感染症迅速検査アップデート
36巻13号 2008年12月20日 p.1393-
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はじめに | ![]() |
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感染性胃腸炎の原因となる病原体は,ウイルス,細菌,その他クリプトスポリジウムなどに大別され,経口的に感染するため,患者の多くは食中毒として診断される.短い潜伏期を経て,嘔吐・下痢・腹痛・発熱などの急性胃腸炎症状を呈する.発生頻度は細菌に起因する場合が高い.たとえば,厚生労働省による平成 19 年(2007 年)の食中毒発生状況をみると,1,289 事例のうち 732 事例(56.8%)が細菌性である.しかし,患者総数33,477 人のうち 18,750 人(56.0%)はウイルスによるものである.
胃腸炎の起因ウイルスには,ノロウイルス,ロタウイルス,サポウイルス,アデノウイルス,アストロウイルス,コロナウイルスや,頻度は低いがそれらの混合感染,そして最近,アイチウイルスが下痢症ウイルスとして認識された.これらのなかではノロウイルスによる頻度がもっとも高く,前述の食中毒患者数の 99.0%を占める.各々のウイルスの性状について表 1 にまとめた. なお,食中毒の発生報告数は氷山の一角であることを付記したい. 感染症全般についてはもちろんのこと,ウイルス性胃腸炎においても例外でない大きな課題は,いかにして迅速にウイルス学的な診断が行われるか,ということである.その理由は,消化管から莫大なウイルス量が排出され,さらに環境中で安定なウイルスが多いことによる感染拡大のため,感染拡大防止対策が早急に求められることである.さらに,細菌性胃腸炎やその他の病原微生物との正確な鑑別診断が,医療現場では求められている.感染性胃腸炎症例で,細菌性・ウイルス性胃腸炎の鑑別診断を目的とした発生初期の迅速診断の導入の有無を比較検討してみると,導入のない場合には医療費の大きな経済損失が試算されている.……(雑誌本文は続きます) |
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36巻13号 2008年12月20日
月刊(B5判,222頁) 発行時参考価格 4,200円 注文コード:296040 雑誌コード:08608-12 |
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