はじめに
田村雄一
国際医療福祉大学三田病院循環器内科
1999年のエポプロステノール本邦導入から四半世紀あまりが経過した.かつて5年生存率が20%に満たない予後不良の疾患であった肺動脈性肺高血圧症は,3系統の治療薬が次々と登場したことから治療戦略が大きく進歩し,適切な治療につなげさえすれば予後を大きく変えることができる疾患となった.日本のレジストリデータから明らかになった3年生存率88.2%は世界的にも類を見ず,まさに隔世の感がある.
2025年は,肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)について大きな動きのある1年であった.2024年の第7回ワールドシンポジウムを受け,日本循環器学会よりいち早くガイドラインが改訂され,平均肺動脈圧>20mmHgへの定義変更をはじめ,わが国独自のリスク層別化指標や治療アルゴリズムが示された.また,4つ目の治療経路となるアクチビンシグナル伝達阻害薬ソタテルセプトも承認・発売された.これほど速い変化を日常診療の傍らで追うことは容易ではないため,ガイドラインの改訂を中心としたPH診療の現在地をわかりやすく理解するためのガイダンスが必要である.
そこで本特集では,PHの診療・研究を実際に先導してくださっている新進気鋭の先生方に,いま何がトレンドで,専門家はどう考えているのかをわかりやすく解説していただくことを主眼とした.心エコースクリーニングと診断から,新薬を取り入れた治療アルゴリズム,遺伝学的検査や肺移植適応を含む患者の層別化,吸入療法・カテーテル治療の広がり,ICTを活用した診療体制まで,PH診療の“今”を一望できる構成である.今後の展望も含めた各稿から,PH診療・研究の面白さや,やりがいが伝わるはずである.ご多忙のなか快く筆を執ってくださった先生方に,この場を借りて御礼申し上げたい.
本特集を読めば,2026年におけるPH診療のスタンダードにキャッチアップできるはずである.明日の外来で息切れからPHを想起する医師が1人でも増え,日本中・世界中の患者に貢献できることを切に願う.
田村雄一
国際医療福祉大学三田病院循環器内科
1999年のエポプロステノール本邦導入から四半世紀あまりが経過した.かつて5年生存率が20%に満たない予後不良の疾患であった肺動脈性肺高血圧症は,3系統の治療薬が次々と登場したことから治療戦略が大きく進歩し,適切な治療につなげさえすれば予後を大きく変えることができる疾患となった.日本のレジストリデータから明らかになった3年生存率88.2%は世界的にも類を見ず,まさに隔世の感がある.
2025年は,肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)について大きな動きのある1年であった.2024年の第7回ワールドシンポジウムを受け,日本循環器学会よりいち早くガイドラインが改訂され,平均肺動脈圧>20mmHgへの定義変更をはじめ,わが国独自のリスク層別化指標や治療アルゴリズムが示された.また,4つ目の治療経路となるアクチビンシグナル伝達阻害薬ソタテルセプトも承認・発売された.これほど速い変化を日常診療の傍らで追うことは容易ではないため,ガイドラインの改訂を中心としたPH診療の現在地をわかりやすく理解するためのガイダンスが必要である.
そこで本特集では,PHの診療・研究を実際に先導してくださっている新進気鋭の先生方に,いま何がトレンドで,専門家はどう考えているのかをわかりやすく解説していただくことを主眼とした.心エコースクリーニングと診断から,新薬を取り入れた治療アルゴリズム,遺伝学的検査や肺移植適応を含む患者の層別化,吸入療法・カテーテル治療の広がり,ICTを活用した診療体制まで,PH診療の“今”を一望できる構成である.今後の展望も含めた各稿から,PH診療・研究の面白さや,やりがいが伝わるはずである.ご多忙のなか快く筆を執ってくださった先生方に,この場を借りて御礼申し上げたい.
本特集を読めば,2026年におけるPH診療のスタンダードにキャッチアップできるはずである.明日の外来で息切れからPHを想起する医師が1人でも増え,日本中・世界中の患者に貢献できることを切に願う.
