やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第4版改訂にあたって
 本書の上梓から11年が経過し,この間二度の改訂を行いました.第2版改訂では「第六次改定日本人の栄養所要量-食事摂取基準」(1999),栄養士法の改正(2000),「五訂日本食品標準成分表」(2000)に,そして第3版改訂では「日本人の食事摂取基準(2005年版)」,栄養教諭制度の創設(2005),食育基本法の施行(2005)など,管理栄養士・栄養士を取り巻く状況の目まぐるしい変化にその都度対応してまいりました.
 2006年に本書第3版を発行してから早いもので4年を迎えようとしております.この間,「授乳・離乳の支援ガイド」(2007)をはじめとする最新の情報・資料に基づく加筆・修正など,より一層の充実を図るべく見直しを行ってまいりましたが,このたび,2010年4月より5年間使用される「日本人の食事摂取基準(2010年版)」が策定されたことに伴い,また,遡って学校給食実施基準の改正(2009年)や,国民健康・栄養調査などの資料の刷新により,再び内容の見直しを行うことといたしました.
 国民の健康の維持・増進や生活習慣病予防のためには,毎日の食生活が基本となることはいうまでもありません.本教科においては,それらの背景を踏まえ,あらゆるライフステージ,国民一人ひとりにふさわしい食事・栄養のあり方の基本を学んでいくこととなります.
 それぞれの関連教科で学んだ知識を生かしつつ,“おいしい食事”が提供できる管理栄養士・栄養士を目指していただくよう,引き続き本書の活用を願ってやみません.
 2010年1月
 著者一同

発刊にあたって
 日本人の平均寿命は世界一になっていますが,果たして健康な生活を送っている人が増加しているのでしょうか.いまや生活習慣病の時代を迎え,さらに高齢化に伴う心身機能の低下への対応や,小児の食環境の整備,充実などへの対応をめぐって,私たちは健康の尊さについて今一度真剣に見直していかなければなりません.生活習慣病は,加齢によって起こるいろいろな病気や前病状態のこと,すなわち高血圧,高脂血症,糖尿病,痛風,骨粗鬆症,更年期障害をはじめ心臓病,脳血管疾患,さらに癌や老人性認知症にいたるまで多くのものを含んでいます.その原因は特定できないものが多いのですが,若いころからの生活習慣(ライフスタイル)の歪みが問題となっています.日常生活における代表的な七つの健康習慣(Breslowら)は,標準体重の維持,適度な運動,非喫煙,適量の飲酒,朝食の習慣,間食の制限,十分な睡眠です.こうしてみても,健康づくりの主軸は,栄養と運動,休養であることがわかります.ここでは,特に栄養(食生活)について,最近の知見によりながら生活習慣病予防ひいては,健康づくりの立場から考えていきます.
 私たちの食生活は,長い歴史をもつ“米“を主食として,魚,大豆,野菜などを組み合わせた伝統的な食パターンに,肉,牛乳・乳製品,油脂,果実など多様な食材が豊富に加わって栄養摂取の面からも大きく変化してきました.この変化が生活習慣病の増加と無関係であるとはいえません.栄養学実習においては,このような歴史的な推移を踏まえて,栄養学総論・各論との連携のなかで,“健康づくり”に視点をおいて,それぞれのライフサイクルごとに,献立作成の実習・演習を展開していきます.人間の栄養状態を評価,判定することをnutritional assessmentとよんでいますが,あくまでも,個人の栄養状態に応じた個人対応が基本になります.栄養素等摂取量は,多すぎても少なくてもよくありません.質においても極端な片寄りは修正が必要です.さらに,一日のなかの食事量の配分も大切です.成人における好ましい食事の比率は,朝食30%,昼食30%,夕食40%などが示されていますが,子どもにおいてはさらに間食も栄養学的に重要な意義があります.高齢者においても,十分な配慮が求められます.しかも,季節感を取り入れた心やさしいおいしい料理が提供されなければ,どんなに高邁な理論構築があっても何の役にも立ちません.関連教科である“食品学“や“調理学”さらに“調理学実習”などとの連携学習が重要になってきます.
 栄養学実習では,栄養所要量の正しい理解と運用,食品構成の作り方や使い方などはもとより,食膳の構成を基本として献立作成理論からの展開をしていきます.栄養士を目指す学生のほかに,すでに現場で働いている多くの栄養士,管理栄養士の方々に使っていただき,ご意見をいただければ幸甚に存じます.
