第4版発刊にあたって
平成29年に第3版『スタンダード輸血検査テキスト』を出版してから,すでに8年の歳月が経過した.この間にも医学・医療技術は大きく進歩し,輸血医療の現場にも新しい知見や実践が数多く取り入れられてきた.
近年では,分子遺伝学的手法を用いた血液型検査や,遺伝子解析技術に基づく血液型判定の臨床応用が進展し,より正確で安全な輸血が可能となってきた.また,抗CD38モノクローナル抗体製剤をはじめとする新規治療薬の登場により,輸血副反応や免疫学的相互作用への対応が新たな課題となっている.さらに,COVID-19パンデミックは,血液製剤の安定供給や感染管理の観点から,輸血業務に対しても大きな影響を与えた.
制度面では,診療報酬改定において輸血管理体制の強化が求められ,患者血液管理(Patient Blood Management:PBM)が国際的にも推奨されるようになった.ISO15189をはじめとする国際基準への適合も,今後の輸血検査室における品質保証の重要な柱となっている.
今回の改訂では,これらの最新の動向に加え,病院情報システムと輸血部門との連携,小規模医療機関における輸血の実際,さらには在宅輸血の現状と課題について新たに章を設けた.これにより,大規模施設のみならず地域医療や在宅医療においても輸血の安全性と適正使用を確保するための指針を提示することができたと考えている.
さらには,各分野を牽引する専門家の方々に執筆をお願いし,第一線で培われた知見を結集することができた.本書は従来同様,認定輸血検査技師カリキュラムに則って編集しており,日常業務の実践書としてだけでなく,資格取得を目指す臨床検査技師にとっても有用な道標となることを願っている.
本テキストを手に取るすべての臨床検査技師,そして輸血医療に携わる医療従事者が,本書を通じて基礎から最新知識までを体系的に学び,安全で質の高い輸血医療の提供に貢献していただけることを心より期待する.
最後に,本テキストの改訂にあたりご尽力いただいたカリキュラム委員会編集委員の皆様ならびに多忙のなか執筆をご担当いただいた諸先生方に深甚なる謝意を表します.また,出版にあたり多大なご協力を賜った医歯薬出版株式会社の皆様にも,ここに厚く御礼を申し上げます.
令和7年10月
認定輸血検査技師制度協議会
カリキュラム委員会委員長
大谷慎一
第3版発行にあたって
平成19年に第2版である「スタンダード輸血検査テキスト」が出版されてから10年以上経過した.
日進月歩の現代医学のなかにあって,輸血医療も同時に発展している.
平成24年4月には日本赤十字社血液センター集約化により,全国7ブロック体制が開始された.また,同時に診療報酬で輸血管理料の改定(施設基準+適正使用加算の2段階)が実施された.平成24年10月には日本血液製剤機構が発足(血漿分画製剤の製造・販売)し,輸血業界としては大転換期であった.
さらには,平成26年4月には診療報酬「自己血輸血管理加算」が新設され,輸血管理料とともに,2段階の支払いが認められることとなった.
今回の改訂では,認定輸血検査技師制度の認定試験方法の変更について,自動機器による検査法((1)カラム法,(2)マイクロプレート法),科学的根拠に基づいたガイドラインの概要も含んだアルブミン製剤の適応,iPS細胞を用いた輸血医療,カリウム除去フィルター,Patient Blood Management(患者中心の輸血医療)など新たな項目を追加し,学習の幅をさらに広げることができた.
本テキストは,輸血医療に携わる臨床検査技師の標準書であるとともに,これから認定輸血検査技師を目指す臨床検査技師にとっても道しるべとなりうるよう編集されており,認定輸血検査技師カリキュラムに則って学習するために発刊されたテキストである.おおいに本テキストで知識を学び,技術を修得し,輸血医療を必要としている多くの患者さんにとって安心で安全な輸血医療を提供できるように日々精進をしていただきたいと考える.
本テキスト編集にあたっては,認定輸血検査技師制度協議会カリキュラム委員会を中心に編集委員を組織した.また,各執筆者による原稿は,編集委員で査読した.
最後に,本テキスト編集にご尽力いただいた前カリキュラム委員長である田中朝志先生,編集委員各位ならびに大変お忙しいなかご執筆いただきました諸先生方に深甚の謝意を表します.また,第3版の企画・編集に全面的にご協力いただきました医歯薬出版株式会社の方々にも改めて深く感謝申し上げます.
平成29年5月
認定輸血検査技師制度協議会
カリキュラム委員会委員長
大谷慎一
第2版発行にあたって
認定輸血検査技師制度は平成7年に発足し,修得すべき知識や技術の内容はカリキュラムに定められている.カリキュラムに則り学習を進めるために,標準的な教科書が求められ,平成11年に『スタンダード輸血検査テキスト』初版が発行された.
それから,約8年の月日が経つが,この期間は,まさにわが国の血液事業,輸血療法における変革の時代であったといってよい.
平成11年には日本赤十字社が献血者スクリーニング検査にHBV,HCV,HIVの核酸増幅法(NAT)を世界に先駆けて導入し,これらの輸血感染症発症率は克服したといえるほど低下している.
平成14年には『薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律』が公布され,後者は『安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律』と名称も変わった.この法律はいわゆる“薬害エイズ”の反省のもと制定され,その基本理念は血液製剤の安全性確保,国内の献血による安定供給,そして適正使用の推進である.わが国の血液事業や輸血療法を規定する近代的な法律がはじめて制定されたといってよい.
平成16年4月には,『生物由来製品感染等被害救済制度』が施行され,血液製剤による副作用で健康被害を生じた患者さんに医療費などの補償を行う制度である.このような社会の変化をふまえ,また,輸血学の変化にも呼応し,平成17年3月に認定輸血検査技師のカリキュラムが改定された.
平成17年4月には,『血液製剤等に関する遡及調査ガイドライン』が定められ実施され,さらに,平成17年9月には,『輸血療法の実施に関する指針』と『血液製剤の使用指針』が6年ぶりに改定された.
一方,平成18年4月には診療報酬「輸血管理料」が新設され,輸血療法に関する施設基準を満たした病院には一定の管理料が支払われることになった.
このように,今日は輸血療法に求められる社会的な要求が一気に法制度として具現化し,とくに輸血分野に従事するわれわれが学び,実行すべきことが格段に増えた時代である.このようなときに,本テキストの改訂作業が行われたことは,まさに時機を得たものと思われる.そのために頁数も初版と比べ100頁以上増加したが,認定輸血検査技師に求められる知識がますます増加していることを意味するものである.
現在,認定輸血検査技師は全国に1,200名以上おり,病院,血液センター,検査センターなどで活躍している.各施設で輸血検査や血液製剤の管理において,主体的な役割を果たしていると思われる.
