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232巻5号 2010年1月30日
第5土曜特集心不全研究と臨床の最前線
はじめに
第5土曜特集 心不全──研究と臨床の新時代 はじめに 小室一成
 No understanding of the circulatory reactions of the body is possible unless we start first with thefundamental properties of the heart muscle itself, and then find out how these are modified, protectedand controlled under the influence of the mechanisms―nervous, chemical and mechanical―which under normal conditions play on the heart and blood vessels.
E. H. Starling, 1920

 心不全は二つの理由から重要な疾患と考えられる.一つは患者数の多さである.わが国において現在約 100 万人の心不全患者がいると推定されるが,生活習慣の欧米化と高齢化によりその数は確実に増え続けると考えられる.アメリカにおいては現在 600 万人の心不全患者がおり,2040 年まで増え続けると想定されている.もう一つの理由は不良な予後である.心不全全体の 5 年生存率は 50%であり,重症心不全の 3 年生存率は 30%である.
この不良な予後は癌に匹敵する.
 一方で心不全の治療は確実に進歩している.レニン−アンジオテンシン系阻害薬やβ遮断薬は有意に生命予後を改善することが,多くの臨床試験により証明されている.CRT やICD といった機器も,心機能や予後の改善に役立つことが報告されている.補助人工心臓の開発も急速に進んでおり心臓移植へのブリッジ以上の意味をもってくるのも近いと考えられる.このように心不全の治療は着実に進歩しているが,いぜん重症心不全の最終的な治療法は心臓移植しかないこともまた事実である.ドナー数がきわめて少ないわが国において心臓移植には大きな限界があり,あらたな治療法の開発が急務である.
 それでは新しい治療法を開発するにはどうしたらよいのであろうか.冒頭の Starling の言葉にあるように,まず必要なことは心臓の基本的な理解であろう.いままでの心不全治療の確立において基礎的な研究も貢献しているが,臨床的な研究がより重要な位置を占めてきたと考えられる.心臓の研究の歴史は長く,とくに循環に関する生理学的な研究は一時代を築いた.その結果,多くの現象が発見されたが,はたしてその現象は分子レベルで理解されているであろうか.Frank−Starling mechanism という有名な法則がある.筋肉は伸張により張力が増すという法則であるが,その分子実体は何であろうか.いまだほとんどわかっていないのである.心不全で認められる拡張末期容積の増大は,まさにこの法則にかなった代償機序であるが,Laplace の法則から考えると心拡大は壁ストレスを増大させ,心臓を傷害する.神経,液性因子,機械的因子などさまざまな因子の影響下における心臓の機能調節の深い理解が,新しい心不全治療の開発にはなによりも重要であろう.
 本特集が心不全研究・診療の現状を明らかにし,将来の大きな発展の一助になることを期待したい.
目 次
心不全研究の歴史的変遷――Harveyから再生医学まで,400年の沿革……篠山重威 詳細
第1章 心不全の病態生理
【疾患から考える分子機序】
高血圧性,弁膜症性心不全――心肥大から心不全発症の分子機序……長谷川洋小室一成 詳細
虚血性心不全――梗塞後心筋リモデリングの分子機序……安川秀雄・今泉勉 詳細
心筋症――遺伝子異常から心機能障害への分子機序……木村彰方 詳細
心筋炎から拡張型心筋症へ……柳澤智義・和泉徹 詳細
心臓サルコイドーシスの病理と診断法……寺ア文生・他 詳細
産褥性心筋症の診断治療とその発症機序……坂田泰史 詳細
たこつぼ心筋症の発症機序……栗栖智・木原康樹 詳細
【分子・システムから考える分子機序】
心不全におけるリアノジン受容体の異常……小田哲郎・他 詳細
