やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

まえがき
 日本の医療機関における栄養管理体制も,だんだんとシステム化され,医療の質と経済効果に直接貢献する栄養管理の重要性が一般的に認められてきて,病院経営マネジメントのなかの大切な一分野となりつつある.このような背景のもと,ベッドサイドにおける臨床栄養管理は,できるだけEBMに基づき,プロとしてチャレンジしていく情熱と努力が臨床(管理)栄養士諸君に常に求められている.
 本書は,聖隷三方原病院にて2002年4月から2年間,われわれがベッドサイド栄養管理で経験した多くの臨床症例のなかから管理栄養士の臨床教育に役立つ代表的な21症例を抽出して,既刊の「SEIREI栄養ケア・マネジメントマニュアル」をどのように利用して,各症例にかかわっていったかを,実践的に記載したものである.病棟で臨床栄養士が,一人ひとりの症例について慎重に,正確に,より徹底的に栄養評価を行い,それに基づく栄養計画を立て実践し,さらにフォローアップをして成果を上げていった,壮烈な闘いの足跡を克明に読み取ることであろう.
 臨床栄養士が,その患者さんの栄養ケアにおけるチーム(NST)のリーダーとして具体的に症例を分析し,よりエビデンスに基づき,個々の患者さんにもっとも適した栄養療法の実践を試みた記録でもある.この症例集を読まれる臨床栄養士はもちろん,管理栄養士の皆様にも共有していただければ幸いに思う.
 各症例は,(1)主訴,(2)既往歴,(3)家族歴(必要であれば),(4)現病歴,(5)プロブレムリスト,(6)栄養評価と計画,(7)入院時総合栄養評価の要約,(8)栄養モニタリング,(9)考察,最後に,(10)文献の順序で記載されている.教育的見地から選択した症例ではあるが,臨床経過に基づいて栄養評価,計画,実践を繰り返しつつ懸命に毎日刻々と変わる一人ひとりの患者さんのために全力を尽くし,栄養療法の成果を上げていくという姿勢が貫けていると信じる.
 私自身,わが臨床栄養士とともに,毎日入院患者を通してベッドサイドの栄養管理のプロセスにかかわっていく間に,臨床栄養士の情熱,また真摯な栄養ケアに対する姿勢,惜しみない努力と献身に,敬意と誇りを感じた.これらの臨床栄養士たちは,外国,とくに米国における大学付属病院の臨床栄養士と比較しても,絶対にひけをとらない.驚くべき才能がこの一例一例の症例のなかにみられることは“素晴らしい”という以外になにがいえよう.
 このような臨床栄養士の病棟での活躍は,当時の聖隷三方原病院栄養科長・金谷節子先生の絶大なるサポートと理解なくしては決してありえなかったし,またこのケーススタディ集もできなかったと思う.ケーススタディの症例一例一例を丹念に読むことによって,各症例の栄養管理がなされていくプロセスを理解・学習して,病院などの医療機関におけるチーム医療の一員として,またNSTのリーダーとして活躍していただくことを切に希望する.
 2006年8月
 川西秀徳
 臨床栄養管理専門医
 前聖隷三方原病院副院長
 元米国ニュージャージー州立大学
 ロバート・ウッド・ジョンソン大学医学部 内科教授
 総合内科・消化器・老年・抗加齢・総合内科医療スペシャリスト

出版によせて
 本書は臨床現場で栄養管理に携さわる栄養士・医師の実践の書として,またこれから臨床に携わろうとする栄養士の栄養教育の教材として書かれたものであり,「SEIREI栄養ケア・マネジメントマニュアル」(2003)と本書の2冊をもって栄養ケア・マネジメントの入門書となります.
 本書はまた,2002年から2004年の2年間,短くも濃縮された時空のなかで,川西秀徳栄養担当医の指導の下,池谷昌枝を中心とした若き栄養士たちが患者とともに生き,栄養ケア・マネジメントを実践した記録でもあります.
 対象となった多くの患者は天に召されました.なぜなら川西先生は重症でより困難な患者を選び,栄養士たちに担当させたからです.栄養士たちは「不可能への挑戦」を学び,訓練され,成長しました.あるときはその厳しさに涙し,自らの力不足に逃げ出したくなる思いにかられ必死に勉強しました.へこたれてしまいそうになったとき,一つひとつの症例をとおして出会った多くの患者様や家族の皆様からどれだけ勇気と励ましをいただき,助けられたことでしょう.喜びや哀しみ,不正義や不条理に対する怒り,栄養の素晴らしさ,凄さ,人間の尊厳などです.もちろん不可能が可能となり,再び生を受け,生き生きと生き続けている方もおられます.
 この間もっとも嬉しかったことは,臨床病理検討会(CPC:clinico-pathological conference)に参加したことです.CPCが行われた翌朝,ある部長が栄養科を訪ねてくださいました.「昨夜のケースは直接死因をどのように考えられましたか」とたずねると,「池谷栄養士の説明でよくわかりました」と話されました.川西先生がCPC責任者であったればこそ実現した,CPCへの責任ある参加でした.
 聖隷三方原病院玄関はいつも見事な花々で飾られています.亡くなられた患者家族から栄養チームへの感謝の気持として贈られた,16本立ちの胡蝶欄がそのルーツです.