これから認定輸血検査技師を目指す臨床検査技師の方々には是非,本テキストを片手に,輸血に関する知識と技術を向上させていただきたい.また,すでに認定輸血検査技師の資格を持っている方々にとっても,本テキストは新たな知識を得るために大いに役立つのではないかと思う.そして,多くの患者さんに安全で適正な輸血療法を提供するために,ますます,ご活躍願いたいと思うしだいである.
最後に,改訂第2版のために,初版に引き続き筆をとっていただいた多くの諸先生,新たに執筆陣に加わっていただいた諸先生に心より感謝致します.また,第2版の編集,発行の作業を支援していただきました医歯薬出版様には,大変お世話になりました.とくに全面的に改訂作業を担当していただきました桃井輝夫氏に深く感謝致します.
平成19年1月
認定輸血検査技師制度協議会
カリキュラム委員会委員長
比留間 潔
第1版発行にあたって
近年,輸血の副作用が社会的に大きく取り上げられ,輸血の安全性に対して大きな関心が寄せられている.国(厚生省)からも輸血療法の適正化に関するガイドラインなど輸血に関する各種のガイドラインが制定され,輸血療法を実施している病院に対する指導がなされている.一方,病院での輸血実施体制は輸血を指示する医師,輸血検査を担当する検査技師,輸血を実施する看護婦などのチームワークにより輸血療法が行われている.輸血を安全,適正に実施するにあたっては医師,検査技師,看護婦が輸血医療に対する十分な知識を持っている必要がある.医師サイドにおいては輸血認定医制度が発足し,全国で200名足らずの認定医が誕生している.しかしながら現在の認定医の人数で全国の輸血医療を実施している病院の輸血医療レベルを向上させることは不可能に近い.そこで現実的な選択として各病院で輸血検査・業務に携わっている検査技師が中心となって自施設の輸血療法レベルを向上させることが期待されている.これらの事情のもとに認定輸血検査技師の必要性が考えられた.
認定輸血検査技師制度は平成7年度にスタートしている.発足当初,受験者が学習すべき項目としてカリキュラムが示された.しかしながら当初より受験者から受験勉強をするにあたって認定輸血検査技師受験者のためのテキストブックを作製してほしいとの要望が寄せられていた.テキストブック作製については認定検査技師制度協議会内のカリキュラム委員会で検討し,今回,テキストブックを作製することとなった.カリキュラム委員会にテキスト編集小委員会を設け,カリキュラムに沿ってテキストを作製する方針で今回の編集作業を行った.各執筆者には認定輸血検査技師に必要とされる知識を中心に記述していただいた.専門的な内容,研究的な内容などはできるかぎり割愛し,日常の業務に重要と思われる事柄に限定して記述していただくこととした.
テキストブックの内容は受験者のみならず既に認定技師となっておられる技師の方にも日常の輸血業務をされるにあたっての参考書として利用していただける内容とした.本書で輸血療法の必須知識は網羅されていると考えている.執筆者の多くは認定輸血検査技師の方々である.第4章の臨床的事項は輸血認定医の先生方にお願いした.本書が受験者,認定技師の方々,また輸血業務に携わっている方々のお役に立てば幸いである.
本書の企画の段階でテキスト小委員会の副委員長として熱心に取り組んでいただいた笠原和恵氏が平成10年4月にご逝去されたのは非常に残念であった.笠原先生の熱意なくしては本書はできあがらなかったと考える.本書を笠原先生に捧げご冥福を祈りたい.最後に本書を出版するにあたり快く執筆を引き受けていただいた諸先生,また,出版を引き受けていただき,編集に際しお世話になった医歯薬出版に深謝いたします.
平成11年2月25日
認定輸血検査技師制度協議会
カリキュラム委員会委員長
テキスト編集小委員会委員長
倉田義之
テキスト編集小委員会委員
石田鶴子 押田眞智子
笠原和恵 金光 靖
木村恵子 能勢義介
松尾収二
平成29年に第3版『スタンダード輸血検査テキスト』を出版してから,すでに8年の歳月が経過した.この間にも医学・医療技術は大きく進歩し,輸血医療の現場にも新しい知見や実践が数多く取り入れられてきた.
近年では,分子遺伝学的手法を用いた血液型検査や,遺伝子解析技術に基づく血液型判定の臨床応用が進展し,より正確で安全な輸血が可能となってきた.また,抗CD38モノクローナル抗体製剤をはじめとする新規治療薬の登場により,輸血副反応や免疫学的相互作用への対応が新たな課題となっている.さらに,COVID-19パンデミックは,血液製剤の安定供給や感染管理の観点から,輸血業務に対しても大きな影響を与えた.
制度面では,診療報酬改定において輸血管理体制の強化が求められ,患者血液管理(Patient Blood Management:PBM)が国際的にも推奨されるようになった.ISO15189をはじめとする国際基準への適合も,今後の輸血検査室における品質保証の重要な柱となっている.
今回の改訂では,これらの最新の動向に加え,病院情報システムと輸血部門との連携,小規模医療機関における輸血の実際,さらには在宅輸血の現状と課題について新たに章を設けた.これにより,大規模施設のみならず地域医療や在宅医療においても輸血の安全性と適正使用を確保するための指針を提示することができたと考えている.
さらには,各分野を牽引する専門家の方々に執筆をお願いし,第一線で培われた知見を結集することができた.本書は従来同様,認定輸血検査技師カリキュラムに則って編集しており,日常業務の実践書としてだけでなく,資格取得を目指す臨床検査技師にとっても有用な道標となることを願っている.
本テキストを手に取るすべての臨床検査技師,そして輸血医療に携わる医療従事者が,本書を通じて基礎から最新知識までを体系的に学び,安全で質の高い輸血医療の提供に貢献していただけることを心より期待する.
最後に,本テキストの改訂にあたりご尽力いただいたカリキュラム委員会編集委員の皆様ならびに多忙のなか執筆をご担当いただいた諸先生方に深甚なる謝意を表します.また,出版にあたり多大なご協力を賜った医歯薬出版株式会社の皆様にも,ここに厚く御礼を申し上げます.
令和7年10月
認定輸血検査技師制度協議会
カリキュラム委員会委員長
大谷慎一
第3版発行にあたって
平成19年に第2版である「スタンダード輸血検査テキスト」が出版されてから10年以上経過した.
日進月歩の現代医学のなかにあって,輸血医療も同時に発展している.
平成24年4月には日本赤十字社血液センター集約化により,全国7ブロック体制が開始された.また,同時に診療報酬で輸血管理料の改定(施設基準+適正使用加算の2段階)が実施された.平成24年10月には日本血液製剤機構が発足(血漿分画製剤の製造・販売)し,輸血業界としては大転換期であった.