心筋ミトコンドリアの酸化的障害に対する代謝応答……佐野元昭 詳細
心不全とレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系……赤澤宏小室一成 詳細
心不全における心臓交感神経異常――交感神経の可塑性と新しい病態生理……金澤英明・福田恵一 詳細
心不全における炎症・免疫反応の重要性――Toll-like receptorを介した細胞内シグナル活性化と梗塞後リモデリング……竹石恭知・齋藤修一 詳細
心筋リモデリングにおける心筋細胞死……彦惣俊吾・大津欣也 詳細
ミトコンドリア異常による心不全……井手友美・筒井裕之 詳細
小胞体ストレスと心不全……南野哲男 詳細
心不全と血管新生――老化分子p53の役割……南野徹 詳細
ペリオスチンによる細胞外マトリックス制御と心不全……岡亨 詳細
心腎連関──概念から機序の解明へ……斎藤能彦 詳細
第2章 心不全の診断
【心筋病理】
心内膜心筋生検の役割――二次性心筋症を中心として……池田善彦・植田初江 詳細
心筋細胞死と心筋再生は不全心で認められるか……竹村元三 詳細
【新しい画像診断】
超音波画像診断による評価法の進歩……合田亜希子・増山理 詳細
拡張機能障害の病態と評価法……山本一博 詳細
心不全診断における核医学の有用性……山科昌平・山ア純一 詳細
CT,MRIによる心筋性状評価……船橋伸禎・上原雅恵 詳細
【バイオマーカー】
BNP,NT-proBNPの有用性――心腎連関……蔦本尚慶 詳細
心筋トロポニンTによる潜在性心筋傷害の検出……清野精彦 詳細
心不全における血漿pentraxin3測定の有用性……琴岡憲彦・野出孝一 詳細
テネイシンC――新しい心臓リモデリングマーカー……今中恭子・他 詳細
第3章 心不全の治療
心不全の治療ガイドライン――薬物療法を中心に……大草知子・松ア益徳 詳細
【薬物治療】
心不全治療におけるRAS抑制――レニン阻害薬の可能性……光山勝慶 詳細
どのβ遮断薬をいかに使用するか――心不全患者への最適化治療……絹川弘一郎 詳細
hANPによる梗塞後心不全の予防……朝倉正紀・北風政史 詳細
心不全に対するスタチンの治療効果……高野博之 詳細
研究開発中の心不全治療薬……安村良男 詳細
【心不全の非薬物治療】
心不全患者におけるデバイス治療――ICD,CRT-Dのupdate……野田崇・鎌倉史郎 詳細
心不全の外科治療――最近の進歩……松宮護郎 詳細
補助人工心臓の現状と将来展望……許俊鋭・他 詳細
日本における心移植の新しい幕開け……布田伸一 詳細
重症拡張型心筋症に対する免疫吸着療法……吉川勉・他 詳細
睡眠時無呼吸の治療法……百村伸一 詳細
第4章 心不全の先端的研究トピックス
【医工学の進歩】
心臓シミュレーション――マルチスケール・マルチフィジックス心臓シミュレータ……杉浦清了 詳細
急性心不全におけるコンピュータ制御による包括的な循環管理……上村和紀・他 詳細
【心不全の新たな分子メカニズム】
cGMP特異的PDE5による心肥大,リモデリングの調節……瀧本英樹 詳細
心不全の治療標的としてのアデニル酸シクラーゼ――酵素サブタイプを標的とした創薬……石川義弘 詳細
【心不全のジェネティクスとエピジェネティクス】
心不全およびその基礎疾患のSNPによる関連解析……尾崎浩一 詳細
デスモゾーム病としての不整脈源性右室心筋症──デスモゾーム分子遺伝子異常……堀江稔 詳細
心不全におけるエピジェネティック変化……朝野仁裕 詳細
【心不全における再生治療と幹細胞研究】
心不全に対するiPS細胞の臨床応用……山下潤 詳細
心臓幹細胞のバイオロジー──c-kit陽性細胞の心臓内での役割と再生治療への応用……細田徹 詳細
液性因子による心筋分化誘導……塩島一朗 詳細
心筋のティッシュエンジニアリング……清水達也 詳細
心不全に対する遺伝子治療研究――分子標的治療とそのターゲット……池田安宏・他 詳細
重症心不全への細胞移植療法……竹原有史・松原弘明 詳細
心不全
232巻5号 2010年1月30日
週刊(B5判,348頁)
発行時参考価格 5,200円
注文コード:286240
雑誌コード:20475-1/30
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