
精神疾患発症の脆弱性には遺伝的要因と環境的要因の相互作用がかかわるが,近年,遺伝的要因として神経発生関連因子(neurodevelopmental genes)に注目が集まってきている.これらのなかでは神経間結合(シナプス)形成にかかわる分子がもっとも精力的に研究されているが,著者らは神経幹細胞からの神経細胞の産出(神経新生)にかかわる因子に着目している.その理由は神経新生が遺伝的・環境両要因からの影響を受けやすいからである.本稿では,基礎的および臨床的知見に基づいて神経新生と精神疾患発症の脆弱性について論じ,多価不飽和脂肪酸による神経新生の亢進が精神疾患の予防・治療法開発につながる可能性について指摘したいと思う.

海馬歯状回,神経新生,プレパルス抑制(PPI),多価不飽和脂肪酸(PUFA)