 本書を作成するにあたりご支援いただきました医歯薬出版編集部に心より御礼申しあげます.
 1998年9月
 著者一同
 第4版改訂にあたって
 発刊にあたって
第1章 栄養学実習の基本理念(安武 律)
 1.食事と健康のかかわり
 2.食事の食文化的かかわり
 3.食事の基本パターン
第2章 献立作成の基礎知識(安武 律)
 1.健康な人の食品構成
 2.肥満,その他の生活習慣病予防のための食品構成
 3.献立作成の手順
第3章 成長期の栄養(城田知子,林 辰美)
 1.乳児期の栄養
  乳児期栄養の特性
  乳児期の区分
  乳児期の食事摂取基準
  乳児期栄養の実際
 2.離乳期の栄養
  離乳の定義
  離乳の必要性
  離乳食の進め方の目安
  離乳食の進め方の実際
  フォローアップミルク,ベビーフード
 3.幼児期の栄養
  幼児期栄養の特性
  幼児期の食事摂取基準
  食生活上の留意点
  保育所給食
 4.学齢期の栄養
  学齢期栄養の特性
  学齢期の食事摂取基準
  食生活上の留意点
  献立作成上の留意点
  小児生活習慣病の予防と食事
  学校給食
  献立例
   幼児期の食事:3〜5歳児
   幼児期の食事:間食
   保育所給食:1〜2歳児
   保育所給食:3〜5歳児
   小児期の生活習慣病予防の食事
   学校給食:高学年10,11歳
   中学・高校生の食事:肥満予防
   中学・高校生の食事:貧血予防
第4章 青年期の栄養(安武 律)
  青年期栄養の特性
  貧血予防の食事
  肥満予防の食事
  献立例
   青年期の食事:生活習慣病予防
   青年期の食事:貧血予防
   青年期の食事:肥満予防
第5章 壮年期の栄養(大里進子,矢野治江,城田知子)
  壮年期栄養の特性
  脂質異常症予防の食事
  貧血(鉄欠乏性貧血)予防の食事
  メタボリックシンドローム
  肥満予防の食事
  高血圧予防の食事
  骨粗鬆症予防の食事
  献立例
   壮年期の食事:脂質異常症予防(身体活動レベルI;50〜69歳,女性,1,650kcal)
   壮年期の食事:脂質異常症予防(身体活動レベルI;30〜49歳,男性,2,250kcal)
   壮年期の食事:鉄欠乏性貧血予防(身体活動レベルII;50〜69歳,男性,2,400kcal)
   壮年期の食事:肥満予防(身体活動レベルII;50〜69歳,女性,1,950kcal)
   壮年期の食事:肥満予防(身体活動レベルI;30〜49歳;男性,2,250kcal)
   壮年期の食事:高血圧予防(身体活動レベルII;30〜49歳,女性,2,000kcal)
   壮年期の食事:高血圧予防(身体活動レベルII;50〜69歳,女性,1,950kcal)
   壮年期の食事:骨粗鬆症予防(身体活動レベルI;50〜69歳,女性,1,600〜1,700kcal)
第6章 老年期の栄養(矢野治江)
 1.健康な老人食
  老年期栄養の特性
  老年期の食事摂取基準と食品構成
  献立作成上の留意点
 2.咀しゃく困難,嚥下困難のある人の食事
  嚥下困難のある場合
 3.訪問栄養指導
  調理のポイント
  ヘルパーによる好評なアイデア料理
 4.公的食事サービス
  献立例
  老年期の食事:デイ・サービス(軟食と嚥下食)
  老年期の食事:保健食と嚥下食
第7章 妊産婦の食事(母性栄養)(城田知子)
 妊娠期栄養の特性
 妊婦の食事摂取基準と食品構成
 妊娠前半期の食事
 妊娠後半期の食事
 授乳期の食事
 献立例
  妊娠前半期の食事:つわり予防(目標エネルギー2,000kcal;25単位)
  妊娠後半期の食事:妊娠高血圧症候群予防(目標エネルギー2,150kcal;約27単位)
  授乳婦の食事
第8章 スポーツ栄養(安武 律)
 スポーツ栄養の特性
 スポーツ栄養の基本的考え方
 給与栄養目標量
 食事計画
 献立例
  スポーツ選手の食事

 参考資料1─日本人の食事摂取基準(2010年版)
 参考資料2─食生活・休養・睡眠・運動指針(厚生労働省)