さらには,平成26年4月には診療報酬「自己血輸血管理加算」が新設され,輸血管理料とともに,2段階の支払いが認められることとなった.
今回の改訂では,認定輸血検査技師制度の認定試験方法の変更について,自動機器による検査法((1)カラム法,(2)マイクロプレート法),科学的根拠に基づいたガイドラインの概要も含んだアルブミン製剤の適応,iPS細胞を用いた輸血医療,カリウム除去フィルター,Patient Blood Management(患者中心の輸血医療)など新たな項目を追加し,学習の幅をさらに広げることができた.
本テキストは,輸血医療に携わる臨床検査技師の標準書であるとともに,これから認定輸血検査技師を目指す臨床検査技師にとっても道しるべとなりうるよう編集されており,認定輸血検査技師カリキュラムに則って学習するために発刊されたテキストである.おおいに本テキストで知識を学び,技術を修得し,輸血医療を必要としている多くの患者さんにとって安心で安全な輸血医療を提供できるように日々精進をしていただきたいと考える.
本テキスト編集にあたっては,認定輸血検査技師制度協議会カリキュラム委員会を中心に編集委員を組織した.また,各執筆者による原稿は,編集委員で査読した.
最後に,本テキスト編集にご尽力いただいた前カリキュラム委員長である田中朝志先生,編集委員各位ならびに大変お忙しいなかご執筆いただきました諸先生方に深甚の謝意を表します.また,第3版の企画・編集に全面的にご協力いただきました医歯薬出版株式会社の方々にも改めて深く感謝申し上げます.
平成29年5月
認定輸血検査技師制度協議会
カリキュラム委員会委員長
大谷慎一
第2版発行にあたって
認定輸血検査技師制度は平成7年に発足し,修得すべき知識や技術の内容はカリキュラムに定められている.カリキュラムに則り学習を進めるために,標準的な教科書が求められ,平成11年に『スタンダード輸血検査テキスト』初版が発行された.
それから,約8年の月日が経つが,この期間は,まさにわが国の血液事業,輸血療法における変革の時代であったといってよい.
平成11年には日本赤十字社が献血者スクリーニング検査にHBV,HCV,HIVの核酸増幅法(NAT)を世界に先駆けて導入し,これらの輸血感染症発症率は克服したといえるほど低下している.
平成14年には『薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律』が公布され,後者は『安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律』と名称も変わった.この法律はいわゆる“薬害エイズ”の反省のもと制定され,その基本理念は血液製剤の安全性確保,国内の献血による安定供給,そして適正使用の推進である.わが国の血液事業や輸血療法を規定する近代的な法律がはじめて制定されたといってよい.
平成16年4月には,『生物由来製品感染等被害救済制度』が施行され,血液製剤による副作用で健康被害を生じた患者さんに医療費などの補償を行う制度である.このような社会の変化をふまえ,また,輸血学の変化にも呼応し,平成17年3月に認定輸血検査技師のカリキュラムが改定された.
平成17年4月には,『血液製剤等に関する遡及調査ガイドライン』が定められ実施され,さらに,平成17年9月には,『輸血療法の実施に関する指針』と『血液製剤の使用指針』が6年ぶりに改定された.
一方,平成18年4月には診療報酬「輸血管理料」が新設され,輸血療法に関する施設基準を満たした病院には一定の管理料が支払われることになった.
このように,今日は輸血療法に求められる社会的な要求が一気に法制度として具現化し,とくに輸血分野に従事するわれわれが学び,実行すべきことが格段に増えた時代である.このようなときに,本テキストの改訂作業が行われたことは,まさに時機を得たものと思われる.そのために頁数も初版と比べ100頁以上増加したが,認定輸血検査技師に求められる知識がますます増加していることを意味するものである.
現在,認定輸血検査技師は全国に1,200名以上おり,病院,血液センター,検査センターなどで活躍している.各施設で輸血検査や血液製剤の管理において,主体的な役割を果たしていると思われる.
これから認定輸血検査技師を目指す臨床検査技師の方々には是非,本テキストを片手に,輸血に関する知識と技術を向上させていただきたい.また,すでに認定輸血検査技師の資格を持っている方々にとっても,本テキストは新たな知識を得るために大いに役立つのではないかと思う.そして,多くの患者さんに安全で適正な輸血療法を提供するために,ますます,ご活躍願いたいと思うしだいである.
最後に,改訂第2版のために,初版に引き続き筆をとっていただいた多くの諸先生,新たに執筆陣に加わっていただいた諸先生に心より感謝致します.また,第2版の編集,発行の作業を支援していただきました医歯薬出版様には,大変お世話になりました.とくに全面的に改訂作業を担当していただきました桃井輝夫氏に深く感謝致します.
平成19年1月
認定輸血検査技師制度協議会
カリキュラム委員会委員長
比留間 潔
第1版発行にあたって
近年,輸血の副作用が社会的に大きく取り上げられ,輸血の安全性に対して大きな関心が寄せられている.国(厚生省)からも輸血療法の適正化に関するガイドラインなど輸血に関する各種のガイドラインが制定され,輸血療法を実施している病院に対する指導がなされている.一方,病院での輸血実施体制は輸血を指示する医師,輸血検査を担当する検査技師,輸血を実施する看護婦などのチームワークにより輸血療法が行われている.輸血を安全,適正に実施するにあたっては医師,検査技師,看護婦が輸血医療に対する十分な知識を持っている必要がある.医師サイドにおいては輸血認定医制度が発足し,全国で200名足らずの認定医が誕生している.しかしながら現在の認定医の人数で全国の輸血医療を実施している病院の輸血医療レベルを向上させることは不可能に近い.そこで現実的な選択として各病院で輸血検査・業務に携わっている検査技師が中心となって自施設の輸血療法レベルを向上させることが期待されている.これらの事情のもとに認定輸血検査技師の必要性が考えられた.
認定輸血検査技師制度は平成7年度にスタートしている.発足当初,受験者が学習すべき項目としてカリキュラムが示された.しかしながら当初より受験者から受験勉強をするにあたって認定輸血検査技師受験者のためのテキストブックを作製してほしいとの要望が寄せられていた.テキストブック作製については認定検査技師制度協議会内のカリキュラム委員会で検討し,今回,テキストブックを作製することとなった.カリキュラム委員会にテキスト編集小委員会を設け,カリキュラムに沿ってテキストを作製する方針で今回の編集作業を行った.各執筆者には認定輸血検査技師に必要とされる知識を中心に記述していただいた.専門的な内容,研究的な内容などはできるかぎり割愛し,日常の業務に重要と思われる事柄に限定して記述していただくこととした.
