本書をまとめるにあたって
髙口光子さんとの出会いによって,わたしが高齢者介護に抱いていた10年分のもやもや・罪悪感などが,きれいに流されていくのを感じました.
10年前,老人施設の建築計画を研究していたわたしは,特別養護老人ホームで週2日の日勤(ボランティア)を2年間体験していました.そこでは,スタッフの方々が一斉にオムツ台車をひっぱり,競うようにしてオムツ交換をし,終わるとナースステーションで煙草を吸いながら合コン・転職の話などをし,コールには裏声で対処し,時間がくるとまたオムツ交換に一斉に出かける……という毎日で,ボランティアのわたしは「お年寄りと話をする」のが仕事で,結局何をしてよいかわからず,認知症のおばあちゃんと手をつなぎ,廊下を行ったり来たりするのが精一杯でした.
「介護って何なんだ?」「お年寄りの生活って……?」「建築でいくらがんばっても,現場がこれでは……」という気持ちがあり,「福祉なんて偽善だ」「日本の行政が変わらない限りよい介護はできない」と問題に向きあうことなく,逃げるように全く別の分野に就職してしまったのです.
そのもやもや感が髙口さんの講義を聞くうちに,涙とともに流れていきました.とくに,印象的だったのは以下の3点をきっぱりと言いきってもらったことです.
(1)サービスの根幹は食事・排泄・入浴である
(2)エコヒイキを当たり前のものとし,お年寄り全員にエコヒイキをする
(3)介護は共同体技術であり,リーダーの存在が不可欠である
このことに気づかせてもらい,もう一度建築という視点からきちんと高齢者介護に向きあおうと思うことができたのです.
しかし,その後髙口さんの書籍や連載などを読み込んでいくうちに,体験談としては非常に素晴らしいけれども,教科書(テキスト)というスタイルになっていないので,受験世代のわたしたちには要点がつかみにくく,「話を聞くと感動するけど,現場に戻ると何をしたらよいかわからない」という感じを受けるようになったのです.
その思いがこの本を作成するキッカケでした.わたしが建築に向きあうきっかけをもらった恩返しに,髙口さんの体験・思考・技術(スキル)を「リーダー論」としてまとめ,受験世代でも看護介護のリーダーとして要点がわかる本,現場に戻ってもパラパラと読み返し何度でも復習できる教科書をつくろうと思ったのです.
この本では,髙口さんの現場体験を他の介護保険施設の改革でも利用できるよう,テキスト化・図式化し,容易に理解できるように心がけています.建築士という介護職ではないわたしの視点から「髙口光子のリーダー論」を解説するようつとめています.
共同著者 杉田真記子
髙口光子さんとの出会いによって,わたしが高齢者介護に抱いていた10年分のもやもや・罪悪感などが,きれいに流されていくのを感じました.
10年前,老人施設の建築計画を研究していたわたしは,特別養護老人ホームで週2日の日勤(ボランティア)を2年間体験していました.そこでは,スタッフの方々が一斉にオムツ台車をひっぱり,競うようにしてオムツ交換をし,終わるとナースステーションで煙草を吸いながら合コン・転職の話などをし,コールには裏声で対処し,時間がくるとまたオムツ交換に一斉に出かける……という毎日で,ボランティアのわたしは「お年寄りと話をする」のが仕事で,結局何をしてよいかわからず,認知症のおばあちゃんと手をつなぎ,廊下を行ったり来たりするのが精一杯でした.
「介護って何なんだ?」「お年寄りの生活って……?」「建築でいくらがんばっても,現場がこれでは……」という気持ちがあり,「福祉なんて偽善だ」「日本の行政が変わらない限りよい介護はできない」と問題に向きあうことなく,逃げるように全く別の分野に就職してしまったのです.
そのもやもや感が髙口さんの講義を聞くうちに,涙とともに流れていきました.とくに,印象的だったのは以下の3点をきっぱりと言いきってもらったことです.
(1)サービスの根幹は食事・排泄・入浴である
(2)エコヒイキを当たり前のものとし,お年寄り全員にエコヒイキをする
(3)介護は共同体技術であり,リーダーの存在が不可欠である
このことに気づかせてもらい,もう一度建築という視点からきちんと高齢者介護に向きあおうと思うことができたのです.
しかし,その後髙口さんの書籍や連載などを読み込んでいくうちに,体験談としては非常に素晴らしいけれども,教科書(テキスト)というスタイルになっていないので,受験世代のわたしたちには要点がつかみにくく,「話を聞くと感動するけど,現場に戻ると何をしたらよいかわからない」という感じを受けるようになったのです.
その思いがこの本を作成するキッカケでした.わたしが建築に向きあうきっかけをもらった恩返しに,髙口さんの体験・思考・技術(スキル)を「リーダー論」としてまとめ,受験世代でも看護介護のリーダーとして要点がわかる本,現場に戻ってもパラパラと読み返し何度でも復習できる教科書をつくろうと思ったのです.
この本では,髙口さんの現場体験を他の介護保険施設の改革でも利用できるよう,テキスト化・図式化し,容易に理解できるように心がけています.建築士という介護職ではないわたしの視点から「髙口光子のリーダー論」を解説するようつとめています.
共同著者 杉田真記子
・本書をまとめるにあたって(春日井真記子)
・なぜ今,髙口光子が看護介護のリーダー論を問うか
1 看護介護のリーダー・中間管理職に必要なリーダーシップ―ケアの質は指導者の能力に左右される
1-1 リーダー・中間管理職のやるべきこと
配置図を理解・作成する 組織図を理解・作成・公表する 配置図・組織図の周知徹底
1-2 看護と介護の視点のズレをなくす
医療モデルと生活モデルの相違を認識する 病院で優秀なヘッドナースが生活支援施設のリーダーになるとき
1-3 リーダーシップとは?
