この本は,我々の仕事に影響を与えてくれた世界中の多くの人達に捧げたい.彼らの多くは,嚥下障害の治療において多職種アプローチの概念を打ち立て,発展させてきた先駆者である.彼らの行ってきた臨床的かつ明解な研究が礎となり,我々の専門分野が今なお発展し,嚥下障害患者の生活の質に寄与していることは疑いの余地がない.
前版までは,本稿で彼らの名前を個々に掲載してきた.しかし,ここに掲載できないくらいに広がりが出てしまった.ただ,彼らは(掲載せずとも)自分がそのなかに含まれるかどうかわかってくれている.
臨床科学は,発展の速度が遅い.臨床科学の発展には時間と努力を捧げる必要があるばかりではなく,捧げた努力により将来恩恵を受けるであろう患者と真剣に向き合うことが必要である.臨床科学には挫折,落とし穴,欠陥などがつきものである.
我々は,患者の幸せのために,また臨床科学に携わる人達のために,ここに2人の世界的な偉人の言葉を紹介する(もし彼らの言葉を間違った意味で紹介していたらお詫びしたい).
―無視されて,嘲笑されて,迫害される.
それでも,最後に勝つのは我々である.―
マハトマ・ガンディー(インド独立の父)
―ある方法を選んで試すことは常識である.
もし失敗しても素直に認めて別の方法を試すべきである.
しかし何にもまして大切なことは,常に何かを試すことである.―
フランクリン・ルーズベルト(第32代米国大統領)
すべての人に幸あれ
M.G. & M.C.
監訳者の言葉
私がGroher先生を知ったのは,藤島一郎先生と塩浦政男先生が翻訳された『嚥下障害―その病態とリハビリテーション』(医歯薬出版,1989年8月発行)を発刊直後に手にしたときでした.当時は嚥下障害に関する書籍が極めて少なかった時代であったため,その本の出現は衝撃的な出来事でした.本に目を通した当日より,著者の先生のもとで学びたいという衝動にかられ,ただちにニューヨークの退役軍人病院のGroher先生に手紙を出し,留学の受け入れをご快諾頂きました.先生は1990年5月にニューヨークからフロリダ州タンパの退役軍人病院の言語聴覚部門の主任として移られる予定とのことでしたので,赴任から半年ほど間をとり1990年11月から先生のもとで学ばせて頂きました.先生はたいへん温かく迎えて下さり,留学開始直後から家族ぐるみで一緒に遠出をして休日を過ごすなど,私を旧知の友人のようにもてなして下さいました.同時に,嚥下障害の診断からリハビリテーションまでを本当に丁寧に教えて下さいました.
一方,Crary先生は当時フロリダ大学の言語部門の主任をされていてGroher先生とは,半年に1回,フロリダ大学でカンファレンスを行っており,大学まで片道約2時間の道のりを私がGroher先生の愛車を運転しながら,慣れない英会話と右側通行に随分と神経を使ったことを懐かしく思い出します.Crary先生は明るく精力的な先生で,ジョークを散りばめながら懇切丁寧にさまざまなことを教えて下さいました.私は1992年に帰国し,翌1993年からほぼ毎年米国嚥下障害学会に参加し,学会期間中はGroher先生,Crary先生と夕食をともにしながら嚥下に関してはもちろん時事問題に至るさまざまなトピックについて楽しく学ばせて頂きました.
日本にいても,お二人とはメールで頻繁に意見交換を行っていますが,原著第1版のご執筆中から最高水準の専門書を書いていると何度も情報をいただき,ときには日本の情報をお尋ねになり,原著第1版の訳本を刊行することについては原著が米国で発刊される前よりお話を頂いていました.
発刊された原著を手にしたとき,とにかくその充実した内容に圧倒されました.嚥下障害に関わる各医療職の役割,治療の流れなどの解説,解剖と正常機能,新生児・小児の正常嚥下・発達・嚥下障害,嚥下障害の原因と特徴,臨床評価法,専門機器を用いた評価法,治療法の選択法,実際の治療法,科学的根拠の重要性などについて,最新の情報と豊富な実例を提示しながら丁寧に解説が加えられ,また各章ごとに学習目標も提示されていました.これからこの分野を学ぼうとする学生からベテランの臨床家まで,嚥下障害に携わるすべての方にとって必読の教科書であると確信しました.
この原著第1版の翻訳者としては,摂食嚥下障害の診断と治療の分野で活躍する全国の歯科大学等に所属する先生方が参加して下さいました.
今回の原著第3版は原著第1版発刊後に報告された重要な知見が網羅され,up to dateなたいへん充実した内容となっており,この分野に関わるすべての方の座右の書として相応しい本であると思います.翻訳者としてはGroher先生,Crary先生と直接関わってきた昭和大学歯科病院口腔機能リハビリテーション科の先生方に加え,この分野の国際学会や国内学会における海外研究者の講演において流暢な英語で活発に討論されている東北大学大学院の中尾真理先生,東京大学医学部附属病院の井口はるひ先生,兼岡麻子先生に担当して頂き,読みやすい訳本が完成したと思います.
令和5年1月
髙橋浩二
日本語版に寄せて
Dysphagia:Clinical Management in Adults and Childrenの原著第3版が,初版に引き続き再び日本語に翻訳されたことにこの上ない喜びを感じます.私たちの友人であり,同僚でもある髙橋浩二名誉教授が,翻訳を完遂させるために複数の翻訳者を集める労をとられたことを強調しないわけにはいきません.この日本語版を通して嚥下障害の患者への髙橋先生の揺るぎない献身的な努力を明確に認識したいと思います.私たちは,この30年間,大切な仲間そして友人として髙橋先生とお互いに楽しく交流してきました.私たちのために尽くされた髙橋先生のご努力に感謝するとともに,髙橋先生と同僚の方々が時間をかけて私たちの言葉を翻訳されたページから利益を得られる日本の専門家の皆様に感謝致します.
Michael E. Groher
レッドランズ大学名誉教授
米国言語聴覚士協会上級会員,名誉会員
Michael A. Crary
フロリダ嚥下障害研究所
米国言語聴覚士協会上級会員,名誉会員
Preface 原著序文
“Dysphagia: Clinical Management in Adults and Children”原著第3版の世界にようこそ!