テキストブックの内容は受験者のみならず既に認定技師となっておられる技師の方にも日常の輸血業務をされるにあたっての参考書として利用していただける内容とした.本書で輸血療法の必須知識は網羅されていると考えている.執筆者の多くは認定輸血検査技師の方々である.第4章の臨床的事項は輸血認定医の先生方にお願いした.本書が受験者,認定技師の方々,また輸血業務に携わっている方々のお役に立てば幸いである.
本書の企画の段階でテキスト小委員会の副委員長として熱心に取り組んでいただいた笠原和恵氏が平成10年4月にご逝去されたのは非常に残念であった.笠原先生の熱意なくしては本書はできあがらなかったと考える.本書を笠原先生に捧げご冥福を祈りたい.最後に本書を出版するにあたり快く執筆を引き受けていただいた諸先生,また,出版を引き受けていただき,編集に際しお世話になった医歯薬出版に深謝いたします.
平成11年2月25日
認定輸血検査技師制度協議会
カリキュラム委員会委員長
テキスト編集小委員会委員長
倉田義之
テキスト編集小委員会委員
石田鶴子 押田眞智子
笠原和恵 金光 靖
木村恵子 能勢義介
松尾収二
第4版発行にあたって
第3版発行にあたって
第2版発行にあたって
第1版発行にあたって
本書で使用しているおもな略語
I章 認定輸血検査技師制度
(大谷慎一)
1 目的
2 現状
3 認定輸血検査技師に求められる知識と技術
II章 輸血医学の歴史
(岡崎 仁)
1 Landsteiner以前
2 Landsteiner以降
3 ABO以外の血液型の発見ほか
4 輸血感染症,輸血副反応など
5 わが国における輸血の歴史
6 安全な輸血に向けて
III章 基礎医学
A─遺伝学(苣田慎一・大西宏明)
1 染色体と遺伝子
2 DNAとRNA
3 遺伝形式と表現型
a 常染色体顕性遺伝(優性遺伝)病
b 常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)病
c X染色体連鎖潜性遺伝(劣性遺伝)病
d その他の単一遺伝子病
e 多因子遺伝病
f ミトコンドリア遺伝病
g 染色体異常症
h 血液型の遺伝
i 遺伝子・蛋白質の表記
B─生化学(苣田慎一・大西宏明)
1 総論
a 糖質代謝
b 蛋白質代謝
c 脂質代謝
d 糖脂質と糖蛋白質
C─生理学(山﨑聡子・大西宏明)
1 循環生理
a 循環血液量とその調整
b 血液量の評価
c 循環動態の変化とその指標
d 浸透圧と循環血漿量
2 呼吸生理
a 酸素解離曲線
b 低酸素血症の指標
c 血液ガスのみかた
d 呼吸機能検査
D─免疫学(金子 誠)
1 抗原
a 抗原の決定基
b 抗原の機能による分類
c 抗原の由来,種属間の存在形式による分類
d スーパー抗原
2 抗体
a 抗体の主な働きと利点
b 免疫グロブリン
c モノクローナル抗体
d 抗原抗体反応
3 補体
a 活性化経路と補体の免疫反応
b 補体系の調整機構(補体活性化の制御)
c 補体関連分子の遺伝性疾患
4 細胞性免疫
a 細胞性免疫の意義
b 免疫担当細胞
c 同種免疫反応とMHC,免疫拒絶反応
5 アレルギー反応
a アレルギー反応の免疫学的機序と分類
6 自己免疫
a 免疫寛容
b 自己抗体
7 免疫不全
a 原発性免疫不全症
b 後天性免疫不全症
E─血液学(奥嶋博美)
1 造血機能
a 造血幹細胞
b 造血サイトカイン
2 血液細胞の機能と形態
a 血球の代謝と寿命
b 各細胞の機能と形態
3 血液凝固・線溶系
a 血液凝固系
b プロトロンビン時間,活性化部分トロンボプラスチン時間
4 線溶系
a 線溶と線溶抑制の機序
b 播種性血管内凝固症候群
IV章 輸血検査と精度管理
A─血液型と検査法
1 ABO血液型(古俣 妙)
a 遺伝形式
b 構造と糖転移酵素
c ABO血液型検査
2 Rh血液型
a 種類(丸山美津子)
b 遺伝形式と頻度(丸山美津子)
c D抗原の変異型(丸山美津子)
d C,c,E,e抗原(丸山美津子)
e Rh血液型検査(丸山美津子)
f ABO,Rh血液型以外の血液型(井手大輔)
g 汎赤血球凝集反応(井手大輔)
B─不規則抗体と検査法
1 不規則抗体の種類と性状(国分寺 晃)
a 不規則抗体
b 各血液型に対する抗体の性状
2 不規則抗体の臨床的意義(国分寺 晃)
a 溶血性輸血反応
b 胎児・新生児溶血性疾患
3 不規則抗体の検査法(森山昌彦)
a 試験管法による各検査法の特徴と注意点
b 不規則抗体スクリーニング
c 不規則抗体の同定
4 直接抗グロブリン試験(名倉 豊)
a 直接抗グロブリン試験陽性の意義
b 赤血球自己抗体の検査
c 直接抗グロブリン試験陽性時の輸血
C─自動機器による検査法
1 カラム凝集法(福吉葉子)
2 マイクロプレート法(上村正巳)
D─交差適合試験(日高陽子)
1 交差適合試験の目的
2 患者検体
3 輸血用血液製剤の選択
4 検査方法
5 結果の解釈
6 注意点
7 新生児の交差適合試験
E─赤血球型検査(赤血球系検査)ガイドライン(改訂5版)(国分寺 晃)
F─HLA
1 HLA領域の遺伝子構造(前島理恵子)
2 HLA分子の構造(前島理恵子)
3 HLA分子の発現と機能(前島理恵子)
4 HLA分子の多型性(前島理恵子)
5 臓器移植とHLA(前島理恵子)
6 同種造血幹細胞移植とHLA(前島理恵子)
7 HLAと疾患(前島理恵子)
8 HLAタイピング検査(杉本達哉)
a HLAのアレルタイピングの各方法(DNAタイピング)
9 抗HLA抗体(杉本達哉)
a 抗HLA抗体(抗HLA抗体検査および交差適合試験)
b 抗HLA抗体と輸血副反応
G─顆粒球(栗田絵美)
a 顆粒球抗原
b 顆粒球抗原・抗体検査
c 顆粒球抗体の臨床的意義
H─血小板(清川知子・冨山佳昭)
1 血小板抗原
a 種類
b 血小板型検査法
2 血小板抗体
a 血小板抗体の臨床的意義
b 血小板抗体検査法
I─血清型(日野郁生)
1 血漿蛋白質と非溶血性輸血反応
J─精度管理(国分寺 晃)
1 医療関係者の責務と精度管理
2 検査前・検査・検査後を含めた管理
