序
血小板輸血不応状態(PTR)や新生児血小板減少症(NAIT),さらには輸血関連急性肺障害(TRALI)など,輸血療法あるいは妊娠時の血小板または顆粒球に関する同種免疫の病態が近年注目されている.さらには,血小板型の不適合が造血幹細胞移植の成績を左右することも明らかになっている.そして,上記の病態についての研究の前提には,当該抗原・抗体に対する精度の高い検査法の確立,普及が必須条件である.しかしながら,血小板や顆粒球には免疫グロブリンを含む種々の血漿蛋白を非特異的に吸着しやすいという特徴があるため,その抗原・抗体を特異的に検出するには特別な工夫が必要であった.
柴田洋一先生が独創的な混合受身凝集法(MPHA)を確立し,血小板型Yukaを発見したことが契機となり,1988年,血小板の同種免疫に関心をもつ研究者を中心とする「日本血小板型ワークショップ」が日本輸血学会の下部組織として発足した.そして,International Granulocyte Immunology Workshopと対応すべく,1997年から顆粒球型ワークショップも「日本血小板型ワークショップ」の一部門として開催されるようになり,2004年以降,「日本血小板・顆粒球型ワークショップ」として,毎年の日本輸血・細胞治療学会総会時に血小板および顆粒球の抗原・抗体検査に関するミーティングが開かれている.
本書は,血小板および顆粒球抗原・抗体の標準検査法の普及を目的として,同ワークショップの熱心な会員諸兄姉にご執筆をお願いした.そして,検査法開発の経緯を理解するために,十字猛夫先生には,HLA検査の草創期からの回想,HBs抗原検査RPHA法(逆受身血球凝集法)開発にかかわる回想を特にご執筆いただいた.最高の感度,特異性を目指し,20年以上積み重ねられた検査法の改定,改良の結晶として,検査手技の細部にいたる決定版を作成したいと考えた次第である.本書が上記病態の臨床研究推進の一助になることを願うものである.
前書『血小板及び顆粒球抗原・抗体の臨床と技術』(2005年)の発行時より一方ならぬご支援をくださいましたオリンパス株式会社,そして今回,ご多用中のところご協力くださいました執筆者各位,ことに本書を企画立案された永尾暢夫先生,また本書を“月刊Medical Technology別冊”として制作出版してくださった医歯薬出版株式会社に深く感謝申しあげます.
2009年4月
「日本血小板・顆粒球型ワークショップ」会長/東京大学医学部附属病院輸血部・教授
髙橋孝喜
血小板輸血不応状態(PTR)や新生児血小板減少症(NAIT),さらには輸血関連急性肺障害(TRALI)など,輸血療法あるいは妊娠時の血小板または顆粒球に関する同種免疫の病態が近年注目されている.さらには,血小板型の不適合が造血幹細胞移植の成績を左右することも明らかになっている.そして,上記の病態についての研究の前提には,当該抗原・抗体に対する精度の高い検査法の確立,普及が必須条件である.しかしながら,血小板や顆粒球には免疫グロブリンを含む種々の血漿蛋白を非特異的に吸着しやすいという特徴があるため,その抗原・抗体を特異的に検出するには特別な工夫が必要であった.
柴田洋一先生が独創的な混合受身凝集法(MPHA)を確立し,血小板型Yukaを発見したことが契機となり,1988年,血小板の同種免疫に関心をもつ研究者を中心とする「日本血小板型ワークショップ」が日本輸血学会の下部組織として発足した.そして,International Granulocyte Immunology Workshopと対応すべく,1997年から顆粒球型ワークショップも「日本血小板型ワークショップ」の一部門として開催されるようになり,2004年以降,「日本血小板・顆粒球型ワークショップ」として,毎年の日本輸血・細胞治療学会総会時に血小板および顆粒球の抗原・抗体検査に関するミーティングが開かれている.
本書は,血小板および顆粒球抗原・抗体の標準検査法の普及を目的として,同ワークショップの熱心な会員諸兄姉にご執筆をお願いした.そして,検査法開発の経緯を理解するために,十字猛夫先生には,HLA検査の草創期からの回想,HBs抗原検査RPHA法(逆受身血球凝集法)開発にかかわる回想を特にご執筆いただいた.最高の感度,特異性を目指し,20年以上積み重ねられた検査法の改定,改良の結晶として,検査手技の細部にいたる決定版を作成したいと考えた次第である.本書が上記病態の臨床研究推進の一助になることを願うものである.
前書『血小板及び顆粒球抗原・抗体の臨床と技術』(2005年)の発行時より一方ならぬご支援をくださいましたオリンパス株式会社,そして今回,ご多用中のところご協力くださいました執筆者各位,ことに本書を企画立案された永尾暢夫先生,また本書を“月刊Medical Technology別冊”として制作出版してくださった医歯薬出版株式会社に深く感謝申しあげます.
