はじめに
臨床家として顎関節症の患者さんを診療するときにはじめに考えるのは,少しでも早く症状を取って楽にしてさしあげたい,ということである.ところが,顎関節症は主訴やその他の愁訴のバリエーションが多く,その対処法も種々ある.
たとえば,疼痛に対してNSAIDsを投与して様子を見るとか,咬合の違和感に対して咬合調整を試みることなどであるが,これらの方法は正しい診断が下される前に行われるべき処置ではない.疼痛においては慢性疼痛であったり心因性の疼痛もあるので,これらに対してNSAIDsは無効であろう.ましてや不可逆的処置は,確定診断が下されインフォームド・コンセントがなされて,初めて行われるべき処置である.
臨床医にとっては確定診断がつかない場合でも,まずは患者さんの症状を改善し,状態を安定させるために理学療法が有効である.そのなかでも運動療法は特殊な器具,用具を必要とせず,自覚,他覚所見を即座に明瞭に改善する効果のある方法であり,臨床医の多くの引き出しの一つとしてもっていると非常に重宝である.少なくとも私の顎関節臨床においては欠かすことのできない技法であり,ファーストチョイスの一つである.ときには,運動療法のみで治療が終了してしまう症例もある.
本書は「顎関節症臨床医の会」のメンバーが集まり,互いがもつ運動療法の技法を供覧しながらデイスカッションを重ねて知恵を集約し,本会の島田淳先生が中心になってまとめたものである.本書は臨床医が読んですぐに臨床に役立てるように構成されており,顎関節症の治療で経験豊富な臨床医の会のメンバーの手法も紹介されており,技法が身につけやすくなっている.
まずは患者さんに触れてみましょう.
中沢勝宏
臨床家として顎関節症の患者さんを診療するときにはじめに考えるのは,少しでも早く症状を取って楽にしてさしあげたい,ということである.ところが,顎関節症は主訴やその他の愁訴のバリエーションが多く,その対処法も種々ある.
たとえば,疼痛に対してNSAIDsを投与して様子を見るとか,咬合の違和感に対して咬合調整を試みることなどであるが,これらの方法は正しい診断が下される前に行われるべき処置ではない.疼痛においては慢性疼痛であったり心因性の疼痛もあるので,これらに対してNSAIDsは無効であろう.ましてや不可逆的処置は,確定診断が下されインフォームド・コンセントがなされて,初めて行われるべき処置である.
臨床医にとっては確定診断がつかない場合でも,まずは患者さんの症状を改善し,状態を安定させるために理学療法が有効である.そのなかでも運動療法は特殊な器具,用具を必要とせず,自覚,他覚所見を即座に明瞭に改善する効果のある方法であり,臨床医の多くの引き出しの一つとしてもっていると非常に重宝である.少なくとも私の顎関節臨床においては欠かすことのできない技法であり,ファーストチョイスの一つである.ときには,運動療法のみで治療が終了してしまう症例もある.
本書は「顎関節症臨床医の会」のメンバーが集まり,互いがもつ運動療法の技法を供覧しながらデイスカッションを重ねて知恵を集約し,本会の島田淳先生が中心になってまとめたものである.本書は臨床医が読んですぐに臨床に役立てるように構成されており,顎関節症の治療で経験豊富な臨床医の会のメンバーの手法も紹介されており,技法が身につけやすくなっている.
まずは患者さんに触れてみましょう.
中沢勝宏
はじめに(中沢勝宏)
第I章 理学療法とは
1 最近の顎関節症治療の考えと理学療法の位置づけ
2 理学療法を行うための基礎知識
第II章 運動療法を行うまでに必要なこと
1 ラポールの築きかた
2 医療面接
3 診察と検査
4 診断
5 インフォームド・コンセント
6 ゴール設定と治療方針
第III章 運動療法の実際
術者が行うもの(広義のマニピュレーション)
1 徒手的関節円板整位術(狭義のマニピュレーション)
2 筋・筋膜トリガーポイントに対する徒手療法(マッサージ)
3 ストレッチ療法
術者の指導により患者自身が行うもの(広義の運動療法)
4 筋訓練法(筋力増強訓練)
5 開閉口運動療法
6 自己牽引療法(ストレッチ運動)
7 マッサージ療法
第IV章 運動療法の応用
1 運動療法の威力を実感した症例(中沢勝宏)
2 当院の典型例にみる運動療法の効果(塚原宏泰)
3 基本術式と症例によるアレンジ(野澤健司)
4 運動療法導入の効果(島田 淳)
5 顎関節の診察・リハビリにも役立つ運動(髙野直久)
第V章 まとめ
(田口 望)
付録
文献
おわりに(和気裕之)
第I章 理学療法とは
1 最近の顎関節症治療の考えと理学療法の位置づけ
2 理学療法を行うための基礎知識
第II章 運動療法を行うまでに必要なこと
1 ラポールの築きかた
2 医療面接
3 診察と検査
4 診断
5 インフォームド・コンセント
6 ゴール設定と治療方針
第III章 運動療法の実際
術者が行うもの(広義のマニピュレーション)
1 徒手的関節円板整位術(狭義のマニピュレーション)
2 筋・筋膜トリガーポイントに対する徒手療法(マッサージ)
3 ストレッチ療法
術者の指導により患者自身が行うもの(広義の運動療法)
4 筋訓練法(筋力増強訓練)
5 開閉口運動療法
6 自己牽引療法(ストレッチ運動)
7 マッサージ療法
第IV章 運動療法の応用
1 運動療法の威力を実感した症例(中沢勝宏)
2 当院の典型例にみる運動療法の効果(塚原宏泰)
3 基本術式と症例によるアレンジ(野澤健司)
4 運動療法導入の効果(島田 淳)
5 顎関節の診察・リハビリにも役立つ運動(髙野直久)
第V章 まとめ
(田口 望)
付録
文献
おわりに(和気裕之)











