やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

11,000円(税込)
品切れ

ペリオドンタルメディスン

Louis F.Rose・Robert J.Genco ほか編著/宮田隆 監訳
発行時参考価格 10,000円
  • 総頁数:344頁
  • 判型:B5判
  • 発行年月:2001年9月
  • ISBN978-4-263-44126-8
  • 注文コード:441260

内容紹介

●歯周病が心血管系疾患,呼吸器疾患,糖尿病などのリスクファクターであることをエビデンスに基づいて体系的に整理.歯科医療の歴史上,かつてなかった国民の全身管理に歯科医療が直接的に深く関わることの根拠を提示. ●ペリオドンタルメディスンに関する研究は全世界的に実施され,続々新しい知見が報告されているが,本書は,現況における歯科医師にとって不可欠な知識をほとんど網羅している.

序文

監訳者序文

 歯科医学のなかで,ベーシックサイエンスと密接な関係をもって発展してきた歯周病学は,その一方で社会とも深く関わりをもってきた.それは,歯周病が日常生活のクオリティーの低下に直接影響を与えるだけでなく,老化という最も身近な社会性を包含しているからにほかならない.たとえば,高齢社会はさまざまな社会構造の骨格に強い歪みを与えるが,同時に疾病の数量にも影響を与える.つまり歯周病が増加するということによって,医療経済における歯周治療にかかわる経費の増大が促進され,さらに,国民が期待したほどの十分なケアができない現状の歯科医療システムへの不満も恐らくは社会問題化すると考えられる.しかし,現在,社会が医療への観点を大きく変えようとしているのにもかかわらず,医療を提供する側,特にわれわれの歯科界は十分な社会変革への対応を持ち合わせていないのが現状であろう.この社会が要請している,あるいは変革を要求している観点とは,たとえば疾病の管理から生活のクオリティーの管理という医療の質の変革であり,それはいうまでもなく量から質の医療経済への大きな変革でもある.そして,このような社会構造の変化の大切なキーワードの一つに「リスク管理」がある.
 社会を構成している多くの要素,たとえば交通システムから教育まで,あるいはごく日常の食生活や住居環境は,すべてリスクの対象となっている.リスクを回避するシステムがそれらに求められ,十分な対応がなされていなければ,社会はそれなりの保障を求める.疾病構造においてもそれは同じであり,病気を管理する医療側が必要と思われた情報なり処置を怠れば,社会は然るべき手段でその保障を求めるのである.このことは歯周治療とて例外ではない.つまり,歯周病が全身に悪影響を与えるのにもかかわらず,その情報や適切なアドバイスが歯科医療サイドから得られなかった,という構図は正にリスク管理にともなうペナルティーを派生させるものとなる.この構図は,歯周病の進行に影響を与える全身疾患の管理という方向性からみても同じことがいえよう.
 したがって,もはや,本書で伝える“ペリオドンタルメディスン(歯周医学)”を単に歯周病学における「新しい情報」として捉えることは間違いである.医療を受ける側,すなわち社会は,ペリオドンタルメディスンの本質をすべての歯科医師が理解しているものと考えている.そして,それはすでに社会構造に組み込まれていて,そのことがわれわれ歯科医師の歯周医学的対応がリスク管理の範疇になっていることを示しているのである.しかし,ペリオドンタルメディスンは確かに社会におけるリスク管理として重要であるが,それは決して歯科医療にとって重石になるような非生産性のものではない.むしろ,歯科医療の歴史上なかった国民の全身管理に,歯科医療が直接的に深く関わるといった点で巨大なマーケットを提供するのである.この事実によって,長く聳立していた歯科と医科の目視できなかった壁がペリオドンタルメディスンを介して払拭され,さらに社会は歯科医学というものを「健康医学」として再認識することになろう.
 ペリオドンタルメディスンに関する研究は全世界的に実施され,続々新しい知見が報告されているが,本書は,現況における歯科医師にとって不可欠な知識をほとんど網羅している.翻訳にあたって,この分野の研究を積極的になさっている多くの研究者の協力が得られたことは,本書の高いエビデンスを的確に伝える,という責任において満足いくものとなった.本稿を借りて厚くお礼を述べたい.
 2001年8月 宮田 隆