3 検査室における管理(機器・試薬)
4 内部精度管理と外部精度管理
5 医療事故と精度管理
K─検査者の安全管理(奥嶋博美)
1 感染防止対策
2 感染予防対策の実際
3 感染性廃棄物の処理方法
4 感染対策を実行するための必要事項
L─検査者の教育(坊池義浩)
1 輸血検査技師の教育体制
2 輸血学に関する研究活動
3 臨床へのコンサルテーション
4 他部門との連携,血液センターとの連携
V章 血液製剤の適応と管理・供給
A─輸血用血液製剤
1 日本赤十字社から供給される輸血用血液製剤の種類と適応(三浦邦彦)
a 全血献血
b 成分献血
c 輸血用血液製剤に対する主な安全対策
d 輸血用血液製剤の種類と製造プロセス
e 各血液製剤の適応
f 抗凝固液および赤血球保存液の組成
2 輸血用血液製剤の保管・管理(清川知子)
a 輸血用血液製剤保管・管理の留意点
b 輸血用血液製剤の発注入庫時の管理
c 輸血用血液製剤の管理
d 輸血用血液製剤の搬出時の管理
e 在宅輸血での輸血用血液製剤の搬送・管理
3 顆粒球輸血(池本純子・吉原 哲)
a 顆粒球輸血の目的・適応
b ドナーの選択
c 顆粒球採取方法
d 顆粒球輸血に伴う副反応
B─血漿分画製剤
1 アルブミン製剤の適応(安村 敏)
a アルブミンの性状と生理機能
b アルブミン製剤の適応病態
c アルブミンの投与
d 投与効果の評価
e 推奨されない使用
2 免疫グロブリン製剤の適応(黒澤修兵)
3 血液凝固因子製剤の適応(田中朝志)
a 血液凝固第VIII因子製剤
b 血液凝固第IX因子製剤
c インヒビター治療製剤
d フィブリノゲン製剤
e 血液凝固第XIII因子製剤
4 その他の血漿分画製剤の適応(田中朝志)
a アンチトロンビン製剤
b ヒトハプトグロビン製剤
c ヒトC1-インアクチベータ製剤
d 活性化プロテインC製剤
C─自己血輸血(藤田 浩)
1 自己血輸血の目的
2 自己血輸血の適応とインフォームドコンセント
3 自己血輸血の種類と適応,合併症(禁忌含む)
a 貯血式自己血輸血
b 希釈式自己血輸血
c 回収式自己血輸血
D─iPS細胞を用いた輸血医療(杠 明憲)
1 iPS細胞由来血小板製剤の開発
2 iPS細胞由来赤血球製剤の開発
E─病院内血液製剤の供給体制
1 血液製剤依頼(深田恵利奈)
a 依頼体制
b T&S
c MSBOS
d SBOE
e コンピュータクロスマッチ
2 患者検体管理(浅野尚美)
a 採血時の過誤防止管理
b 検査時の過誤防止管理
c 検体および検査結果の管理
3 血液製剤の転用と有効利用(浅野尚美)
F─病院情報システム(大谷慎一)
VI章 輸血療法
A─輸血実施方法(奥嶋博美)
1 輸血に必要な医療器具
a 輸血セット(輸血フィルター)
b 加温器
c カリウム吸着フィルター
d 微小凝集塊除去フィルター
e 急速輸液装置
2 輸血速度
3 輸血量
4 患者と血液製剤の照合法
5 患者の観察
B─緊急輸血と大量輸血(豊﨑誠子)
1 緊急輸血,大量輸血時の病態
2 緊急出血時の検査体制
3 緊急時の輸血製剤の選択の方法
4 救急搬送時の体制
5 緊急時の輸血同意書の取得
6 緊急輸血,大量輸血時の合併症
7 危機的出血への対応ガイドライン
8 大量輸血プロトコール
9 輸血環境と救急医療体制
C─外科疾患への輸血療法(佐藤智彦・木田康太郎)
1 周術期の血液管理の重要性
2 周術期輸血の目的
3 周術期における制限輸血
4 周術期輸血の実際
5 血液の有効利用と手術用血液の準備法
D─血液疾患への輸血療法
1 慢性的な貧血(上田智朗)
2 白血病(上田智朗)
3 溶血性貧血(上田智朗)
4 播種性血管内凝固症候群(加藤 恒)
5 血小板減少症(加藤 恒)
6 血小板機能異常症(加藤 恒)
7 凝固異常症(加藤 恒)
8 TMA・HIT(加藤 恒)
E─造血幹細胞移植と輸血(田野崎隆二)
1 造血幹細胞移植の方法と種類
a 自家末梢血造血幹細胞移植
b 同種造血幹細胞移植
2 造血幹細胞移植に係る輸血部門業務
a 末梢血造血幹細胞採取,処理,保存と幹細胞数測定
b 骨髄処理
c 造血幹細胞移植における輸血および血液製剤の選択
F─臓器移植と輸血(上野豪久)
1 日本における臓器移植の現状
2 ABO血液型不適合移植
3 組織適合性試験と抗体関連拒絶
4 輸血によるサイトメガロウイルス感染症
G─小児科(周産期領域)(吉田丈俊)
1 新生児,低出生体重児の免疫学的特性
a 周産期免疫
b 新生児,低出生体重児のABO血液型と抗体
2 新生児,低出生体重児への輸血方法
a 赤血球輸血
b 血小板輸血
c 新鮮凍結血漿
d 交換輸血
e 血液製剤におけるサイトメガロウイルス抗体
3 胎児・新生児溶血性疾患
4 新生児血小板減少症
H─産科疾患(橘 大介)
1 妊娠・出産の生理,血液学的特徴
2 分娩時大量出血の病態
3 危機的出血への対応
I─細胞治療(奧山美樹)
1 免疫療法
a ドナーリンパ球輸注療法
b 活性化リンパ球療法
c 樹状細胞療法
d 白血球除去療法
e CAR-T細胞療法
2 再生医療
J─小規模医療機関における輸血(在宅輸血も含む)(玉井佳子)
1 輸血の適応・適正使用
2 輸血のリスク受容,連携体制の構築と同意書取得
3 輸血前検査と検体保管
4 輸血用血液製剤の発注,保管管理と交差適合試験実施
5 輸血実施場所への血液製剤の運搬と輸血実施準備
6 輸血実施時の患者観察と有害事象発生時の対応
7 輸血終了後(効果の検証と記録の保管)
VII章 輸血副反応とリスクマネジメント
A─輸血副反応(岡崎 仁)
1 ヘモビジランス
2 輸血副反応の管理
3 感染性副反応
a 輸血後肝炎
b 輸血後HIV感染
c 細菌感染症
d その他の輸血感染症
4 溶血性輸血反応
a 急性溶血性輸血反応
b 遅発性溶血性輸血反応
c 機械的溶血
5 非溶血性輸血反応
a 輸血関連急性肺障害
b 輸血関連循環過負荷
c 輸血関連呼吸困難
d アレルギー性反応,アナフィラキシー反応
e 発熱性非溶血性輸血反応
f 輸血後移植片対宿主病
6 その他の副反応
a 輸血後鉄過剰症
