
精神疾患の多くは特定の発達期に,個体要因と環境要因の双方の影響(相互作用を含む)を受けて生じる.それゆえ,精神疾患の成因・病態研究を進める際には,こうした個体,環境,発達に関する要因を統合的に検証しうる研究戦略を立てる必要がある.それに適した方法の一つが“出生コホート研究”である.今日までにイギリスなどを中心として,精神疾患を対象とした大規模な出生コホート研究が行われ,精神疾患の発症に至る発達的プロセスと個体要因,環境要因の関与について検討が行われてきた.本稿では,これまでに行われてきた精神疾患を対象とした出生コホート研究の概要を紹介し,今後の精神疾患研究における出生コホート研究の役割,重要性を確認する.