やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 藤尾圭志
 東京大学大学院医学系研究科内科学専攻アレルギー・リウマチ学
 現代社会は未曽有の高齢化を迎えており,われわれの免疫システムも加齢とともに変化しています.臨床現場においても,高齢患者ほど感染症に罹患しやすく,ワクチンの効果が十分に得られないと感じる場面は少なくないでしょう.その背景には,免疫機能そのものが年齢とともに変容・低下していく“免疫老化(免疫セネセンス)”の影響があります.免疫老化により感染防御能は低下する一方で,慢性的な炎症が持続し,自己免疫反応が亢進しやすくなります.さらに,この現象はワクチン応答の減弱や感染症・悪性腫瘍のリスク増加のみならず,関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患の発症とも密接に関わると考えられています.しかし,その詳細な分子機構はいまだ十分に解明されておらず,まさに現在進行形の研究課題です.
 これまでの研究により,臓器の炎症と免疫老化が密接に関連することが明らかとなってきました.免疫老化の仕組みが解明され,そのプロセスを制御することが可能となれば,さまざまな疾患の予防・治療,さらには健康寿命の延伸へとつながることが期待されます.
 近年,ゲノム解析,シングルセル解析,空間分子解析などの技術革新により,ヒト免疫システムの理解は飛躍的に進展しています.本特集では,免疫老化研究を牽引する国内の第一線の研究者にご執筆いただき,造血幹細胞の老化,T細胞・B細胞の機能変容,サイトカイン環境や細胞代謝の変化,免疫細胞に蓄積する体細胞変異といった基礎的視点から,臓器別にみた疾患,特に自己免疫疾患への影響に至るまで,最新の知見を交えて多角的に論じます.
 高齢患者が増え続ける今日,免疫老化の本質を理解し,それを臨床応用や新規治療戦略の創出につなげることは極めて重要です.今なぜ免疫老化なのか.本特集を通じて,読者の皆さまにその意義を共有できれば幸いです.
 はじめに(藤尾圭志)
免疫老化概論
 (照屋寛之・岡村僚久)
造血幹細胞と免疫老化
 (横溝貴子・岩間厚志)
老化に伴う染色体異常と自己免疫疾患―高齢発症RAを例として
 (寺尾知可史)
免疫老化と細胞内代謝
 (河野通仁)
老化の炎症基盤としてのIL-6アンプとゲートウェイ反射―インフラメイジングの分子機構と抗老化ニューロモジュレーション医療の展望
 (村上 薫・他)
加齢関連疾患における反応性アルデヒド種(RASPs)の役割―全身性エリテマトーデス(SLE)の病態との関連
 (上月友寛・茶本健司)
T細胞の加齢変化とワクチン応答―COVID-19 mRNAワクチン接種後の免疫応答研究から見えてきたこと
 (米谷耕平・濵﨑洋子)
自己免疫疾患病態形成におけるThA細胞の役割
 (後藤愛佳)
関節リウマチにおけるCD4陽性TEMRA細胞
 (久保智史・中山田真吾)
高齢発症関節リウマチにおけるCD4陽性細胞傷害性T細胞
 (秋山光浩・他)
免疫老化と滑膜炎症
 (土屋遥香)
加齢関連B細胞の分化
 (馬場義裕)
加齢関連B細胞と自己免疫疾患
 (新納宏昭)
ANCA関連血管炎における免疫老化
 (宮本(辻井)敦子・西出真之)
皮膚エリテマトーデスと細胞老化
 (千見寺貴子・齋藤悠城)
T細胞免疫老化と神経変性疾患
 (西井慧美・三宅幸子)
老化による体細胞変異と炎症性疾患
 (桐野洋平)
慢性腎臓病における加齢T細胞
 (鳥生直哉・他)

 次号の特集予告