感染症迅速検査アップデート
36巻13号 2008年12月20日 p.1417-
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胃潰瘍,十二指腸潰瘍と Helicobacter pylori 感染の関係 | ![]() |
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近年,胃潰瘍,十二指腸潰瘍,胃炎(萎縮性胃炎)は感染症であるといわれている.Helicobacter pylori(H. pylori)と萎縮性胃炎の関係は,いわゆるコッホの 4 原則を満たしている.コッホの 4 原則とは, @ その原義はある一定の病気には一定の微生物が見出されること, A その微生物を分離できること, B 分離した微生物を感受性のある動物に感染させて同じ病気を起こせること,そして Cその病巣部から同じ微生物が分離されることである.胃潰瘍・十二指腸潰瘍も,原則萎縮性胃炎をベースとして発生する.以前は“no acid, no ulcer”といわれ,胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療といえば,胃酸分泌抑制剤であるプロトンポンプインヒビター(PPI),あるいはヒスタミン H2受容体拮抗剤が使われたが,再発することが問題となっていた.2000 年 11 月に,胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対してH. pylori 除菌治療が保険認可された後,H. pyloriを除菌するだけで潰瘍は治癒し,再発も認められなくなった.以上より,萎縮性胃炎だけでなく,胃潰瘍・十二指腸潰瘍も感染症と考えられている.
実際に上部消化器疾患の H. pylori 感染率は,表1 に示すように全体でも 83.0%(430/518)と非常に高い.胃潰瘍・十二指腸潰瘍では 90%以上の感染率があり,胃炎には急性胃炎も含めておりやや低めであるが,胃癌は 80%と高い感染率を示した.胃癌は除菌治療では治癒しないが,胃 MALTリンパ腫という悪性の疾患は,除菌治療のみで約80%が治癒することが明らかにされている.実際1996 年までは,このリンパ腫の治療は胃全摘出を行っていた.以上のように,胃・十二指腸疾患において H. pylori 感染診断を確実・迅速に行うことは重要である.……(雑誌本文は続きます) |
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36巻13号 2008年12月20日
月刊(B5判,222頁) 発行時参考価格 4,200円 注文コード:296040 雑誌コード:08608-12 |
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