2009年4月
「日本血小板・顆粒球型ワークショップ」会長/東京大学医学部附属病院輸血部・教授
髙橋孝喜
序
監修者・執筆者一覧
表紙のことば
HPA,HNAの分類命名
序章
HB抗原検査RPHA法(逆受身血球凝集法)開発の回想
わが国のHLA検査とHLA適合血小板導入当時の回想
第1章 血小板系
1.歴史
1 血小板抗原・抗体の発見の歴史
2 国際血小板型ワークショップのあゆみ
3 日本血小板型ワークショップのあゆみ
4 MPHA開発のあゆみ
2.総論
1 HLA適合血小板
2 血小板の分子生物学
3 血小板抗原・抗体の臨床的意義
4 Luminex
3.臨床
1 抗体スクリーニングとドナー確保
(1)献血者の抗体スクリーニング
(2)妊婦の抗体スクリーニング
(3)患者の抗体スクリーニング
(4)血小板抗原についてのドナー確保
2 輸血副作用
3 母児不適合妊娠
4 日本人家系から見出された新抗原
(1)Siba(HPA-2b)抗原の臨床的意義
(2)HPA-2bとHPA-4b抗体産生の謎
(3)Yuka/Yukbの臨床的意義
(4)CD36分子(Naka抗原)の臨床的意義
(5)HPA-7 new抗原の臨床的意義
5 HPA-6b抗原の臨床的意義
6 HPA-15抗原・抗体の臨床的意義
7 移植免疫
4.技術
<血清学的方法>
1 MPHA法
2 血小板抽出抗原MPHA法
3 M-MPHA法
4 MAIPA法
5 modified rapid MAIPA法
6 ELISA法(PAKPLUS)
7 PSIFT-FCM法
8 Luminex(ICFA法)
<遺伝子学的方法>
1 PCR-PHFA法
2 PCR-SSP法
3 PCR-SSCP法
4 Luminex(PCR-rSSOP法)
第2章 顆粒球系
1.歴史
1 顆粒球抗原・抗体系発見の歴史
2 国際顆粒球型ワークショップのあゆみ
3 日本顆粒球型ワークショップのあゆみ
4 わが国における顆粒球抗原・抗体の研究の現状
2.総論
1 顆粒球抗原・抗体の臨床的意義
2 顆粒球抗原・抗体とTRALI(輸血関連急性肺障害)
3.臨床
1 輸血副作用
2 母児不適合妊娠
4.技術
<血清学的方法>
1 顆粒球抗原とモノクローナル抗体
2 MPHA法
3 顆粒球抽出抗原MPHA法
4 FCM法
5 GIFT-FCM法
6 GIFT確認試験
7 GAT法
<遺伝子学的方法>
1 PCR-PHFA法
2 SSP法
3 SSCP法
4 Luminex(PCR-rSSOP法)
索引
監修者・執筆者一覧
表紙のことば
HPA,HNAの分類命名
序章
HB抗原検査RPHA法(逆受身血球凝集法)開発の回想
わが国のHLA検査とHLA適合血小板導入当時の回想
第1章 血小板系
1.歴史
1 血小板抗原・抗体の発見の歴史
2 国際血小板型ワークショップのあゆみ
3 日本血小板型ワークショップのあゆみ
4 MPHA開発のあゆみ
2.総論
1 HLA適合血小板
2 血小板の分子生物学
3 血小板抗原・抗体の臨床的意義
4 Luminex
3.臨床
1 抗体スクリーニングとドナー確保
(1)献血者の抗体スクリーニング
(2)妊婦の抗体スクリーニング
(3)患者の抗体スクリーニング
(4)血小板抗原についてのドナー確保
2 輸血副作用
3 母児不適合妊娠
4 日本人家系から見出された新抗原
(1)Siba(HPA-2b)抗原の臨床的意義
(2)HPA-2bとHPA-4b抗体産生の謎
(3)Yuka/Yukbの臨床的意義
(4)CD36分子(Naka抗原)の臨床的意義
(5)HPA-7 new抗原の臨床的意義
5 HPA-6b抗原の臨床的意義
6 HPA-15抗原・抗体の臨床的意義
7 移植免疫
4.技術
<血清学的方法>
1 MPHA法
2 血小板抽出抗原MPHA法
3 M-MPHA法
4 MAIPA法
5 modified rapid MAIPA法
6 ELISA法(PAKPLUS)
7 PSIFT-FCM法
8 Luminex(ICFA法)
<遺伝子学的方法>
1 PCR-PHFA法
2 PCR-SSP法
3 PCR-SSCP法
4 Luminex(PCR-rSSOP法)
第2章 顆粒球系
1.歴史
1 顆粒球抗原・抗体系発見の歴史
2 国際顆粒球型ワークショップのあゆみ
3 日本顆粒球型ワークショップのあゆみ
4 わが国における顆粒球抗原・抗体の研究の現状
2.総論
1 顆粒球抗原・抗体の臨床的意義
2 顆粒球抗原・抗体とTRALI(輸血関連急性肺障害)
3.臨床
1 輸血副作用
2 母児不適合妊娠
4.技術
<血清学的方法>
1 顆粒球抗原とモノクローナル抗体
2 MPHA法
3 顆粒球抽出抗原MPHA法
4 FCM法
5 GIFT-FCM法
6 GIFT確認試験
7 GAT法
<遺伝子学的方法>
1 PCR-PHFA法
2 SSP法
3 SSCP法
4 Luminex(PCR-rSSOP法)
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