
炭素数(C)21以上の極長鎖脂肪酸,C26以上の超長鎖脂肪酸は,量は少ないものの,短い脂肪酸では代替できない固有の生理機能を有し,さまざまな病態と関連する.極長鎖脂肪酸は広範な組織に存在するが,超長鎖脂肪酸は表皮,涙液,精子・精巣,網膜,脳に特異的に存在し,それぞれの組織で重要な役割を果たす.脂肪酸の伸長は小胞体における脂肪酸伸長サイクルによって行われ,脂肪酸伸長酵素(エロンガーゼ)が律速段階を触媒する.哺乳類には脂肪酸伸長酵素が7種類存在し,それぞれが鎖長と不飽和度の異なったアシルCoAに対して特徴的な基質特異性を示す.これら脂肪酸伸長酵素遺伝子の変異によるヒト疾患の症状,遺伝子欠損マウスの表現型の解析から,それぞれの脂肪酸伸長酵素が作りだす脂肪酸の生理機能,病態への関与が明らかとなってきた.本稿ではとくに表皮・涙液における超長鎖脂質のバリア機能とその異常による病態について重点的に解説する.

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