b 輸血後高カリウム血症
c 輸血後紫斑病
d 白血球による輸血副反応とその予防
B─輸血に関する医療事故防止(阿部 操)
C─輸血療法委員会(阿部 操)
1 輸血療法委員会に関する経緯
2 輸血療法委員会の目的
3 輸血療法委員会の構成と開催
4 輸血療法委員会での検討項目
5 各都道府県における合同輸血療法委員会
VIII章 Patient Blood Management
(田中朝志)
1 PBMとは
2 PBM発展の経緯
3 PBMの実践方法
4 わが国でのPBM
IX章 血液事業
A─輸血用血液の製造
1 献血制度
a 献血者の適格条件(津野寛和・石丸 健)
b 血液センターの検査体制(津野寛和・石丸 健)
c 保管管理体制(津野寛和・石丸 健)
d 病原体低減化への取り組み(井出武夫)
2 日本赤十字社血液センター
a 医薬情報活動(血液事業におけるMR活動について)(日野郁生)
b 輸血副反応報告体制(日野郁生)
c 造血幹細胞関連事業(東 史啓)
B─血漿分画製剤の製造(田中朝志)
1 血漿分画製剤とは
2 血漿分画製剤の利点と欠点
3 血漿分画製剤の製造方法
4 血漿分画製剤の国内自給率
X章 倫理的問題
(末岡榮三朗)
A─輸血とインフォームドコンセント
1 法的な問題
2 同種輸血用血液と血漿分画製剤の同意書に求められる事項
B─宗教上の理由で輸血が拒否される
1 宗教的輸血拒否に対する対応
2 患者の自己決定権と失血死
3 緊急輸血が必要とされる救急や術前インフォームドコンセント
4 自己決定能力と未成年者への輸血
XI章 輸血に関する法制度と指針
A─法律(清水 勝・大谷慎一)
1 安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(血液法)
a 成立の経緯
b 血液法の概要
2 再生医療法,薬機法の要点
a 生物由来製品と特定生物由来製品
b 関連分野の責務
B─患者と献血者の被害救済制度(清水 勝・大谷慎一)
1 患者の生物由来製品による感染等の被害救済制度
a 成立の経緯
b 目的と対象者
c 救済方法と障害の程度
2 献血者の健康被害救済制度
a 成立の経緯
b 目的と対象者
c 救済方法と障害の程度
C─指針(酒井和哉・松本雅則)
1 輸血療法に関する指針
2 輸血療法の在り方,管理に関する指針
a 輸血療法の実施に関する指針
b 血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン
c 危機的出血への対応ガイドライン
d 産科危機的出血への対応指針
e 宗教的輸血拒否に関するガイドライン
3 輸血検査に関する指針
4 血液製剤の適応に関する指針
a 血液製剤の使用指針
b 科学的根拠に基づいた赤血球製剤の使用ガイドライン
c 科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドライン
5 血液製剤,治療用細胞等の製造,調整に関する指針
a 自己血輸血:採血及び保管管理マニュアル
b 血液製剤の院内分割マニュアル
c クリオプレシピテート作成プロトコール
d 輸血によるGVHD予防のための血液に対する放射線照射ガイドライン
e 院内における血液細胞処理のための指針
f 同種末梢血幹細胞移植のための健常人ドナーから末梢血幹細胞動員・採取に関するガイドライン
XII章 輸血機能評価認定制度(I&A)
(河野武弘)
1 I&Aの背景とこれまでの経緯
2 認定・認定更新までの流れ
3 I&A制度の組織構成と質の担保
4 I&A制度の現状と今後の展望
索引
第3版発行にあたって
第2版発行にあたって
第1版発行にあたって
本書で使用しているおもな略語
I章 認定輸血検査技師制度
(大谷慎一)
1 目的
2 現状
3 認定輸血検査技師に求められる知識と技術
II章 輸血医学の歴史
(岡崎 仁)
1 Landsteiner以前
2 Landsteiner以降
3 ABO以外の血液型の発見ほか
4 輸血感染症,輸血副反応など
5 わが国における輸血の歴史
6 安全な輸血に向けて
III章 基礎医学
A─遺伝学(苣田慎一・大西宏明)
1 染色体と遺伝子
2 DNAとRNA
3 遺伝形式と表現型
a 常染色体顕性遺伝(優性遺伝)病
b 常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)病
c X染色体連鎖潜性遺伝(劣性遺伝)病
d その他の単一遺伝子病
e 多因子遺伝病
f ミトコンドリア遺伝病
g 染色体異常症
h 血液型の遺伝
i 遺伝子・蛋白質の表記
B─生化学(苣田慎一・大西宏明)
1 総論
a 糖質代謝
b 蛋白質代謝
c 脂質代謝
d 糖脂質と糖蛋白質
C─生理学(山﨑聡子・大西宏明)
1 循環生理
a 循環血液量とその調整
b 血液量の評価
c 循環動態の変化とその指標
d 浸透圧と循環血漿量
2 呼吸生理
a 酸素解離曲線
b 低酸素血症の指標
c 血液ガスのみかた
d 呼吸機能検査
D─免疫学(金子 誠)
1 抗原
a 抗原の決定基
b 抗原の機能による分類
c 抗原の由来,種属間の存在形式による分類
d スーパー抗原
2 抗体
a 抗体の主な働きと利点
b 免疫グロブリン
c モノクローナル抗体
d 抗原抗体反応
3 補体
a 活性化経路と補体の免疫反応
b 補体系の調整機構(補体活性化の制御)
c 補体関連分子の遺伝性疾患
4 細胞性免疫
a 細胞性免疫の意義
b 免疫担当細胞
c 同種免疫反応とMHC,免疫拒絶反応
5 アレルギー反応
a アレルギー反応の免疫学的機序と分類
6 自己免疫
a 免疫寛容
b 自己抗体
7 免疫不全
a 原発性免疫不全症
b 後天性免疫不全症
E─血液学(奥嶋博美)
1 造血機能
a 造血幹細胞
b 造血サイトカイン
2 血液細胞の機能と形態
a 血球の代謝と寿命
b 各細胞の機能と形態
3 血液凝固・線溶系
a 血液凝固系
b プロトロンビン時間,活性化部分トロンボプラスチン時間
4 線溶系
a 線溶と線溶抑制の機序
b 播種性血管内凝固症候群