どのようなものであれ,新しい領域では情報が急速に蓄積されていき,それによって私たちは認識を新たにしていく.これは,臨床科学の領域では望ましいことである.私たちはこうした情報の蓄積と知識のアップデートによって,問題に対する理解を深め続ける.本書であれば,この問題とは成人および小児の嚥下障害を指す.今回の版では,まず第一に,最新の知見に基づいて各章を更新した.そして,Evolve(注:原著のwebコンテンツで,日本語版では割愛)に掲げた画像や臨床例において,臨床例は議論を重ねるにあたり貴重なものは旧版から残し,患者管理の異なる側面に着目したものを新たに掲げている.また,既存の例であっても,いくつかは新たな見地から問題を投げかけてもいる.
さらに,前版までの流れに続き,本書は嚥下障害を有する乳児,小児および成人を治療するうえで,基礎的または包括的な基盤を確立したいと考える臨床家(clinician 訳者注:本文中では治療担当者と訳した)を対象に,診断と治療のプロセスとそれらを行う根拠となる研究をクローズアップしてまとめている.
包括的なアプローチがされているために,経験の浅い臨床家が本書を一読しても診断と治療に関して完全に理解することができない部分もあるだろうが,経験豊富な臨床家にとっては有益なものとなるに違いない.嚥下障害の治療について,初心者または上級者に指導する立場にある大学の教員に役立つように本書を以下のように構成した.
1.機器を用いた検査法の画像ライブラリー(Evolve上にある〈日本語版では割愛〉)へのアクセス
2.嚥下障害に関連した多くの問題を含む短い実例の紹介
3.鑑識眼を養うための症例(各章の臨床的考察)
4.問題解決能力を判定するための一連の入力問題を利用して,現病歴と既往歴,臨床所見,画像検査所見を統合し,自分自身の判断決定能力を分析するための症例(Evolve上にある〈日本語版では割愛〉)
5.なじみの薄い用語の本文中での強調と,Glossaryでの解説
さらに,我々自身の先入観や見識に基づいた逸話(各章の臨床ノート)を盛り込むことを試みた.なお,その逸話とは今までわれわれが治療した何百もの患者から実際に得られたものである.
こうした経験を膨らませた知見は,各章にクリニカル・パールという形で挿入している.これらによって,患者の治療にかかわる日々の臨床がよりよいものとなることを望んでいる.
また,目次自体も見直しており,今版ではChapter 3に加齢と嚥下障害の章を加えた.ここでは,嚥下障害を引き起こすような医学的状態にない,地域で生活している高齢者に着目している.また前版までのChapter 7(呼吸器系疾患と医原性疾患)を,読みやすく,また書かれたその内容を指導しやすいように二つに分けている.今版のChapter 7(呼吸器系疾患)は新たなセクションであり,誤嚥性肺炎の原因と帰結について詳述している.前版までのChapter 9(治療上考慮すべき点,治療法の選択)は,Chapter11の成人の治療のなかに凝縮している.嚥下障害の治療は大きく進んでいるため,Chapter 11も大幅に改訂した.そして,そうした進展を示す主要な文献を追加している.
われわれは,嚥下障害の治療法を指導する最良の方法は,問題解決のためのアプローチ法を解説することであると考えている.
本書では,治療法の危険性と恩恵を比較することを重視するような慣例を避けるように心がけた.臨床においては慣例的な治療ばかりを行うことで治療上の問題点を解決するための選択枝が見失われてしまうことが多々ある.
嚥下障害の治療の成功は,多くの医療専門職が協力することによって,はじめて実現させることができる(Chapter1を参照).嚥下障害の患者にとって多職種によってアプローチされることが最良であると知られている一方で,職種間の調整に失敗して多職種アプローチの質がうまくいかないこともある.多職種アプローチの調整は言語療法士が行うことが多い.本書では言語療法士の役割を強調しているが,他の職種の役割についても,おもに各章の症例紹介において説明した.
究極的には,本書は嚥下障害患者のあらゆる問題について,ならびに専門家がいかに嚥下障害を改善させるかについてに焦点を合わせて書かれている.嚥下障害は多くの医学的問題から,またときには非医学的(精神的)問題から生じること,さらに嚥下障害は嚥下機構の生理学的な変化だけで生じるのではないことを読者は理解するだろう.正常に飲み込むことができないということは,結果として患者の医学的健康および精神的健康に重大な影響を及ぼす.誤嚥性肺炎,低栄養,脱水のような嚥下障害の二次的な医学的問題が起こると,嚥下障害患者は免疫不全,精神的錯乱,あるいは死に至るまでの併発症に罹患しやくする.このことから嚥下障害の専門家は一般的な医学知識を十分に獲得するよう努めていかなければならない.読者は各章において嚥下障害をとり巻く重要な鍵ともいえる医学的概念について理解し,注意を払わなければならないが,いくつかの概念については本書を超えてさらに詳細に学ぶ必要があるだろう.
好きなものを安全に摂取できないということ,あるいは公共の場で普通に食べることができないということが二次的にうつ状態や精神的苦痛を生み出し,やがては社会生活から引きこもり,患者の生活の質の低下を招くであろうことは容易に理解できる.また,特別な食事を用意することは多大な時間を必要とし,経済的な負担となる場合もある.手短にいえば,人間の生活様式は食事時間を中心に展開しているのである.この正常な日常行動が中断されることは,はかりしれない打撃を生活にもたらす.したがって,嚥下障害の治療は生理学的機能の改善に向けて行われるだけではなく,最終的には普通に飲めないことから生じる心理社会的問題を正常に戻すために行われるべきである.また,嚥下障害患者の治療は失った機能を回復させる試みであると同時に,習得したリハビリテーションの手法を続けることにより,将来起こりうる医学的な併発症を予防する試みでもあるという観点で捉えるべきである.
嚥下障害患者の治療は,多くの医療専門職にとってかかわるべき専門領域の一つとなった.言語療法士が嚥下障害患者の治療を専門領域としたのはここ40年以内のことである.
臨床家が嚥下障害患者の治療に関するさまざまな問題点に遭遇することが多くなったため,臨床と基礎の科学研究者は,治療の質を向上させるために問題を解決したり提起したりする研究を行うようになった.これらの努力の多くは嚥下障害の専門誌であるDysphagiaや,毎年開催されている米国嚥下障害学会(The Dysphagia Research Society.訳者注:1992年に第1回Annual Meetingが開催されて以来,毎年開催されている米国の学会で,最近では日本からの参加者も増えた),米国言語聴覚協会(American Speech,Language,and Hearing Association;ASHA)の最も大きな研修部門(special interest division.訳者注;米国言語聴覚協会が主催する研修部門で,現在18の部門がある)である第13部門の嚥下障害に集約されている.また多くの専門分野から,嚥下障害患者の治療,診断,病因についてのテキストも出版され,その数は着実に増えつづけている.本書がそのうちの1冊として数えられるだけでなく,この分野に興味をもつ研究者と臨床家が嚥下障害患者の生活の質の向上に向けて途絶えることなく探求を続けることを後おしするものとなるよう願っている.