誰でもできることを引き出す 個性を引き出す 最終決定は現場が行う(一人のお年寄りとのかかわりのなかで)
1-4 リーダーとしての「かまえ」-ケアする人をケアするのは誰か
2 介護リーダー(指導者)に必要な「ケア」技術―「ケア」を業務にさせない「気づき」「プロ意識」を見出し・育む
2-1 リーダー(施設)が目指すケアとは?
リーダーとして把握すべき介護の役割分担 お年寄りの生きている実感とスタッフが感じるケアの喜びとは
2-2 「食事」「排泄」「入浴」ケアの導入手順と指導のポイント
導入にあたっての基本的なスタート 食事:食べる楽しみを大切にしたケア 排泄:オムツよりトイレでの排泄を基本としたケア 入浴:お風呂がゆっくり・楽しみとなるようなケア
2-3 業務としてケアを確立していくために
流れ作業とならない「その人らしさ」を大切にするために 日常業務の見直しから実践・定着まで 勤務体制づくりのポイント
3 新人教育(中途採用も含む)と指導のポイント―スタッフの能力を学歴や勤務年数のみで評価しないために
3-1 新人職員が育つためのアセスメント
新人職員が育つ流れ
3-2 新人研修プログラムの計画と進めかたのポイント
3-3 「身体拘束(抑制)禁止」に対する意識づけと責任の所在
3-4 プロ意識の基本をつくるために
3-5 新人アセスメント
4 スタッフとの有効なコミュニケーションとかかわりかた―個々の職員の個性をどのように見極め伸ばしていくか
4-1 年配・若いスタッフを生かす言いかた・聴きかた
4-2 2対6対2の法則を頭に入れる
4-3 ときどきリーダーの本音をみせる
4-4 スタッフの「悩み」「つまずき」「不満」に対して有効にかかわる
スタッフ「個人」の問題解決 スタッフ間のトラブル解決 集団としてのトラブル解決 漠然としたトラブルを分析する
5 リーダーとしての介護施設のケアマネジメント―理念に基づく「ケア」を日常業務へ落とし込んでいくために
5-1 介護施設のケアマネジメントとは?
介護施設の2つのシステムライン 申し送りの方法 会議の運営方法 委員会活動の企画と進めかた 会議の進捗レベルを把握する 会議を効果的に行うために
5-2 施設独自の業務マニュアル作成のポイント
ケアの質の統一と向上のために
・まとめ
・参考資料-1 外出・外泊ケアプランの流れ
・参考資料-2 入浴改善(個浴)にたずさわって
・おわりに
・なぜ今,髙口光子が看護介護のリーダー論を問うか
1 看護介護のリーダー・中間管理職に必要なリーダーシップ―ケアの質は指導者の能力に左右される
1-1 リーダー・中間管理職のやるべきこと
配置図を理解・作成する 組織図を理解・作成・公表する 配置図・組織図の周知徹底
1-2 看護と介護の視点のズレをなくす
医療モデルと生活モデルの相違を認識する 病院で優秀なヘッドナースが生活支援施設のリーダーになるとき
1-3 リーダーシップとは?
誰でもできることを引き出す 個性を引き出す 最終決定は現場が行う(一人のお年寄りとのかかわりのなかで)
1-4 リーダーとしての「かまえ」-ケアする人をケアするのは誰か
2 介護リーダー(指導者)に必要な「ケア」技術―「ケア」を業務にさせない「気づき」「プロ意識」を見出し・育む
2-1 リーダー(施設)が目指すケアとは?
リーダーとして把握すべき介護の役割分担 お年寄りの生きている実感とスタッフが感じるケアの喜びとは
2-2 「食事」「排泄」「入浴」ケアの導入手順と指導のポイント
導入にあたっての基本的なスタート 食事:食べる楽しみを大切にしたケア 排泄:オムツよりトイレでの排泄を基本としたケア 入浴:お風呂がゆっくり・楽しみとなるようなケア
2-3 業務としてケアを確立していくために
流れ作業とならない「その人らしさ」を大切にするために 日常業務の見直しから実践・定着まで 勤務体制づくりのポイント
3 新人教育(中途採用も含む)と指導のポイント―スタッフの能力を学歴や勤務年数のみで評価しないために
3-1 新人職員が育つためのアセスメント
新人職員が育つ流れ
3-2 新人研修プログラムの計画と進めかたのポイント
3-3 「身体拘束(抑制)禁止」に対する意識づけと責任の所在
3-4 プロ意識の基本をつくるために
3-5 新人アセスメント
4 スタッフとの有効なコミュニケーションとかかわりかた―個々の職員の個性をどのように見極め伸ばしていくか
4-1 年配・若いスタッフを生かす言いかた・聴きかた
4-2 2対6対2の法則を頭に入れる
4-3 ときどきリーダーの本音をみせる
4-4 スタッフの「悩み」「つまずき」「不満」に対して有効にかかわる
スタッフ「個人」の問題解決 スタッフ間のトラブル解決 集団としてのトラブル解決 漠然としたトラブルを分析する
5 リーダーとしての介護施設のケアマネジメント―理念に基づく「ケア」を日常業務へ落とし込んでいくために
5-1 介護施設のケアマネジメントとは?
介護施設の2つのシステムライン 申し送りの方法 会議の運営方法 委員会活動の企画と進めかた 会議の進捗レベルを把握する 会議を効果的に行うために
5-2 施設独自の業務マニュアル作成のポイント
ケアの質の統一と向上のために
・まとめ
・参考資料-1 外出・外泊ケアプランの流れ
・参考資料-2 入浴改善(個浴)にたずさわって
・おわりに