IV章 輸血検査と精度管理
A─血液型と検査法
1 ABO血液型(古俣 妙)
a 遺伝形式
b 構造と糖転移酵素
c ABO血液型検査
2 Rh血液型
a 種類(丸山美津子)
b 遺伝形式と頻度(丸山美津子)
c D抗原の変異型(丸山美津子)
d C,c,E,e抗原(丸山美津子)
e Rh血液型検査(丸山美津子)
f ABO,Rh血液型以外の血液型(井手大輔)
g 汎赤血球凝集反応(井手大輔)
B─不規則抗体と検査法
1 不規則抗体の種類と性状(国分寺 晃)
a 不規則抗体
b 各血液型に対する抗体の性状
2 不規則抗体の臨床的意義(国分寺 晃)
a 溶血性輸血反応
b 胎児・新生児溶血性疾患
3 不規則抗体の検査法(森山昌彦)
a 試験管法による各検査法の特徴と注意点
b 不規則抗体スクリーニング
c 不規則抗体の同定
4 直接抗グロブリン試験(名倉 豊)
a 直接抗グロブリン試験陽性の意義
b 赤血球自己抗体の検査
c 直接抗グロブリン試験陽性時の輸血
C─自動機器による検査法
1 カラム凝集法(福吉葉子)
2 マイクロプレート法(上村正巳)
D─交差適合試験(日高陽子)
1 交差適合試験の目的
2 患者検体
3 輸血用血液製剤の選択
4 検査方法
5 結果の解釈
6 注意点
7 新生児の交差適合試験
E─赤血球型検査(赤血球系検査)ガイドライン(改訂5版)(国分寺 晃)
F─HLA
1 HLA領域の遺伝子構造(前島理恵子)
2 HLA分子の構造(前島理恵子)
3 HLA分子の発現と機能(前島理恵子)
4 HLA分子の多型性(前島理恵子)
5 臓器移植とHLA(前島理恵子)
6 同種造血幹細胞移植とHLA(前島理恵子)
7 HLAと疾患(前島理恵子)
8 HLAタイピング検査(杉本達哉)
a HLAのアレルタイピングの各方法(DNAタイピング)
9 抗HLA抗体(杉本達哉)
a 抗HLA抗体(抗HLA抗体検査および交差適合試験)
b 抗HLA抗体と輸血副反応
G─顆粒球(栗田絵美)
a 顆粒球抗原
b 顆粒球抗原・抗体検査
c 顆粒球抗体の臨床的意義
H─血小板(清川知子・冨山佳昭)
1 血小板抗原
a 種類
b 血小板型検査法
2 血小板抗体
a 血小板抗体の臨床的意義
b 血小板抗体検査法
I─血清型(日野郁生)
1 血漿蛋白質と非溶血性輸血反応
J─精度管理(国分寺 晃)
1 医療関係者の責務と精度管理
2 検査前・検査・検査後を含めた管理
3 検査室における管理(機器・試薬)
4 内部精度管理と外部精度管理
5 医療事故と精度管理
K─検査者の安全管理(奥嶋博美)
1 感染防止対策
2 感染予防対策の実際
3 感染性廃棄物の処理方法
4 感染対策を実行するための必要事項
L─検査者の教育(坊池義浩)
1 輸血検査技師の教育体制
2 輸血学に関する研究活動
3 臨床へのコンサルテーション
4 他部門との連携,血液センターとの連携
V章 血液製剤の適応と管理・供給
A─輸血用血液製剤
1 日本赤十字社から供給される輸血用血液製剤の種類と適応(三浦邦彦)
a 全血献血
b 成分献血
c 輸血用血液製剤に対する主な安全対策
d 輸血用血液製剤の種類と製造プロセス
e 各血液製剤の適応
f 抗凝固液および赤血球保存液の組成
2 輸血用血液製剤の保管・管理(清川知子)
a 輸血用血液製剤保管・管理の留意点
b 輸血用血液製剤の発注入庫時の管理
c 輸血用血液製剤の管理
d 輸血用血液製剤の搬出時の管理
e 在宅輸血での輸血用血液製剤の搬送・管理
3 顆粒球輸血(池本純子・吉原 哲)
a 顆粒球輸血の目的・適応
b ドナーの選択
c 顆粒球採取方法
d 顆粒球輸血に伴う副反応
B─血漿分画製剤
1 アルブミン製剤の適応(安村 敏)
a アルブミンの性状と生理機能
b アルブミン製剤の適応病態
c アルブミンの投与
d 投与効果の評価
e 推奨されない使用
2 免疫グロブリン製剤の適応(黒澤修兵)
3 血液凝固因子製剤の適応(田中朝志)
a 血液凝固第VIII因子製剤
b 血液凝固第IX因子製剤
c インヒビター治療製剤
d フィブリノゲン製剤
e 血液凝固第XIII因子製剤
4 その他の血漿分画製剤の適応(田中朝志)
a アンチトロンビン製剤
b ヒトハプトグロビン製剤
c ヒトC1-インアクチベータ製剤
d 活性化プロテインC製剤
C─自己血輸血(藤田 浩)
1 自己血輸血の目的
2 自己血輸血の適応とインフォームドコンセント
3 自己血輸血の種類と適応,合併症(禁忌含む)
a 貯血式自己血輸血
b 希釈式自己血輸血
c 回収式自己血輸血
D─iPS細胞を用いた輸血医療(杠 明憲)
1 iPS細胞由来血小板製剤の開発
2 iPS細胞由来赤血球製剤の開発
E─病院内血液製剤の供給体制
1 血液製剤依頼(深田恵利奈)
a 依頼体制
b T&S
c MSBOS
d SBOE
e コンピュータクロスマッチ
2 患者検体管理(浅野尚美)
a 採血時の過誤防止管理
b 検査時の過誤防止管理
c 検体および検査結果の管理
3 血液製剤の転用と有効利用(浅野尚美)
F─病院情報システム(大谷慎一)
VI章 輸血療法
A─輸血実施方法(奥嶋博美)
1 輸血に必要な医療器具
a 輸血セット(輸血フィルター)
b 加温器
c カリウム吸着フィルター
d 微小凝集塊除去フィルター
e 急速輸液装置
2 輸血速度
3 輸血量
4 患者と血液製剤の照合法
5 患者の観察
B─緊急輸血と大量輸血(豊﨑誠子)
1 緊急輸血,大量輸血時の病態
2 緊急出血時の検査体制
3 緊急時の輸血製剤の選択の方法
4 救急搬送時の体制
5 緊急時の輸血同意書の取得
6 緊急輸血,大量輸血時の合併症
7 危機的出血への対応ガイドライン
8 大量輸血プロトコール
9 輸血環境と救急医療体制
C─外科疾患への輸血療法(佐藤智彦・木田康太郎)
1 周術期の血液管理の重要性
2 周術期輸血の目的
3 周術期における制限輸血
4 周術期輸血の実際
5 血液の有効利用と手術用血液の準備法
D─血液疾患への輸血療法
1 慢性的な貧血(上田智朗)
2 白血病(上田智朗)
3 溶血性貧血(上田智朗)