前版までは,本稿で彼らの名前を個々に掲載してきた.しかし,ここに掲載できないくらいに広がりが出てしまった.ただ,彼らは(掲載せずとも)自分がそのなかに含まれるかどうかわかってくれている.
臨床科学は,発展の速度が遅い.臨床科学の発展には時間と努力を捧げる必要があるばかりではなく,捧げた努力により将来恩恵を受けるであろう患者と真剣に向き合うことが必要である.臨床科学には挫折,落とし穴,欠陥などがつきものである.
我々は,患者の幸せのために,また臨床科学に携わる人達のために,ここに2人の世界的な偉人の言葉を紹介する(もし彼らの言葉を間違った意味で紹介していたらお詫びしたい).
―無視されて,嘲笑されて,迫害される.
それでも,最後に勝つのは我々である.―
マハトマ・ガンディー(インド独立の父)
―ある方法を選んで試すことは常識である.
もし失敗しても素直に認めて別の方法を試すべきである.
しかし何にもまして大切なことは,常に何かを試すことである.―
フランクリン・ルーズベルト(第32代米国大統領)
すべての人に幸あれ
M.G. & M.C.
監訳者の言葉
私がGroher先生を知ったのは,藤島一郎先生と塩浦政男先生が翻訳された『嚥下障害―その病態とリハビリテーション』(医歯薬出版,1989年8月発行)を発刊直後に手にしたときでした.当時は嚥下障害に関する書籍が極めて少なかった時代であったため,その本の出現は衝撃的な出来事でした.本に目を通した当日より,著者の先生のもとで学びたいという衝動にかられ,ただちにニューヨークの退役軍人病院のGroher先生に手紙を出し,留学の受け入れをご快諾頂きました.先生は1990年5月にニューヨークからフロリダ州タンパの退役軍人病院の言語聴覚部門の主任として移られる予定とのことでしたので,赴任から半年ほど間をとり1990年11月から先生のもとで学ばせて頂きました.先生はたいへん温かく迎えて下さり,留学開始直後から家族ぐるみで一緒に遠出をして休日を過ごすなど,私を旧知の友人のようにもてなして下さいました.同時に,嚥下障害の診断からリハビリテーションまでを本当に丁寧に教えて下さいました.
一方,Crary先生は当時フロリダ大学の言語部門の主任をされていてGroher先生とは,半年に1回,フロリダ大学でカンファレンスを行っており,大学まで片道約2時間の道のりを私がGroher先生の愛車を運転しながら,慣れない英会話と右側通行に随分と神経を使ったことを懐かしく思い出します.Crary先生は明るく精力的な先生で,ジョークを散りばめながら懇切丁寧にさまざまなことを教えて下さいました.私は1992年に帰国し,翌1993年からほぼ毎年米国嚥下障害学会に参加し,学会期間中はGroher先生,Crary先生と夕食をともにしながら嚥下に関してはもちろん時事問題に至るさまざまなトピックについて楽しく学ばせて頂きました.
日本にいても,お二人とはメールで頻繁に意見交換を行っていますが,原著第1版のご執筆中から最高水準の専門書を書いていると何度も情報をいただき,ときには日本の情報をお尋ねになり,原著第1版の訳本を刊行することについては原著が米国で発刊される前よりお話を頂いていました.
発刊された原著を手にしたとき,とにかくその充実した内容に圧倒されました.嚥下障害に関わる各医療職の役割,治療の流れなどの解説,解剖と正常機能,新生児・小児の正常嚥下・発達・嚥下障害,嚥下障害の原因と特徴,臨床評価法,専門機器を用いた評価法,治療法の選択法,実際の治療法,科学的根拠の重要性などについて,最新の情報と豊富な実例を提示しながら丁寧に解説が加えられ,また各章ごとに学習目標も提示されていました.これからこの分野を学ぼうとする学生からベテランの臨床家まで,嚥下障害に携わるすべての方にとって必読の教科書であると確信しました.
この原著第1版の翻訳者としては,摂食嚥下障害の診断と治療の分野で活躍する全国の歯科大学等に所属する先生方が参加して下さいました.
今回の原著第3版は原著第1版発刊後に報告された重要な知見が網羅され,up to dateなたいへん充実した内容となっており,この分野に関わるすべての方の座右の書として相応しい本であると思います.翻訳者としてはGroher先生,Crary先生と直接関わってきた昭和大学歯科病院口腔機能リハビリテーション科の先生方に加え,この分野の国際学会や国内学会における海外研究者の講演において流暢な英語で活発に討論されている東北大学大学院の中尾真理先生,東京大学医学部附属病院の井口はるひ先生,兼岡麻子先生に担当して頂き,読みやすい訳本が完成したと思います.
令和5年1月
髙橋浩二
日本語版に寄せて
Dysphagia:Clinical Management in Adults and Childrenの原著第3版が,初版に引き続き再び日本語に翻訳されたことにこの上ない喜びを感じます.私たちの友人であり,同僚でもある髙橋浩二名誉教授が,翻訳を完遂させるために複数の翻訳者を集める労をとられたことを強調しないわけにはいきません.この日本語版を通して嚥下障害の患者への髙橋先生の揺るぎない献身的な努力を明確に認識したいと思います.私たちは,この30年間,大切な仲間そして友人として髙橋先生とお互いに楽しく交流してきました.私たちのために尽くされた髙橋先生のご努力に感謝するとともに,髙橋先生と同僚の方々が時間をかけて私たちの言葉を翻訳されたページから利益を得られる日本の専門家の皆様に感謝致します.
Michael E. Groher
レッドランズ大学名誉教授
米国言語聴覚士協会上級会員,名誉会員
Michael A. Crary
フロリダ嚥下障害研究所
米国言語聴覚士協会上級会員,名誉会員
Preface 原著序文
“Dysphagia: Clinical Management in Adults and Children”原著第3版の世界にようこそ!
どのようなものであれ,新しい領域では情報が急速に蓄積されていき,それによって私たちは認識を新たにしていく.これは,臨床科学の領域では望ましいことである.私たちはこうした情報の蓄積と知識のアップデートによって,問題に対する理解を深め続ける.本書であれば,この問題とは成人および小児の嚥下障害を指す.今回の版では,まず第一に,最新の知見に基づいて各章を更新した.そして,Evolve(注:原著のwebコンテンツで,日本語版では割愛)に掲げた画像や臨床例において,臨床例は議論を重ねるにあたり貴重なものは旧版から残し,患者管理の異なる側面に着目したものを新たに掲げている.また,既存の例であっても,いくつかは新たな見地から問題を投げかけてもいる.
