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261巻10号 2017年6月3日
医学のあゆみ 261巻10号 統合失調症UPDATE −脳・生活・人生の統合的理解にもとづく“価値医学”の最前線 6月第1土曜特集
はじめに
第1土曜特集 統合失調症UPDATE――脳・生活・人生の統合的理解にもとづく“価値医学”の最前線 はじめに 笠井清登・宮本有紀・福田正人
  統合失調症は,思春期・青年期に発症する頻度の高い精神疾患である.陽性・陰性症状を呈し,日常生活・対人関係・職業生活に困難を経験することが多い.疾患が生活障害を引き起こす程度を障害調整生命年(disability-adjusted life year:DALY)における生活障害(障害生存年数;years of life lost:YLL)として算出すると,全疾患中,統合失調症の急性期が最大とされる.
 これまで統合失調症の治療目標は症状・認知機能・社会適応レベルなどの改善であったが,近年,当事者側から「人としてのリカバリー(回復);personal recovery」という,主観的で人生のプロセスを重視するアウトカム概念が主張されつつある.
 リカバリーという主観的なアウトカムを科学的に検討するには,“人が長期的人生をどのように歩んでいるのか”に立ち戻って考える必要が生じる.そのためには,人が自分の人生を主体的に選び取っていくことを駆り立てる個体内因子を想定する必要があり,これを“主体価値”とよぶこととする.親や社会から継承された価値はしだいに個人のなかに内在化していき,他者とは異なる個別化された価値となり,これをもとに社会に向かって能動的に働きかけていけるようになる(価値の主体化).主体価値の発展は,生活(real-world)のなかで能動的な行動を生み出し,その結果,脳に可塑的変化をもたらし,主体価値が更新していくとスパイラル的にモデル化できる.こうして人は,主体価値に基づいて長期的な人生を歩んでいく.統合失調症におけるリカバリーとは,統合失調症という病気の影響で混乱し見失いがちになっている主体価値を,病気の経験を踏まえて建て直し,あらたな形として発展させるプロセスといえよう.統合失調症の研究は,「脳・生活・人生の統合的理解に基づく主体価値・リカバリーの科学」としてとらえなおすことができる.
 近年,医療においてvalue-based approachがevidence-based approachを乗り越えようとする形で主張されはじめている.当事者中心の(person-centered)サービス,共同意思決定(shared decision making),共同創造(co-production),当事者研究,ピアスタッフの重要性,研究の民主化(democratizing clinical research),といった最近の動向はすべてvalue-based approachと呼応する.これらはいずれも社会的・倫理的・人権的な取組みとしてとらえられることが多いが,それが同時に自然科学的・脳科学的なテーマでもあることはあまり認識されていない.しかし,ヒトの脳の動作特性が対人関係・生活を成立させるために最適化される方向に進化してきたことを考えれば,脳科学的課題でもあるということは自然に理解できる.
 編者らは,それぞれ文部科学省や日本医療研究開発機構の研究費で,「脳・生活・人生の統合的理解に基づく思春期からの主体価値発展学」(笠井),「当事者を含めた多職種によるリカバリーカレッジ運用のためのガイドラインの開発」(宮本),「主体的人生のための統合失調症リカバリー支援――当事者との共同創造co-productionによる実践ガイドライン策定」(福田)の代表を務めている.前者は,主体価値・リカバリーの科学の理論編,後二者は実践編と位置づけうる.10〜20年後には医学の常識となっているであろうことを,統合失調症の臨床や研究は先取りしているともいえる.そうした含意で,特集のタイトルを「統合失調症UPDATE――脳・生活・人生の統合的理解にもとづく“価値医学”の最前線」とした.20にも及ぶ寄稿は,序論,価値,脳,生活,人生と構造化し,当事者・家族・市民の立場の方々にも多大なご協力をいただいた.かけがえのない一人ひとりが,病を持ちながらも人生を主体的に送っていく.それを支える医は,社会は,どうあるべきか.当事者・家族の個別の体験から普遍的な“人はどう生きるかの科学”が導かれる.この序文が本特集を読み解くためのヒントとなれば望外の喜びである.
目 次
【序論】
統合失調症について一般医・研究医に知ってほしいこと……福田正人・藤平和吉 詳細
こころと身体の健康はひとつながり──価値に基づく統合的支援……熊倉陽介・他 詳細
【価値医学――基本姿勢と行動指針】
支援の原点――家族の視点から,家族として人として……島本禎子 詳細
統合失調症患者における共同意思決定――新しいアプローチとシステム……山口創生・熊倉陽介 詳細
市民・医療従事者のアンチスティグマ……安藤俊太郎・他 詳細
ガイダンス・ガイドライン──診療・支援の基本姿勢をガイダンスから学ぶ……金原明子 詳細
統合失調症の薬物療法……市橋香代 詳細
【脳――研究最前線】
生前登録システムに基づく精神疾患ブレインバンクの取組み……國井泰人・和田明 詳細
価値の神経回路・シナプスからみた統合失調症……柳下祥・水谷俊介 詳細
22q11.2欠失症候群──精神・身体・知的の3障害の統合的支援……田宗秀隆・他 詳細
生活をめざす脳・行動計測……澤田欣吾・榊原英輔 詳細
協同創造(co-production)としての当事者研究の可能性……向谷地生良 詳細
【生活――保健・医療・福祉・教育の統合】
学校精神保健・予防……金田渉・小池進介 詳細
早期支援:精神病における早期発見と早期介入……森田健太郎 詳細
リカバリー──変革と実践のために……宮本有紀 詳細
これからの生活臨床……藤枝由美子・江口聡 詳細
コミュニティ支援のフロンティア……高野洋輔・他 詳細
【人生――ライフステージに沿った支援】
女性当事者の人生──恋愛・結婚・子育てを中心に……夏苅郁子 詳細
統合失調症を持つ当事者への就労支援……石橋綾・管心 詳細
高齢者のサイコーシス症候群……古茶大樹・三村將 詳細
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