつある.著者らはこの社会性の障害の脳基盤解明をめざして,MRI などを用いた臨床研究を行った結果,アスペルガー(Asperger)障害当事者における社会脳領域を中心とした脳形態異常とその遺伝背景,社会脳領域の男女差と社会性の男女差の関連とその社会性の障害との関連について興味深い知見を得た.本稿ではこれら近年の研究成果を示し,今後の展望について述べた.

自閉症スペクトラム障害,社会性の障害,脳画像,男女差