さらに,前版までの流れに続き,本書は嚥下障害を有する乳児,小児および成人を治療するうえで,基礎的または包括的な基盤を確立したいと考える臨床家(clinician 訳者注:本文中では治療担当者と訳した)を対象に,診断と治療のプロセスとそれらを行う根拠となる研究をクローズアップしてまとめている.
包括的なアプローチがされているために,経験の浅い臨床家が本書を一読しても診断と治療に関して完全に理解することができない部分もあるだろうが,経験豊富な臨床家にとっては有益なものとなるに違いない.嚥下障害の治療について,初心者または上級者に指導する立場にある大学の教員に役立つように本書を以下のように構成した.
1.機器を用いた検査法の画像ライブラリー(Evolve上にある〈日本語版では割愛〉)へのアクセス
2.嚥下障害に関連した多くの問題を含む短い実例の紹介
3.鑑識眼を養うための症例(各章の臨床的考察)
4.問題解決能力を判定するための一連の入力問題を利用して,現病歴と既往歴,臨床所見,画像検査所見を統合し,自分自身の判断決定能力を分析するための症例(Evolve上にある〈日本語版では割愛〉)
5.なじみの薄い用語の本文中での強調と,Glossaryでの解説
さらに,我々自身の先入観や見識に基づいた逸話(各章の臨床ノート)を盛り込むことを試みた.なお,その逸話とは今までわれわれが治療した何百もの患者から実際に得られたものである.
こうした経験を膨らませた知見は,各章にクリニカル・パールという形で挿入している.これらによって,患者の治療にかかわる日々の臨床がよりよいものとなることを望んでいる.
また,目次自体も見直しており,今版ではChapter 3に加齢と嚥下障害の章を加えた.ここでは,嚥下障害を引き起こすような医学的状態にない,地域で生活している高齢者に着目している.また前版までのChapter 7(呼吸器系疾患と医原性疾患)を,読みやすく,また書かれたその内容を指導しやすいように二つに分けている.今版のChapter 7(呼吸器系疾患)は新たなセクションであり,誤嚥性肺炎の原因と帰結について詳述している.前版までのChapter 9(治療上考慮すべき点,治療法の選択)は,Chapter11の成人の治療のなかに凝縮している.嚥下障害の治療は大きく進んでいるため,Chapter 11も大幅に改訂した.そして,そうした進展を示す主要な文献を追加している.
われわれは,嚥下障害の治療法を指導する最良の方法は,問題解決のためのアプローチ法を解説することであると考えている.
本書では,治療法の危険性と恩恵を比較することを重視するような慣例を避けるように心がけた.臨床においては慣例的な治療ばかりを行うことで治療上の問題点を解決するための選択枝が見失われてしまうことが多々ある.
嚥下障害の治療の成功は,多くの医療専門職が協力することによって,はじめて実現させることができる(Chapter1を参照).嚥下障害の患者にとって多職種によってアプローチされることが最良であると知られている一方で,職種間の調整に失敗して多職種アプローチの質がうまくいかないこともある.多職種アプローチの調整は言語療法士が行うことが多い.本書では言語療法士の役割を強調しているが,他の職種の役割についても,おもに各章の症例紹介において説明した.
究極的には,本書は嚥下障害患者のあらゆる問題について,ならびに専門家がいかに嚥下障害を改善させるかについてに焦点を合わせて書かれている.嚥下障害は多くの医学的問題から,またときには非医学的(精神的)問題から生じること,さらに嚥下障害は嚥下機構の生理学的な変化だけで生じるのではないことを読者は理解するだろう.正常に飲み込むことができないということは,結果として患者の医学的健康および精神的健康に重大な影響を及ぼす.誤嚥性肺炎,低栄養,脱水のような嚥下障害の二次的な医学的問題が起こると,嚥下障害患者は免疫不全,精神的錯乱,あるいは死に至るまでの併発症に罹患しやくする.このことから嚥下障害の専門家は一般的な医学知識を十分に獲得するよう努めていかなければならない.読者は各章において嚥下障害をとり巻く重要な鍵ともいえる医学的概念について理解し,注意を払わなければならないが,いくつかの概念については本書を超えてさらに詳細に学ぶ必要があるだろう.
好きなものを安全に摂取できないということ,あるいは公共の場で普通に食べることができないということが二次的にうつ状態や精神的苦痛を生み出し,やがては社会生活から引きこもり,患者の生活の質の低下を招くであろうことは容易に理解できる.また,特別な食事を用意することは多大な時間を必要とし,経済的な負担となる場合もある.手短にいえば,人間の生活様式は食事時間を中心に展開しているのである.この正常な日常行動が中断されることは,はかりしれない打撃を生活にもたらす.したがって,嚥下障害の治療は生理学的機能の改善に向けて行われるだけではなく,最終的には普通に飲めないことから生じる心理社会的問題を正常に戻すために行われるべきである.また,嚥下障害患者の治療は失った機能を回復させる試みであると同時に,習得したリハビリテーションの手法を続けることにより,将来起こりうる医学的な併発症を予防する試みでもあるという観点で捉えるべきである.
嚥下障害患者の治療は,多くの医療専門職にとってかかわるべき専門領域の一つとなった.言語療法士が嚥下障害患者の治療を専門領域としたのはここ40年以内のことである.
臨床家が嚥下障害患者の治療に関するさまざまな問題点に遭遇することが多くなったため,臨床と基礎の科学研究者は,治療の質を向上させるために問題を解決したり提起したりする研究を行うようになった.これらの努力の多くは嚥下障害の専門誌であるDysphagiaや,毎年開催されている米国嚥下障害学会(The Dysphagia Research Society.訳者注:1992年に第1回Annual Meetingが開催されて以来,毎年開催されている米国の学会で,最近では日本からの参加者も増えた),米国言語聴覚協会(American Speech,Language,and Hearing Association;ASHA)の最も大きな研修部門(special interest division.訳者注;米国言語聴覚協会が主催する研修部門で,現在18の部門がある)である第13部門の嚥下障害に集約されている.また多くの専門分野から,嚥下障害患者の治療,診断,病因についてのテキストも出版され,その数は着実に増えつづけている.本書がそのうちの1冊として数えられるだけでなく,この分野に興味をもつ研究者と臨床家が嚥下障害患者の生活の質の向上に向けて途絶えることなく探求を続けることを後おしするものとなるよう願っている.
1編 序論
Chapter 1 嚥下障害入門(Michael E. Groher著/髙橋浩二 訳)
嚥下障害とは何か?