原著者序文

 今日まで70年以上の間,歯科医学分野の多くの優秀な臨床医たちは,歯周治療と全身疾患との関係をずっと観察し記録してきた.全身状態が口腔環境に与える影響,特に歯周組織へ与える影響はかなり前から認知され,科学的根拠に裏付けされてきたのである.しかし,歯周疾患が全身的な健康に及ぼす影響力の科学的根拠については,ごく最近確立してきたにすぎず,こうした近年の優れた研究によって,歯周炎のような口腔感染は,その影響が口腔組織に限定され,単に局所的に存在するというこれまでの概念は塗り替えられたのである.多くの臨床医たちの経験からも,歯周病は広く全身に影響を与える可能性があると考えられてきたが,それも,最近の正確な科学的手法をもった研究によってこの概念が裏付けられてきた.
 本書がもたらす情報は,これまで,このような形では集められたことがないものである.そして,著者らの目的の一つに,協力して全身疾患をもった歯周病患者の治療を行っている医師,歯科医師そして他の健康管理にかかわる専門家にその情報を提供することがある.これらの情報を得ることによって,臨床医が患者を評価するに際し,いっそう医科と歯科の交流を密にキることになるであろう.そして,医師と歯科医師との意見交換が継続的になる一つの要因にもなるであろう.本書が,医師と歯科医師の新しい協力関係を推進し,われわれ社会における全体的な健康増進の一助となり,さらなる研究の下地を提供することを期待する.
 この活動は,医科や歯科の学生たちのみならず,研修生や大学院の学生にも有用であると考えている.
 歯科と医科の隔たりを埋めるためには,よりよい教育,研究,そして診療を行うことである.われわれの目的は,歯周病と全身疾患の明確な関係を証明することである.ここに書かれている内容は,日々の臨床の場において実証されていくことになる.
 本書に寄稿していただいた,素晴らしい先生方に感謝する.そして,この価値のある出版物の著作にあたり,協力を惜しまなかったご家族の方々に心から感謝する.多くの有能な編集者をまとめ上げ,迅速にこれらの著作をまとめ上げ,タイムリーな時期に出版できたことをBrainDeeker氏に感謝する.また,一緒にこの仕事をしたすべての代理店,企業,そして財団にも心より感謝する.
 Genco氏は,この新しい研究活動を支え,貢献してくれたバッファロー校の同僚たちに感謝している.特に,このPeriodontalMedicineの編集に絶え間なく協力してくれた LouGoldbarg氏に,また,編集中に忙しい日程を通し,支えてくれた氏の妻のSandoraに感謝する.彼女は健康についてのアイデアに対してすばらしい意見を聞かせてくれた.そして,題材の準備,編集,そしてこの本を作成するのに不可欠な,その他の仕事を献身的に行ってくれたRoseParkhill氏にも感謝の意を表するものである.
 1999年8月 編者一同

