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INTRODUCTION 臨床栄養に関する知識を増やしてください
 「栄養」というと「食」を考える人が大部分です.でも,「栄養」は「食だけではない」,これが「臨床栄養学」です.ここを強調しながらこの連載を続けたつもりです.
 医療のなかで,臨床栄養学について,十分な教育が行われているのでしょうか.必要十分な教育は行われていない,これが現状です.管理栄養士の教育において,もです.私はそう思っています.
 臨床栄養に関する知識レベルは非常に低いのではないだろうか,そう思っていました.しかし,実態調査はまったく行われていませんでした.2004 年11 月から,TNTTMセミナー,私が関係している講演会,セミナーなどで臨床栄養に関する試験を,抜き打ちの形で実施しました.試験をされた方は,不愉快だと思われたでしょう.でも,自信がある方は嬉々として回答していたように思います.しかし,こういう形でないと現状を明らかにすることはできないと思っていました.採点は大変でした.2013 年までの約9 年間に,約8,000 人に対してこの試験を行いました.採点は,すべて自分で行いました.相当な仕事量でした.相当時間もかかりました.もちろん,他の人に採点してもらうほうが楽ですが,それは,試験を受けてくれた方に申し訳ないと思ったからです.当然ですね.そうして,その1 問1 問について,一人ひとりの成績をエクセルに入力して集計しています.これはきわめて貴重なデータです.
 予想どおり,試験の成績としては惨憺たるものだった,といっていいと思います.こんな試験の成績が悪くても現場では何の問題もない,と思われる方も多いでしょう.しかし,きちんとした臨床栄養学に関する知識があれば,もっとレベルの高い栄養管理ができることは間違いありません.多分,きちんとした臨床栄養学に関する知識があれば非常に有効な栄養管理ができるのだ,ということ自体にも気づいていない方が多いのではないでしょうか.
 試験の成績だけをお示しして,どうですか,駄目でしょう,なんていう内容では読んでいただけないはずです.だから,その試験問題に関する解答を,学術的に示させていただこうと思って連載させていただきました.4 年間の連載期間中,私自身,非常によく勉強しました.新しい知識も増えました.これまでの知識が間違っている,そう気づいた部分もかなりありました.普段,当然だと思っていたことも,見方を変えると新しい考え方があることにも気づきました.やはり,きちんと勉強してみるものだ,つきつめてみるものだ,そう思いながら連載を続けました.48 回にわたる内容は,非常に膨大なものです.でも,できるだけわかりやすくという思いで解説しました.自分で理解できていないことは書けないので,自分が理解できるような内容にしているつもりです.私の頭の構造は非常にシンプルなので,読んでいただけばスーッと頭の中に入ってくると思います.
 本書から,本物の臨床栄養学とは何か,を理解していただき,患者さんのために有効な栄養管理を実施していただきたいと願っております.
 INTRODUCTION臨床栄養に関する知識を増やしてください
 臨床栄養に関連した用語の見直しと新しい用語の提言
第1回 臨床栄養の常識がない方が非常に多い!
第2回 TPNくらい,英語で書けるようになってください
第3回 ENも英語で書けるようになってください
第4回 AMCはむずかしすぎるかもしれませんが
第5回 BMIは当然知っていますよね
第6回 PEMを英語できちんと書くのはむずかしいかも
第7回 PEGは「胃ろう」という理解で十分でしょうか?
第8回 SGAの方法はわかりやすいけど,英語では覚えにくいし,日本語も長い
第9回 ODAは井上善文が造語した,日本発の栄養評価指標の分類のための用語です
第10回 日本でのNST活動は大阪大学からはじまった
第11回 PICCとCVCは同じ? 違う?
第12回 PPNは直訳して「末梢静脈栄養法」と呼べばいいのです
第13回 RTPという用語はちょっとむずかしいかも
第14回 HPN-在宅IVHという用語を使っているのでは,本当の在宅静脈栄養を理解しているとはいえない!
第15回 RTH製剤はよく使われているが,RTHという用語を知っている人はきわめて少ない!
第16回 カロリー計算はできるけどNPC/N比の計算はできない日本の医療従事者
第17回 1 種類しかない,日本の微量元素製剤の組成を知らないのですか?
第18回 水溶性ビタミン9 種類よりは,脂溶性ビタミン4 種類のほうが覚えやすいはずです
第19回 BCAAはバリン,ロイシンとなに? 簡単です,イソロイシンです
第20回 ほとんどのカテーテルの材質はシリコーンとポリウレタンです
第21回 半消化態,消化態,成分栄養剤の基本的特徴は当然知っていますよね
第22回 20% 脂肪乳剤はできるだけゆっくりと投与するほうが有利なのです
第23回 TPNを急に中止・中断した場合は低血糖に注意しなければならない,これは常識です
第24回 1 kcal/mL濃度の経腸栄養剤100 mLの水分含有量は100 mLではないのです
第25回 TPN施行時,脂肪乳剤を投与するとNPC/N比が高くなるのです
第26回 PEG:瘻孔周囲炎を予防するコツは胃壁と腹壁の血流を損なわないこと
第27回 CVポートのセプタムを穿刺する針は,ヒューバー針でなければならない
第28回 鎖骨下穿刺よりも内頸静脈穿刺で挿入したほうが,カテーテル敗血症発生頻度が高い
第29回 輸液ラインの接続部の消毒は消毒用エタノールで行ってください
第30回 セレンという微量元素の欠乏症があることも知っておかなくては!
第31回 静脈栄養用輸液バッグがダブルバッグになっているのはメイラード反応予防のため
第32回 TPN用輸液ラインにはインラインフィルターを組み込み,脂肪乳剤はその患者側に接続します
第33回 血清タンパク値は,その値の意味を考えて栄養評価指標として用いるべきです
第34回 経腸栄養バッグに移し替えて投与する方法(TTB:transfer-to-bag)では,8 時間以内に投与を完了するべきです
第35回 TPN施行時には,ビタミンB1 を必ず投与しなければならない……だけでなく,投与量も確認しなければならない
第36回 保存期CKDには,NPC/N比を高くした組成の腎疾患用経腸栄養剤を用いてください
第37回 高カロリー輸液と血液製剤の同時投与はダメだし,種々の薬剤投与も注意して行わなくてはならない
第38回 経腸栄養でちょっと下痢したら,経腸栄養を中止する? 薄める? 古い考え方といってもいいでしょう
第39回 ダドリック先生の名前を知らずに静脈栄養を理解しているとは言えない
第40回 エンシュア・リキッド(R)が医薬品だということは,常識です
第41回 ツインライン(R)NFは,唯一の医薬品の消化態栄養剤ですが
第42回 Fischer比って,知らなくてもいいのでしょうか? BCAAをPheとTyrで割って求めるのですが
第43回 〔身長×身長×22〕で計算される体重は理想体重です
第44回 「カロリー」は単位だから,カロリーの代わりに「エネルギー」という用語を使わなくては
第45回 高カロリー輸液のキット製品は組成を理解して使わなくてはならない
第46回 脂肪乳剤は有効な熱源,NPE/N比の調整,脂肪肝予防なども目的としてもっと積極的に使うべきである
第47回 脂肪乳剤は必須脂肪酸の補給だけでなく,脂肪肝予防にも有効です
第48回 呼吸不全用経腸栄養剤は,エネルギー源として脂肪の含有率が高くなっていますが

 POSTSCRIPT連載を終えて
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