罹患率と有病率
施設ごとの有病率
一般社会
急性期および慢性期の高齢者施設
急性期一般病院
急性期リハビリテーション施設
特定の疾患群
嚥下障害の帰結
医学的帰結
心理社会的帰結
臨床管理
臨床検査
画像検査による評価
治療法の選択
どの職種が嚥下障害に関わるか?
言語療法士
耳鼻咽喉科医
消化器内科医
放射線科医
神経内科医
歯科医師
看護師
栄養士
作業療法士
神経発達を促すための専門医療職
呼吸器科医と呼吸療法士
ケアのレベル
急性期医療施設
新生児集中治療室
亜急性期医療施設
回復期リハビリテーション施設
介護療養施設
在宅療養
まとめ
Chapter 2 成人における正常な嚥下機能(Michael E. Groher著/伊原良明 訳)
嚥下に関わる正常な解剖学
準備期(口腔準備期):(Oral Preparatory Stage)
口腔期/咽頭期:(Oral/Pharyngeal Stage)
食道期:(Esophageal Stage)
嚥下に関わる正常な生理学
口腔の準備
口腔期
呼吸と嚥下
咽頭期
食道期
食塊と移送の多様性
一口量と嚥下運動の調節
粘度
嚥下と加齢
口腔期と加齢
咽頭期と加齢
食道と加齢
嚥下の神経機構
末梢神経と延髄による調整
核上性の調節
まとめ
2編 成人の嚥下障害
Section 1 嚥下障害の原因と特徴
Chapter 3 加齢と嚥下障害(Michael E. Groher著/中尾真理 訳)
用語
よい年のとり方
虚弱
老嚥
サルコペニア
低栄養
介入
検出
スクリーニング
治療
まとめ
Chapter 4 成人における神経疾患(Michael A. Crary著/伊原良明 訳)
はじめに:嚥下の症状と神経障害
嚥下機能に関連する機能的神経構造の概要
大脳皮質の機能
大脳皮質の機能と嚥下障害
大脳半球脳血管障害における嚥下障害
治療法の検討
認知症における嚥下障害
治療法の検討
外傷性脳損傷における嚥下障害
治療法の検討
皮質下の機能
皮質下機能と嚥下障害:パーキンソン病
治療方法の検討
脳幹の機能
脳幹の機能と嚥下障害
治療法の検討
嚥下における小脳の役割
下位運動ニューロンと筋疾患
下位運動ニューロンの機能と嚥下障害
筋疾患と嚥下障害
神経原性嚥下障害と類似した突発性もしくは医原性嚥下障害
まとめ
Chapter 5 嚥下障害と頭頸部がん(Michael A. Crary著/髙橋浩二 訳)
疾患としてのがん
がんとは何か?
がんの診断
頭頸部がんの治療
外科手術
放射線治療
化学療法
嚥下障害と頭頸部がん
外科手術に起因する嚥下障害
放射線治療による嚥下障害
頭頸部がんにおける嚥下障害の評価戦略
嚥下障害の評価のタイミング
影響因子の評価
頭頸部がんにおける嚥下障害の治療戦略
嚥下訓練のタイミング
食塊移送の問題に対する治療法
気道防御の問題に対する治療法
放射線治療によって生じた粘膜と筋肉の変性に対する治療
まとめ
Chapter 6 食道の障害(Michael E. Groher著/中尾真理 訳)
言語療法士の役割
構造の異常
食道狭窄症
内腔変形
食道憩室
食道運動障害
蠕動運動障害
非特異的食道運動障害
下部食道括約筋の異常
アカラシア
下部食道括約筋の単独異常
胃食道逆流症
逆流のメカニズム
逆流を測定する
胃食道逆流症の治療
咽喉頭逆流症(LPR)
鑑別診断
咽頭食道移行部の障害
輪状咽頭筋の突出(cricopharyngeal bar)
Zenker憩室(Zenker's diverticulum)
咽頭食道連関
まとめ
Chapter 7 呼吸器系疾患(Michael E. Groher著/兼岡麻子 訳)
背景
人工気道
気管内チューブ
気管カニューレ
嚥下と気管切開
喉頭挙上
声門下圧の回復
誤嚥性肺炎
肺炎とは?
肺炎の兆候と症状
肺炎になるのはどのような人か?
肺炎(pneumonia)と誤嚥性肺臓炎(pneumonitis)
誤嚥性肺炎
まとめ
嚥下障害の役割
誤嚥性肺炎の治療法
慢性閉塞性肺疾患
急性増悪
COPDとGERD
まとめ
Chapter 8 医原性疾患(Michael E. Groher著/井口はるひ(背景~術後の嚥下障害の原因)・中尾真理(外傷~まとめ) 訳)
背景
術後の嚥下障害の原因
甲状腺摘出術
頸動脈内膜剥離術
心大血管手術
頸椎の処置とその後の状態
食道切除術
頭蓋底/後頭蓋窩
外傷
歯科的な外傷
熱傷
薬物加療
まとめ
Section 2 嚥下の評価
Chapter 9 成人の嚥下障害の臨床検査(Michael E. Groher著/髙橋浩二 訳)
臨床検査の理論的背景
嚥下障害の症状
患者による症状の説明
嚥下障害の兆候
既往歴
既往歴の記載事項
診察
臨床的観察
脳神経の検査
嚥下テスト
摂食の評価
誤嚥の検査
水飲みテスト
酸素飽和度測定
改訂エバンスブルーダイテスト(MEBD)
標準化された検査
補足的検査
まとめ
Chapter 10 画像を用いた嚥下検査―嚥下造影検査と嚥下内視鏡検査(Michael A. Crary著/伊原良明 訳)
画像を用いた嚥下検査の検討
画像を用いた嚥下検査の到達目標
画像を用いた嚥下検査の適応
嚥下造影検査
名前の由来
嚥下造影検査の目的
嚥下造影検査の手順
嚥下造影検査の利点と欠点
嚥下内視鏡検査
嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査の類似点と相違点
嚥下内視鏡検査の具体的手順
嚥下内視鏡検査の利点と欠点
嚥下造影検査と嚥下内視鏡検査の直接比較
まとめ
Section 3 治療法へのアプローチ
Chapter 11 成人の治療(Michael A. Crary著/武井良子 訳)
治療における基本的な検討事項
患者についての検討事項
介入方法についての検討事項
治療法の選択
嚥下訓練前の対応:内科的介入と外科的介入
内科的介入の選択肢
外科的介入の選択肢
声門閉鎖の改善
気道防御
食道入口部開大の改善
どの訓練法を選択し,何を考慮すべきか
嚥下障害の症状の管理:代償法,リハビリテーション,予防法
体幹の調整
頸部の調整
液体の粘度調整と食品調整
嚥下調整食
嚥下を変化させる:リハビリテーション的アプローチ
嚥下機構の改善:口腔器官の運動訓練
気道防御:息こらえ,息こらえ嚥下,強い息こらえ嚥下
嚥下の延長:メンデルソン手技
力を加える:努力嚥下
嚥下を変化させるためのその他の手技
新たなリハビリテーションの方向性:運動原理と補助療法
運動原理と嚥下障害の治療
補助療法は患者の治療にどのように役立つのか?