特集 最新の肺高血圧症診療にキャッチアップする
はじめに(田村雄一)
肺高血圧症診断のための心エコーの役割─スクリーニングから運動負荷心エコーまで(小保方 優)
Group 2 PHの肺血管機能障害におけるエネルギー代謝異常(佐藤大樹・他)
PAH治療はここまで変わる─ソタテルセプトが拓く“リバースリモデリング”の時代(足立史郎)
肺動脈性肺高血圧症の病態評価と治療アルゴリズム(田村祐大)
オスラー病に伴う肺高血圧症の診療の実態(杉浦寿彦)
最新のガイドラインに基づいた肺移植適応患者の決定(坂尾誠一郎)
可能性が広がるプロスタサイクリン吸入療法(白井悠一郎)
完全血行再建を目指すCTEPH治療の現在地(岸上大輝・下川原裕人)
ICTを活用した肺高血圧症の効果的診療─国内外の動静とDX・AX時代のユースケースを添えて(小山雅之)
TOPICS
免疫学 アルデヒド代謝による気道繊毛保護と呼吸器レジリエンス(新庄記子・岡部泰賢)
社会医学 安心して孤独でいられる社会のために:社会的処方の取り組み(西 智弘)
連載
医療にいかす行動経済学(27)
メタファを用いた医療ナッジのデザイン─認知心理学の視点から(楠見 孝)
知っておくと役に立つ!臨床医のための臨床検査医学講座(15)
骨代謝関連検査(竹内靖博)
ネオ免疫学 生命進化に学ぶ免疫学のパラダイムシフト(4)
血液細胞の進化─起源,誕生と多様化(長畑洋佑・河本 宏)
FORUM
分子生物学の臨床応用 “分子“から“疾患・患者”へ(14) mRNA医薬の進展と新規翻訳機構ICITによる機能拡張─PureCap法と環状mRNA技術を基盤として(長坂隆佑・阿部 洋)
次号の特集予告
はじめに(田村雄一)
肺高血圧症診断のための心エコーの役割─スクリーニングから運動負荷心エコーまで(小保方 優)
Group 2 PHの肺血管機能障害におけるエネルギー代謝異常(佐藤大樹・他)
PAH治療はここまで変わる─ソタテルセプトが拓く“リバースリモデリング”の時代(足立史郎)
肺動脈性肺高血圧症の病態評価と治療アルゴリズム(田村祐大)
オスラー病に伴う肺高血圧症の診療の実態(杉浦寿彦)
最新のガイドラインに基づいた肺移植適応患者の決定(坂尾誠一郎)
可能性が広がるプロスタサイクリン吸入療法(白井悠一郎)
完全血行再建を目指すCTEPH治療の現在地(岸上大輝・下川原裕人)
ICTを活用した肺高血圧症の効果的診療─国内外の動静とDX・AX時代のユースケースを添えて(小山雅之)
TOPICS
免疫学 アルデヒド代謝による気道繊毛保護と呼吸器レジリエンス(新庄記子・岡部泰賢)
社会医学 安心して孤独でいられる社会のために:社会的処方の取り組み(西 智弘)
連載
医療にいかす行動経済学(27)
メタファを用いた医療ナッジのデザイン─認知心理学の視点から(楠見 孝)
知っておくと役に立つ!臨床医のための臨床検査医学講座(15)
骨代謝関連検査(竹内靖博)
ネオ免疫学 生命進化に学ぶ免疫学のパラダイムシフト(4)
血液細胞の進化─起源,誕生と多様化(長畑洋佑・河本 宏)
FORUM
分子生物学の臨床応用 “分子“から“疾患・患者”へ(14) mRNA医薬の進展と新規翻訳機構ICITによる機能拡張─PureCap法と環状mRNA技術を基盤として(長坂隆佑・阿部 洋)
次号の特集予告















