第2版の序
現代社会には,多様なニーズと多様なサービスが存在する.そして,人々は自らの人生が豊かになることを望んでいる.本書の目的は,作業療法対象者の人生を豊かにするために質の高い作業療法が提供できるようになることである.そして,臨床実践および作業療法教育に役立つ作業療法管理学の入門書として,その理念を「作業療法管理学があって,はじめて質の高い作業療法が提供できる」として作らせていただいた.以上は,初版の序文で述べた内容の一部である.今回,第2版を作成させていただくことになったが,本書の目的と理念は変わらない.本書が作成された背景については初版の序文で述べているので確認されたい.
それでは,なぜ第2版を作成することになったかである.冒頭にも述べたが,現代社会は多様なニーズとサービスが存在する.さらには多様な価値観をもつ人々が共存共生しなければならない.大切なことは自身の存在価値を認め,相手を思いやることである.2019年12月以降,中国で原因不明の肺炎患者が確認され,その後WHOが新型コロナウィルスを確認し,瞬く間に世界中に広がった.日本でも2020年1月に国内初めての新型コロナウイルス感染症患者が確認された.その影響で,人と人との接触は遮断・制限され,さまざまな行事は中止・延期された.東京オリンピック・パラリンピック2020も延期された.2021年には変異型ウイルスが猛威を振るい始め,賛否両論はあったが東京オリンピック・パラリンピック2020は開催された.パラリンピックでは,障害のある人もない人も一緒にスポーツを楽しみ,競い合った.私たちは,人のもつ可能性とスポーツという作業のすばらしさをあらためて思い知らされ,感動した.
そんななか,国や自治体,さらには病院や学校などのさまざまな組織では,リーダーシップのあるリーダーが求められ,リスクマネジメントが遂行できるチームが求められている.これを作業療法士の業務に当てはめれば,まさに作業療法管理学の必要性を感じざるを得ない.
初版では,管理学で基本となる組織マネジメント,医療安全,医療サービスなどを解説し,さらに作業療法業務に関連する職業倫理,諸制度,臨床実習,キャリア開発などについて解説した.そして第2版では,感染対策,ハラスメント防止等を加えて,現代の作業療法現場に必要かつ役立つ内容とした.また初版の目次や内容を見直し,読みやすくわかりやすい文章にアップデートした.ぜひ本書を作業療法業務や作業療法教育にご活用いただきたい.そして,作業療法士の皆様に「作業療法管理学があって,はじめて質の高い作業療法が提供できる」が少しでも浸透すれば幸いである.
最後に,本書に協力いただきました皆様,ご助言・ご指導をいただきました皆様に深謝申し上げます.
2021年10月
編者 大庭潤平
序文
現代社会には,多様なニーズと多様なサービスが存在する.そして,人々は自らの人生が豊かになることを望んでいる.本書の目的は,作業療法対象者の人生を豊かにするために,個々の作業療法士が質の高い作業療法を提供できるようになることである.
わが国で1965年に『理学療法士及び作業療法士法』が制定されてから53年が経過し,作業療法士免許取得者は80,000人を超えた.現在,作業療法士の養成校は190校を超え,入学定員数は約7,500人となっている.また,社会保障制度変革をはじめとする社会情勢の変化や対象者のニーズや権利に対する意識の変化に伴い,作業療法の現場では,人材育成,医療安全管理,経営管理などの必要性が高まり,これまで療法に専念していた作業療法士らも組織の管理運営に責任を負う時代になっている.そのようななか,2017年に厚生労働省の「理学療法士・作業療法士養成施設カリキュラム等改善検討会」において,組織や業務の管理運営に関する科目として「作業療法管理学」の設置が検討され,2020年から「作業療法管理学」が作業療法養成教育課程に位置付けられることが決まった.
本書は,臨床実践および作業療法教育に役立つ作業療法管理学の入門書として,「作業療法管理学があって,はじめて質の高い作業療法が提供できる」という理念のもと編集させていただいた.第1~5章では,作業療法における管理学の位置づけ,組織マネジメント,医療安全,医療サービスなどの作業療法の管理運営に関するポイントを解説した.第6~8章では,作業療法業務の実際について解説した.第9~13章では,作業療法の職域や職業倫理,作業療法を取り巻く諸制度,作業療法臨床実習,作業療法士のキャリア開発等について解説した.また,各章に学習のねらいと学習課題を設けることで作業療法管理学の教本として活用しやすいようにした.コラムは,臨床経験10年未満(コラム執筆時)の作業療法士の方々にお願いして,作業療法を学ぶ学生や経験の浅い作業療法士の作業療法実践に役立つ体験談を執筆していただいたので,ぜひご一読いただきたい.
本書の出版にあたって,作業療法における臨床・管理運営・教育の経験豊かな作業療法士の方々にご協力いただいた.作業療法学生はもとより,新人作業療法士教育や指導者養成など,作業療法の実務の管理・運営に役立てば幸いである.
最後に,本書に協力いただきました皆様,ご助言・ご指導をいただきました皆様に深謝申し上げます.
2018年7月
編者 大庭潤平