やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

改訂の序
 嚥下調整食を物性による客観的な評価で判定する嚥下食ピラミッドのレシピに関する書籍を,これまでに4冊出版した.最初に出版した聖隷三方原病院の嚥下食レシピおよび物性値を掲載した『嚥下食ピラミッドによる嚥下食レシピ125』(2007年)では,多くの人に嚥下障害食の客観的な評価による分類を知っていただいた.次に本書『嚥下食ピラミッドによるレベル別市販食品250』(2008年)を出版し,翌年には外観に着目したレシピ集『病院・施設のための嚥下食ピラミッドによる咀嚼・嚥下困難者レシピ100』(2009年)をエームサービス株式会社の協力のもとに出版した.その後,徳島赤十字病院で提供しているペースト・ムース食を物性測定し,できるだけ栄養価を下げずに嚥下食ピラミッドの判定基準に入るように工夫したレシピ集,『嚥下食ピラミッドによるペースト・ムース食レシピ230』(2013年)を出版した.多くの方に嚥下食ピラミッドのレシピ集をご愛読いただいていると思われる.
 本書は,多くの企業から摂食・嚥下障害者を対象とした商品が販売されているなか,利用者の「どのような患者に何を提供すればよいのか,よくわからない」といった声に応える目的で,市販されている食品を分析し,レベル分けを行ったものである.
 第2版改訂では,市販食品を大幅に入れ替え,初版に掲載していた市販食品もすべて物性測定を行った.また,ゼリー状食品については離水の測定も併せて行い,大幅なリニューアルを図った.
 本書に掲載している市販食品を,物性値を参考に試食していただければ,「かたさ」,「付着性」,「凝集性」の理解も進むものと考えられる.
 初版に引き続き,病院・施設における市販食品の選択や,VE検査を行う場合の食品の選択,嚥下機能の低下した人の退院時指導の際などに活用していただければ幸いである.
 2013年8月
 編著者


 筆者らは,聖隷三方原病院の嚥下食のレシピおよび物性値を掲載した書籍,『嚥下食ピラミッドによる嚥下食レシピ125』を2007年9月に出版した.このレシピ集は,臨床に携わる多くの先生方から,物性値という客観的な数値に裏付けされているため,利用しやすいとのご意見が多く寄せられた.そしてさらに,さまざまな市販食品は,嚥下食ピラミッドのどのレベルに相当するのか,との問い合わせを多数いただいた.それらの声に応えるために,250種類の市販食品(2008年4月末現在)の物性を測定し,取りまとめたのが本書である.
 摂食・嚥下機能の低下した人に適する食事を提供するには,かたさ,付着性,凝集性といった物性の知識が必要となる.おのおのの因子については多くの書籍で解説されているので,そちらに譲るが,本書に掲載している各レベルの市販食品を実際に口にし,その感覚を覚えていただければ,本書に掲載のない市販食品や調理されたものが,どのレベルに相当するのかがわかってくるであろう.
 物性値は温度に大きく影響されるので,本書では,実際の嚥下障害者が喫食する温度帯での物性値となるように配慮した.また,嚥下食には物性以外の因子も存在することから,この因子についても紹介している.
 嚥下障害者に適正な食事を提供するためには,嚥下機能の評価,すなわち検査を行うことも大事なことである.しかしながら,検査食と実際の食事の物性を合わせることは難しい作業である.そこで本書では,嚥下食ピラミッドの各レベルにおける物性値に適合した,嚥下造影検査(VF)のための検査食の作り方についても紹介した.
 嚥下食ピラミッドを用いることで,検査により適するレベルを決定し,病院,施設,在宅のどこにいても,同じ物性レベルの食事を提供することが可能となるのである.
 本書が,摂食・嚥下障害者の栄養管理にお役立ていただければ幸いである.
 2008年8月
 編著者
1 嚥下食ピラミッドとは(金谷節子)
 嚥下食ピラミッドへの道のり
 嚥下食ピラミッドの概念
 食事レベル決定のための評価
 食事レベルのステップアップ
2 嚥下調整食の標準化に向けて(栢下 淳)
 適切な嚥下調整食を提供するために
 嚥下調整食の標準化
 嚥下食ピラミッド以外の基準
 嚥下食ピラミッドを用いた病院間連携
 嚥下調整食を用いた栄養管理
3 病院における嚥下食の選択(山縣誉志江)
 摂食・嚥下機能の評価方法
 嚥下造影検査(VF)のための検査食
 嚥下内視鏡検査(VE)のための検査食
4 在宅,高齢者福祉施設における嚥下食の選択−判断する際に考えること(江頭文江)
 嚥下食の形態を適切に判断していくために
 食形態判断のための考え方
5 市販食品の物性(木聡美・渡辺多栄)
 市販食品の物性情報の必要性
 市販食品の分類
 市販カップ製品の離水
市販食品集
 市販食品の測定条件
 食品物性レーダーチャートの見方・考え方
 L0 Level 0 開始食
 L1 Level 1 嚥下食I
 L2 Level 2 嚥下食II
 L3 Level 3 嚥下食III

 販売会社別製品名さくいん

 Column
  舌圧測定で適切な機能評価を
  おいしい嚥下造影検査食を簡単に
  見た目においしい嚥下食を
  病院や施設でも見た目においしい食事を
  いつまでもパンが食べたい
  余すところなく丸ごとおいしく