嚥下障害管理における予防
今後の方向性
科学的根拠の利用について
まとめ
Chapter 12 倫理的配慮(Michael E. Groher著/武井良子 訳)
医療倫理
事前指示
経管栄養
経腸栄養
経鼻胃管栄養
静脈栄養
経管栄養を行う理由
経管栄養からの離脱
誤嚥性肺炎
基本的な考え方
医学的側面以外のリスクとメリット
医学的側面以外のメリット
医学的側面以外のリスク
倫理的ジレンマ
まとめ
3編 乳幼児の嚥下障害
Chapter 13 乳幼児における典型的な摂食嚥下発達(Pamela Dodrill著/野末真司 訳)
頭頸部解剖の発達
乳児の頭頸部の発達
鰓弓
摂食に関わる他の身体機能の発達
消化器官の発達
肺器官の発達
神経系の発達
摂食に関わる反射の発達
吸啜-嚥下-呼吸の協調
早期離乳期における運動と認知の発達
授乳
哺乳瓶による授乳
固形物の導入
摂食の発達段階
成熟した摂食行動への移行
乳幼児と小児の栄養と成長に関する配慮
乳児の栄養に関する最新のガイドライン
小児の栄養に関するガイドライン
エネルギー必要量
主要栄養素,微量栄養素および水分の必要量
食品の分量と目安量
食品のとり扱いと衛生管理
成長曲線
まとめ
Chapter 14 乳幼児における摂食嚥下に影響を与える疾患(Pamela Dodrill著/野末真司 訳)
嚥下機能と嚥下障害
気道防御,誤嚥,無呼吸について
小児の摂食障害
摂食機能発達初期の遅延
摂食嚥下に影響を及ぼす可能性のある呼吸器系・心疾患
先天性心疾患
摂食嚥下に影響を及ぼす可能性のある胃腸障害
摂食嚥下に影響を及ぼす可能性のある神経系疾患
摂食嚥下に影響を及ぼす可能性のある先天性異常
小児の摂食嚥下に影響を及ぼす可能性のある母体および周産期の状況
妊娠期間
早産児の摂食に影響を与える要因のまとめ
摂食嚥下に影響を及ぼす可能性のある医原性合併症
経管栄養
呼吸のサポート
気管切開術
食物摂取による傷害
小児の摂食嚥下に影響を及ぼす可能性のあるその他の要因
扁桃炎と舌小帯短縮症
口腔機能障害
感覚情報処理障害
口腔過敏症
自閉症スペクトラム
親子関係
まとめ
Chapter 15 乳幼児の摂食嚥下評価(Pamela Dodrill著/伊原良明 訳)
摂食嚥下チーム
チームアプローチのモデル
マルチディシプリナリーチーム
インターディシプリナリーチーム
トランスディシプリナリーチーム
国際生活機能分類
病歴
臨床的摂食評価
画像検査
嚥下造影検査
嚥下造影検査における小児特有の事象
Penetration-Aspiration Scale
Functional Oral Intake Scale
嚥下内視鏡検査
嚥下内視鏡検査における小児固有の事象
他の機器を用いた評価
内視鏡
マノメトリー,インピーダンス,pH検査
頸部聴診
乳幼児における評価上の注意点
評価のタイミング
授乳
哺乳瓶での授乳
年長児における評価上の注意点
成長度
食物の好み
興味と意欲
急性期疾患で入院中の小児の評価
栄養の状態の安定
医学的安定
医療行為や病院の環境要因による制限
摂食嚥下機能の評価
慢性的な疾患や発達の遅れを抱える地域の小児の評価
発達度合いと潜在能力
病状の状態(安定,治癒,悪化,進行)
急性期からの移行
評価と治療計画における患者の関わり
食事の社会的側面
家族の負担
まとめ
Chapter 16 乳幼児の摂食嚥下障害の治療(Pamela Dodrill著/髙橋浩二 訳)
治療目標の設定
医療サービスの提供形態
嚥下機能の改善と気道防御を目的とした治療法
嚥下障害に対する治療介入
嚥下障害に対する代償的治療法―とろみつき液体の使用
嚥下障害に対するとろみつき液体の使用
胃食道逆流に対する粘度調整食品の使用
とろみつき液体
人工乳の粘度調整
どの増粘剤を使用するのか?
とろみつき液体の粘度テスト
液体の粘度調整による嚥下の代償的治療
食器・食具
摂食時の姿勢
外部ペーシングで行う哺乳ペースの調整
嚥下法
嚥下調整食による代償的治療
そのほかの食事療法
口腔感覚運動療法
食事時に有用な器具
哺乳瓶哺乳に有用な器具
母乳哺乳に有用な器具
食事時の姿勢
摂食時の行動療法
離乳期における栄養補助療法
栄養補助を開始する理由
栄養補助療法中の小児における摂食の問題
恒常的な経口摂取のために必要なこと
栄養補助療法から移行可能な小児の治療法の検討
乳幼児に対する治療法の検討
母乳育児
哺乳瓶哺乳
離乳への導入
幼児期・小児期に対する治療法の検討
治療への積極的な参加
動機づけ(モチベーション)
代償法の学習
急性期の健康上の問題を抱えた入院中の小児への対応
感染予防
特別な栄養管理が必要な患者
患者の安全な管理
社会で生活する小児への対応
治療結果の評価
Goal Attainment Scaling
まとめ
Appendix A 哺乳瓶(多々良紘子 訳)
Appendix B 頸部聴診器(多々良紘子 訳)
Appendix C コップ(多々良紘子 訳)
Appendix D おしゃぶり・口腔用おもちゃ(多々良紘子 訳)
Appendix E 小児用スプーン(多々良紘子 訳)
Appendix F 哺乳瓶用乳首(多々良紘子 訳)
Appendix G 授乳姿勢(多々良紘子 訳)
Appendix H 食事用の椅子(多々良紘子 訳)
Glossary(武井良子 訳)
Index 索引
Chapter 1 嚥下障害入門(Michael E. Groher著/髙橋浩二 訳)
嚥下障害とは何か?
