やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 筆者らは,聖隷三方原病院の嚥下食のレシピおよび物性値を掲載した書籍,『嚥下食ピラミッドによる嚥下食レシピ125』を2007年9月に出版した.このレシピ集は,臨床に携わる多くの先生方から,物性値という客観的な数値に裏付けされているため,利用しやすいとのご意見が多く寄せられた.そしてさらに,さまざまな市販食品は,嚥下食ピラミッドのどのレベルに相当するのか,との問い合わせを多数いただいた.それらの声に応えるために,250種類の市販食品(2008年4月末現在)の物性を測定し,取りまとめたのが本書である.
 摂食・嚥下機能の低下した人に適する食事を提供するには,かたさ,付着性,凝集性といった物性の知識が必要となる.おのおのの因子については多くの書籍で解説されているので,そちらに譲るが,本書に掲載している各レベルの市販食品を実際に口にし,その感覚を覚えていただければ,本書に掲載のない市販食品や調理されたものが,どのレベルに相当するのかがわかってくるであろう.
 物性値は温度に大きく影響されるので,本書では,実際の嚥下障害者が喫食する温度帯での物性値となるように配慮した.また,嚥下食には物性以外の因子も存在することから,この因子についても紹介している.
 嚥下障害者に適正な食事を提供するためには,嚥下機能の評価,すなわち検査を行うことも大事なことである.しかしながら,検査食と実際の食事の物性を合わせることは難しい作業である.そこで本書では,嚥下食ピラミッドの各レベルにおける物性値に適合した,嚥下造影検査(VF)のための検査食の作り方についても紹介した.
 嚥下食ピラミッドを用いることで,検査により適するレベルを決定し,病院,施設,在宅のどこにいても,同じ物性レベルの食事を提供することが可能となるのである.
 本書が,摂食・嚥下障害者の栄養管理にお役立ていただければ幸いである.
 2008年8月
 編著者
1 嚥下食ピラミッドとは(金谷節子)
 嚥下食ピラミッドへの道のり
 嚥下食ピラミッドの概念
 食事レベル決定のための評価
 食事レベルのステップアップ
2 聖隷三方原病院の5段階嚥下食における物性評価の意義(栢下 淳)
 なぜ,適切な嚥下食を提供することが難しいか?
 嚥下食の物性解析
 物性以外に重要な因子
 摂食・嚥下障害者への適切な栄養管理のために
3 嚥下食ピラミッドに対応した検査食(山縣誉志江)
 摂食・嚥下機能の評価方法
 なぜ,検査食の基準化が必要か?
 検査食の物性の特徴
 検査食の作り方
 検査の進め方
 安全な食事のために
4 市販食品の物性(神野典子)
 市販食品の物性情報の必要性
 市販食品の分類
 市販カップ製品の離水について
市販食品集
 市販食品の保管温度・測定条件
 食品物性レーダーチャートの見方・考え方
  L0 Level0 開始食
  L1 Level1 嚥下食I
  L2 Level2 嚥下食II
  L3 Level3 嚥下食III
  L4 Level4 移行食

 販売会社別製品名さくいん