目次

原著者一覧
監訳者序文
原著者序文
Color Photos

1 歯周病と全身疾患 宮田 隆
 口腔疾患と全身疾患:そのパラダイムシフト
 歯周組織の解剖学入門
 口腔の感染,全身疾患,および遺伝のパラダイム
 要約
2 歯周病のリスクファクター 前田勝正
 原因論
 病因論
 リスクファクターの評価
 リスクを評価するための研究方法とデータの解析
 背景因子や決定因子
 全身的リスクファクターおよびリスクインディケーター
 薬物と歯周病
 局所のリスクファクター:歯周細菌叢
 リスクファクター解析の臨床応用
 患者のリスクの決定
 臨床におけるリスクファクターの修正
 要約
3 病歴と検査室での検査 末田 武
 患者評価
 病歴
 臨床検査の解釈
 医学的リスクの評価
 歯科既往歴
4 成人性歯周炎の評価,リスク,あるいは管理にかかわる遺伝の役割 栗原英見
 歯周病
 一般的な疾患は通常,遺伝性素因と環境因子の両者を含む
 歯周病における遺伝的性質の役割
 結論
5 心血管系疾患と口腔感染症 大森喜弘,花澤重正
 感染性心内膜炎に対してリスクのある歯周病患者
 心臓弁膜疾患
 歯科の立場から考慮すべき事項
 人工弁心内膜炎
 抗凝固薬を服用している患者
 動脈硬化症,心臓冠状動脈疾患,脳卒中のリスクファクターとしての口腔感染症
 感染症による動脈硬化症の発症に関するメカニズム
6 歯周病と呼吸器疾患とのかかわり 西岡敏明,川浪雅光
 呼吸器疾患
 歯科に関連した問題点
7 喫煙と歯科医師の役割 澁谷俊昭
 喫煙の問題点
 基礎疾患
 喫煙の疫学
 ニコチン依存のリスクファクター
 だれが禁煙に成功するのか
 ニコチン常用者の治療における歯科医師の役割
 ニコチン依存症の治療
 推奨される最小限度の臨床的介入方法
 治療環境
 要約と結論
 今後の研究領域
8 糖尿病 高柴正悟,西村英紀
 糖尿病の分類と病態生理
 糖尿病の典型的な合併症
 糖尿病の臨床症状と診断
 口腔疾患と糖尿病
 糖尿病の血糖コントロールと歯周感染への影響
 糖尿病と歯科インプラント治療
 糖尿病の医学的管理
 糖尿病患者の歯科管理
 糖尿病患者と口腔の健康への道
9 歯周医学と女性患者 江澤庸博
 思春期
 月経
 妊娠
 経口避妊薬
 結論
10 骨減少症,骨粗鬆症および口腔疾患 高橋慶壮
 骨のリモデリング
 骨粗鬆症
 口腔の骨と骨減少症/骨粗鬆症
 骨粗鬆症と歯周病にとって共通のリスクファクター
 骨粗鬆症と歯周病に対する共通の治療戦略
 将来的な研究
11 HIV感染症と歯周病 田井秀明,吉江弘正
 用語
 HIV感染に強く関連してみられる病変
 HIV感染にときとして関連してみられる病変
 HIV感染でみられる病変
12 癌患者における歯周病と歯周管理 大野 純,草間 薫
 頭頚部癌患者
 多量の抗癌薬投与患者と骨髄移植患者
13 骨髄あるいは臓器移植患者に対する歯周病学的配慮 辰巳順一
 腎移植
 肝移植
 膵移植
 肺移植
 心移植
 骨髄移植
14 出血性疾患 内藤 徹,横田 誠
 正常な止血
 出血性疾患
 患者の評価
 治療
 結論
15 薬物療法 福田光男
 抗生物質
 薬物の局所投与
 抗生物質の局所投与
 消毒薬の局所投与
 薬物の生体への影響
 薬物の効果
 家畜やその他の肉における抗生物質
 抗生物質抵抗性と人類の使用法

索引

著者所属/略歴 ※本書が刊行された当時のものです.現在とは異なる場合があります.

【訳者一覧】(掲載順)
宮田 隆 明海大学歯学部歯周病学 教授
前田勝正 九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学 教授
末田 武 元鹿児島大学歯学部 教授
栗原英見 広島大学歯学部応用口腔医学講座 教授
大森喜弘 明海大学歯学部歯学基礎科学 教授
花澤重正 九州大学大学院歯学研究院免疫感染学 教授
西岡敏明 北海道大学歯学部附属病院保存系 歯科助手
川浪雅光 北海道大学大学院歯学研究科歯周病学 教授
澁谷俊昭 朝日大学歯学部歯周病学 講師
高柴正悟 岡山大学大学院医歯学総合研究科歯周病態学 助教授
西村英紀 岡山大学歯学部附属病院第二保存科 講師
江澤庸博 仙台市・荒巻及川歯科医院 院長
高橋慶壮 明海大学歯学部歯内療法学 講師
吉江弘正 新潟大学大学院医歯学総合研究科歯周診断・再建学 教授
田井秀明 新潟大学大学院医歯学総合研究科歯周診断・再建学 助手
大野 純 福岡歯科大学歯学部生体構造学 講師
草間 薫 明海大学歯学部口腔病理学 教授
辰巳順一 明海大学歯学部歯周病学 講師
内藤 徹 九州歯科大学歯学部歯科保存学第2 助手
横田 誠 九州歯科大学歯学部歯科保存学第2 教授
福田光男 愛知学院大学歯学部歯科保存学第3 助教授

執筆者の関連書籍を探す場合は下に表示された名前をクリックしてください

Louis F.Rose・Robert J.Genco・D.Walter Cohen・Brian L.Mealey 編著/宮田隆 監訳/前田勝正・末田武・栗原英見・大森喜弘・花澤重正・西岡敏明・川浪雅光・澁谷俊昭・髙柴正悟・西村英紀・江澤庸博・高橋慶壮・吉江弘正・田井秀明・大野純・草間薫・辰巳順一・内藤徹・横田誠・福田光男 訳

関連領域からさがす