罹患率と有病率
施設ごとの有病率
一般社会
急性期および慢性期の高齢者施設
急性期一般病院
急性期リハビリテーション施設
特定の疾患群
嚥下障害の帰結
医学的帰結
心理社会的帰結
臨床管理
臨床検査
画像検査による評価
治療法の選択
どの職種が嚥下障害に関わるか?
言語療法士
耳鼻咽喉科医
消化器内科医
放射線科医
神経内科医
歯科医師
看護師
栄養士
作業療法士
神経発達を促すための専門医療職
呼吸器科医と呼吸療法士
ケアのレベル
急性期医療施設
新生児集中治療室
亜急性期医療施設
回復期リハビリテーション施設
介護療養施設
在宅療養
まとめ
Chapter 2 成人における正常な嚥下機能(Michael E. Groher著/伊原良明 訳)
嚥下に関わる正常な解剖学
準備期(口腔準備期):(Oral Preparatory Stage)
口腔期/咽頭期:(Oral/Pharyngeal Stage)
食道期:(Esophageal Stage)
嚥下に関わる正常な生理学
口腔の準備
口腔期
呼吸と嚥下
咽頭期
食道期
食塊と移送の多様性
一口量と嚥下運動の調節
粘度
嚥下と加齢
口腔期と加齢
咽頭期と加齢
食道と加齢
嚥下の神経機構
末梢神経と延髄による調整
核上性の調節
まとめ
2編 成人の嚥下障害
Section 1 嚥下障害の原因と特徴
Chapter 3 加齢と嚥下障害(Michael E. Groher著/中尾真理 訳)
用語
よい年のとり方
虚弱
老嚥
サルコペニア
低栄養
介入
検出
スクリーニング
治療
まとめ
Chapter 4 成人における神経疾患(Michael A. Crary著/伊原良明 訳)
はじめに:嚥下の症状と神経障害
嚥下機能に関連する機能的神経構造の概要
大脳皮質の機能
大脳皮質の機能と嚥下障害
大脳半球脳血管障害における嚥下障害
治療法の検討
認知症における嚥下障害
治療法の検討
外傷性脳損傷における嚥下障害
治療法の検討
皮質下の機能
皮質下機能と嚥下障害:パーキンソン病
治療方法の検討
脳幹の機能
脳幹の機能と嚥下障害
治療法の検討
嚥下における小脳の役割
下位運動ニューロンと筋疾患
下位運動ニューロンの機能と嚥下障害
筋疾患と嚥下障害
神経原性嚥下障害と類似した突発性もしくは医原性嚥下障害
まとめ
Chapter 5 嚥下障害と頭頸部がん(Michael A. Crary著/髙橋浩二 訳)
疾患としてのがん
がんとは何か?
がんの診断
頭頸部がんの治療
外科手術
放射線治療
化学療法
嚥下障害と頭頸部がん
外科手術に起因する嚥下障害
放射線治療による嚥下障害
頭頸部がんにおける嚥下障害の評価戦略
嚥下障害の評価のタイミング
影響因子の評価
頭頸部がんにおける嚥下障害の治療戦略
嚥下訓練のタイミング
食塊移送の問題に対する治療法
気道防御の問題に対する治療法
放射線治療によって生じた粘膜と筋肉の変性に対する治療
まとめ
Chapter 6 食道の障害(Michael E. Groher著/中尾真理 訳)
言語療法士の役割
構造の異常
食道狭窄症
内腔変形
食道憩室
食道運動障害
蠕動運動障害
非特異的食道運動障害
下部食道括約筋の異常
アカラシア
下部食道括約筋の単独異常
胃食道逆流症
逆流のメカニズム
逆流を測定する
胃食道逆流症の治療
咽喉頭逆流症(LPR)
鑑別診断
咽頭食道移行部の障害
輪状咽頭筋の突出(cricopharyngeal bar)
Zenker憩室(Zenker's diverticulum)
咽頭食道連関
まとめ
Chapter 7 呼吸器系疾患(Michael E. Groher著/兼岡麻子 訳)
背景
人工気道
気管内チューブ
気管カニューレ
嚥下と気管切開
喉頭挙上
声門下圧の回復
誤嚥性肺炎
肺炎とは?
肺炎の兆候と症状
肺炎になるのはどのような人か?
肺炎(pneumonia)と誤嚥性肺臓炎(pneumonitis)
誤嚥性肺炎
まとめ
嚥下障害の役割
誤嚥性肺炎の治療法
慢性閉塞性肺疾患
急性増悪
COPDとGERD
まとめ
Chapter 8 医原性疾患(Michael E. Groher著/井口はるひ(背景~術後の嚥下障害の原因)・中尾真理(外傷~まとめ) 訳)
背景
術後の嚥下障害の原因
甲状腺摘出術
頸動脈内膜剥離術
心大血管手術
頸椎の処置とその後の状態
食道切除術
頭蓋底/後頭蓋窩
外傷
歯科的な外傷
熱傷
薬物加療
まとめ
Section 2 嚥下の評価
Chapter 9 成人の嚥下障害の臨床検査(Michael E. Groher著/髙橋浩二 訳)
臨床検査の理論的背景
嚥下障害の症状
患者による症状の説明
嚥下障害の兆候
既往歴
既往歴の記載事項
診察
臨床的観察
脳神経の検査
嚥下テスト
摂食の評価
誤嚥の検査
水飲みテスト
酸素飽和度測定
改訂エバンスブルーダイテスト(MEBD)
標準化された検査
補足的検査
まとめ
Chapter 10 画像を用いた嚥下検査―嚥下造影検査と嚥下内視鏡検査(Michael A. Crary著/伊原良明 訳)
画像を用いた嚥下検査の検討
画像を用いた嚥下検査の到達目標
画像を用いた嚥下検査の適応
嚥下造影検査
名前の由来
嚥下造影検査の目的
嚥下造影検査の手順
嚥下造影検査の利点と欠点
嚥下内視鏡検査
嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査の類似点と相違点
嚥下内視鏡検査の具体的手順
嚥下内視鏡検査の利点と欠点
嚥下造影検査と嚥下内視鏡検査の直接比較
まとめ
Section 3 治療法へのアプローチ
Chapter 11 成人の治療(Michael A. Crary著/武井良子 訳)
治療における基本的な検討事項
患者についての検討事項
介入方法についての検討事項
治療法の選択
嚥下訓練前の対応:内科的介入と外科的介入
内科的介入の選択肢
外科的介入の選択肢
声門閉鎖の改善
気道防御
食道入口部開大の改善
どの訓練法を選択し,何を考慮すべきか
嚥下障害の症状の管理:代償法,リハビリテーション,予防法
体幹の調整
頸部の調整
液体の粘度調整と食品調整
嚥下調整食
嚥下を変化させる:リハビリテーション的アプローチ
嚥下機構の改善:口腔器官の運動訓練
気道防御:息こらえ,息こらえ嚥下,強い息こらえ嚥下
嚥下の延長:メンデルソン手技
力を加える:努力嚥下
嚥下を変化させるためのその他の手技
新たなリハビリテーションの方向性:運動原理と補助療法
運動原理と嚥下障害の治療
補助療法は患者の治療にどのように役立つのか?