4 播種性血管内凝固症候群(加藤 恒)
5 血小板減少症(加藤 恒)
6 血小板機能異常症(加藤 恒)
7 凝固異常症(加藤 恒)
8 TMA・HIT(加藤 恒)
E─造血幹細胞移植と輸血(田野崎隆二)
1 造血幹細胞移植の方法と種類
a 自家末梢血造血幹細胞移植
b 同種造血幹細胞移植
2 造血幹細胞移植に係る輸血部門業務
a 末梢血造血幹細胞採取,処理,保存と幹細胞数測定
b 骨髄処理
c 造血幹細胞移植における輸血および血液製剤の選択
F─臓器移植と輸血(上野豪久)
1 日本における臓器移植の現状
2 ABO血液型不適合移植
3 組織適合性試験と抗体関連拒絶
4 輸血によるサイトメガロウイルス感染症
G─小児科(周産期領域)(吉田丈俊)
1 新生児,低出生体重児の免疫学的特性
a 周産期免疫
b 新生児,低出生体重児のABO血液型と抗体
2 新生児,低出生体重児への輸血方法
a 赤血球輸血
b 血小板輸血
c 新鮮凍結血漿
d 交換輸血
e 血液製剤におけるサイトメガロウイルス抗体
3 胎児・新生児溶血性疾患
4 新生児血小板減少症
H─産科疾患(橘 大介)
1 妊娠・出産の生理,血液学的特徴
2 分娩時大量出血の病態
3 危機的出血への対応
I─細胞治療(奧山美樹)
1 免疫療法
a ドナーリンパ球輸注療法
b 活性化リンパ球療法
c 樹状細胞療法
d 白血球除去療法
e CAR-T細胞療法
2 再生医療
J─小規模医療機関における輸血(在宅輸血も含む)(玉井佳子)
1 輸血の適応・適正使用
2 輸血のリスク受容,連携体制の構築と同意書取得
3 輸血前検査と検体保管
4 輸血用血液製剤の発注,保管管理と交差適合試験実施
5 輸血実施場所への血液製剤の運搬と輸血実施準備
6 輸血実施時の患者観察と有害事象発生時の対応
7 輸血終了後(効果の検証と記録の保管)
VII章 輸血副反応とリスクマネジメント
A─輸血副反応(岡崎 仁)
1 ヘモビジランス
2 輸血副反応の管理
3 感染性副反応
a 輸血後肝炎
b 輸血後HIV感染
c 細菌感染症
d その他の輸血感染症
4 溶血性輸血反応
a 急性溶血性輸血反応
b 遅発性溶血性輸血反応
c 機械的溶血
5 非溶血性輸血反応
a 輸血関連急性肺障害
b 輸血関連循環過負荷
c 輸血関連呼吸困難
d アレルギー性反応,アナフィラキシー反応
e 発熱性非溶血性輸血反応
f 輸血後移植片対宿主病
6 その他の副反応
a 輸血後鉄過剰症
b 輸血後高カリウム血症
c 輸血後紫斑病
d 白血球による輸血副反応とその予防
B─輸血に関する医療事故防止(阿部 操)
C─輸血療法委員会(阿部 操)
1 輸血療法委員会に関する経緯
2 輸血療法委員会の目的
3 輸血療法委員会の構成と開催
4 輸血療法委員会での検討項目
5 各都道府県における合同輸血療法委員会
VIII章 Patient Blood Management
(田中朝志)
1 PBMとは
2 PBM発展の経緯
3 PBMの実践方法
4 わが国でのPBM
IX章 血液事業
A─輸血用血液の製造
1 献血制度
a 献血者の適格条件(津野寛和・石丸 健)
b 血液センターの検査体制(津野寛和・石丸 健)
c 保管管理体制(津野寛和・石丸 健)
d 病原体低減化への取り組み(井出武夫)
2 日本赤十字社血液センター
a 医薬情報活動(血液事業におけるMR活動について)(日野郁生)
b 輸血副反応報告体制(日野郁生)
c 造血幹細胞関連事業(東 史啓)
B─血漿分画製剤の製造(田中朝志)
1 血漿分画製剤とは
2 血漿分画製剤の利点と欠点
3 血漿分画製剤の製造方法
4 血漿分画製剤の国内自給率
X章 倫理的問題
(末岡榮三朗)
A─輸血とインフォームドコンセント
1 法的な問題
2 同種輸血用血液と血漿分画製剤の同意書に求められる事項
B─宗教上の理由で輸血が拒否される
1 宗教的輸血拒否に対する対応
2 患者の自己決定権と失血死
3 緊急輸血が必要とされる救急や術前インフォームドコンセント
4 自己決定能力と未成年者への輸血
XI章 輸血に関する法制度と指針
A─法律(清水 勝・大谷慎一)
1 安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(血液法)
a 成立の経緯
b 血液法の概要
2 再生医療法,薬機法の要点
a 生物由来製品と特定生物由来製品
b 関連分野の責務
B─患者と献血者の被害救済制度(清水 勝・大谷慎一)
1 患者の生物由来製品による感染等の被害救済制度
a 成立の経緯
b 目的と対象者
c 救済方法と障害の程度
2 献血者の健康被害救済制度
a 成立の経緯
b 目的と対象者
c 救済方法と障害の程度
C─指針(酒井和哉・松本雅則)
1 輸血療法に関する指針
2 輸血療法の在り方,管理に関する指針
a 輸血療法の実施に関する指針
b 血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン
c 危機的出血への対応ガイドライン
d 産科危機的出血への対応指針
e 宗教的輸血拒否に関するガイドライン
3 輸血検査に関する指針
4 血液製剤の適応に関する指針
a 血液製剤の使用指針
b 科学的根拠に基づいた赤血球製剤の使用ガイドライン
c 科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドライン
5 血液製剤,治療用細胞等の製造,調整に関する指針
a 自己血輸血:採血及び保管管理マニュアル
b 血液製剤の院内分割マニュアル
c クリオプレシピテート作成プロトコール
d 輸血によるGVHD予防のための血液に対する放射線照射ガイドライン
e 院内における血液細胞処理のための指針
f 同種末梢血幹細胞移植のための健常人ドナーから末梢血幹細胞動員・採取に関するガイドライン
XII章 輸血機能評価認定制度(I&A)
(河野武弘)
1 I&Aの背景とこれまでの経緯
2 認定・認定更新までの流れ
3 I&A制度の組織構成と質の担保
4 I&A制度の現状と今後の展望
索引