嚥下障害管理における予防
今後の方向性
科学的根拠の利用について
まとめ
Chapter 12 倫理的配慮(Michael E. Groher著/武井良子 訳)
医療倫理
事前指示
経管栄養
経腸栄養
経鼻胃管栄養
静脈栄養
経管栄養を行う理由
経管栄養からの離脱
誤嚥性肺炎
基本的な考え方
医学的側面以外のリスクとメリット
医学的側面以外のメリット
医学的側面以外のリスク
倫理的ジレンマ
まとめ
3編 乳幼児の嚥下障害
Chapter 13 乳幼児における典型的な摂食嚥下発達(Pamela Dodrill著/野末真司 訳)
頭頸部解剖の発達
乳児の頭頸部の発達
鰓弓
摂食に関わる他の身体機能の発達
消化器官の発達
肺器官の発達
神経系の発達
摂食に関わる反射の発達
吸啜-嚥下-呼吸の協調
早期離乳期における運動と認知の発達
授乳
哺乳瓶による授乳
固形物の導入
摂食の発達段階
成熟した摂食行動への移行
乳幼児と小児の栄養と成長に関する配慮
乳児の栄養に関する最新のガイドライン
小児の栄養に関するガイドライン
エネルギー必要量
主要栄養素,微量栄養素および水分の必要量
食品の分量と目安量
食品のとり扱いと衛生管理
成長曲線
まとめ
Chapter 14 乳幼児における摂食嚥下に影響を与える疾患(Pamela Dodrill著/野末真司 訳)
嚥下機能と嚥下障害
気道防御,誤嚥,無呼吸について
小児の摂食障害
摂食機能発達初期の遅延
摂食嚥下に影響を及ぼす可能性のある呼吸器系・心疾患
先天性心疾患
摂食嚥下に影響を及ぼす可能性のある胃腸障害
摂食嚥下に影響を及ぼす可能性のある神経系疾患
摂食嚥下に影響を及ぼす可能性のある先天性異常
小児の摂食嚥下に影響を及ぼす可能性のある母体および周産期の状況
妊娠期間
早産児の摂食に影響を与える要因のまとめ
摂食嚥下に影響を及ぼす可能性のある医原性合併症
経管栄養
呼吸のサポート
気管切開術
食物摂取による傷害
小児の摂食嚥下に影響を及ぼす可能性のあるその他の要因
扁桃炎と舌小帯短縮症
口腔機能障害
感覚情報処理障害
口腔過敏症
自閉症スペクトラム
親子関係
まとめ
Chapter 15 乳幼児の摂食嚥下評価(Pamela Dodrill著/伊原良明 訳)
摂食嚥下チーム
チームアプローチのモデル
マルチディシプリナリーチーム
インターディシプリナリーチーム
トランスディシプリナリーチーム
国際生活機能分類
病歴
臨床的摂食評価
画像検査
嚥下造影検査
嚥下造影検査における小児特有の事象
Penetration-Aspiration Scale
Functional Oral Intake Scale
嚥下内視鏡検査
嚥下内視鏡検査における小児固有の事象
他の機器を用いた評価
内視鏡
マノメトリー,インピーダンス,pH検査
頸部聴診
乳幼児における評価上の注意点
評価のタイミング
授乳
哺乳瓶での授乳
年長児における評価上の注意点
成長度
食物の好み
興味と意欲
急性期疾患で入院中の小児の評価
栄養の状態の安定
医学的安定
医療行為や病院の環境要因による制限
摂食嚥下機能の評価
慢性的な疾患や発達の遅れを抱える地域の小児の評価
発達度合いと潜在能力
病状の状態(安定,治癒,悪化,進行)
急性期からの移行
評価と治療計画における患者の関わり
食事の社会的側面
家族の負担
まとめ
Chapter 16 乳幼児の摂食嚥下障害の治療(Pamela Dodrill著/髙橋浩二 訳)
治療目標の設定
医療サービスの提供形態
嚥下機能の改善と気道防御を目的とした治療法
嚥下障害に対する治療介入
嚥下障害に対する代償的治療法―とろみつき液体の使用
嚥下障害に対するとろみつき液体の使用
胃食道逆流に対する粘度調整食品の使用
とろみつき液体
人工乳の粘度調整
どの増粘剤を使用するのか?
とろみつき液体の粘度テスト
液体の粘度調整による嚥下の代償的治療
食器・食具
摂食時の姿勢
外部ペーシングで行う哺乳ペースの調整
嚥下法
嚥下調整食による代償的治療
そのほかの食事療法
口腔感覚運動療法
食事時に有用な器具
哺乳瓶哺乳に有用な器具
母乳哺乳に有用な器具
食事時の姿勢
摂食時の行動療法
離乳期における栄養補助療法
栄養補助を開始する理由
栄養補助療法中の小児における摂食の問題
恒常的な経口摂取のために必要なこと
栄養補助療法から移行可能な小児の治療法の検討
乳幼児に対する治療法の検討
母乳育児
哺乳瓶哺乳
離乳への導入
幼児期・小児期に対する治療法の検討
治療への積極的な参加
動機づけ(モチベーション)
代償法の学習
急性期の健康上の問題を抱えた入院中の小児への対応
感染予防
特別な栄養管理が必要な患者
患者の安全な管理
社会で生活する小児への対応
治療結果の評価
Goal Attainment Scaling
まとめ
Appendix A 哺乳瓶(多々良紘子 訳)
Appendix B 頸部聴診器(多々良紘子 訳)
Appendix C コップ(多々良紘子 訳)
Appendix D おしゃぶり・口腔用おもちゃ(多々良紘子 訳)
Appendix E 小児用スプーン(多々良紘子 訳)
Appendix F 哺乳瓶用乳首(多々良紘子 訳)
Appendix G 授乳姿勢(多々良紘子 訳)
Appendix H 食事用の椅子(多々良紘子 訳)
Glossary(武井良子 訳)
Index 索引