 良き栄養士になるためには,(1)正しい知識,(2)決断力,(3)効率的な時間の使い方,が必要です.本書を通読して実力をつけ,多くの患者さんを助けてください.
 栄養への挑戦はいま始まったばかりです.
 2006年8月
 金谷節子
 浜松大学助教授・元聖隷三方原病院栄養科長
症例1:経口栄養療法
 胸水,高度全身性浮腫を伴った栄養失調(71歳,男性)〈山本加菜子〉
  ・原因不明の中等度以上の胸水,高度全身性浮腫を伴った高度マラスムス・クワシオコール混合型栄養不良の症例.
  ・高度の浮腫をもつ場合,水分バランス(IN-OUT)をマイナスに維持していくことが治療上のポイントとなる.
症例2:経腸栄養療法
 誤嚥性肺炎に伴った栄養失調(90歳,男性)〈守屋貴代〉
  ・高齢者は脱水,浮腫,電解質異常を起こしやすいので,IN-OUTバランス,体重の変化,電解質のデータ,身体所見の観察も加えたモニタリングをする.
  ・胃瘻造設後の投与に際しては,開始の初期栄養水分量と速度設定について注意を要する.少量からステップアップするのがよい.胃瘻造設後一定期間(7〜10日)は胃蠕動に影響があるので,とくに高齢者の場合には考慮する.
症例3:経腸栄養療法
 銅欠乏による貧血,好中球減少を伴った栄養失調(82歳,女性)〈山本加菜子〉
  ・ADLが全介助のベッド上生活で,少なくとも約2年間は胃瘻により確実に30kcal/kg,1.4g/kgのたんぱく質が投与されていたにもかかわらず,BMI15の中?高度マラスムス型栄養不良を呈していた症例.
  ・入院時,Hb5.0g/dl,好中球優位の白血球減少,2.66g/日のたんぱく尿を呈するとともに極度の銅欠乏状態を示したが,銅補充(血清銅,セルロプラスミンの改善)とともに改善され,銅欠乏症による貧血,白血球減少症と治療的確定診断された.
症例4:経静脈栄養療法
 下血,重症膵炎を呈した栄養失調(86歳,女性)〈山本加菜子〉
  ・入院時からの持続する下血,嘔吐がある重症膵炎患者.TPNによる栄養管理を開始したが,アセスメント開始後わずか5日目で亡くなった症例.
  ・本症例のようにICU,リカバリ対応の場合,看護師により各勤務帯ごとの輸液量,時間尿などの経過記録が詳細に行われる.しかし,看護師の記入にはない実際の投与量に基づく栄養量,電解質投与量,濃厚赤血球,濃厚血小板,新鮮凍結血漿を含めない投与水分量,さらに不感蒸泄,代謝水を含めたIN-OUTバランスなどを記載したモニタリングシートは,栄養管理上非常に有効なデータとなる.
症例5:混合栄養療法
 癒着性イレウスを伴った栄養失調(82歳,男性)〈守屋貴代〉
  ・治療方針に合わせた確実な栄養投与が重要であった症例.栄養投与方法を変更するうえで必要栄養量,必要水分量を過不足なく設定し,電解質の調整を行うことは,栄養状態の改善に大きく関与する.
  ・高齢者で食事だけでは摂取量が少ない場合,栄養量,水分量が不足し,また多くの服薬,多疾患も加わり容易に脱水,浮腫,電解質異常を引き起こす.摂取状況を把握し,不足している場合は他の栄養投与方法を検討し補足することが重要である.
症例6:混合栄養療法
 低Na血症を伴った高度マラスムス型栄養不良(75歳,女性)〈山本加菜子〉
  ・嚥下障害(球麻痺),“うつ”による食思不振を伴った高度マラスムス型栄養不良に,さらに水・電解質の問題が複雑に絡んだ症例.
  ・アセスメント開始後,1日6回食の少量頻回食でプランニングし食思は上昇していたが,2週間後再度“うつ”著明となり,外来フォローの形で一時退院とした.退院後衰弱著明となり,胃瘻造設により体力,栄養状態が改善することでQOLを上昇させることは十分可能と思われ,患者も納得したうえで,PEGを施行した.
症例7:嚥下障害
 多疾患を併せもつ嚥下障害による栄養失調(75歳,男性)〈池谷昌枝〉
  ・高齢者によくみられる多疾患の症例.嚥下障害だけに焦点を絞ることはできなかったが,その優先順位は最上位であると考えられたため,食事状況の観察に最も力を注いだ.
  ・嚥下障害のレベルは比較的軽かったが認知症のレベルは高度で,口頭指示がほとんど受け入れられなかった.これが摂食訓練をむずかしくさせた大きな要因であった.
  ・本人の治癒意欲が高くなれば,患者のもつ能力を何倍にも引き出すことができる.そのためには,栄養士だけでなく多職種が関わり,心理面も含めたアプローチをしなければならない.
症例8:嚥下障害
 嚥下障害による栄養失調:嚥下III食→消化移行食へ(83歳,男性)〈池谷昌枝〉
  ・嚥下機能レベルを把握するために,通常は栄養士が嚥下テストカードを使用してベッドサイドで嚥下機能評価を行っているが,開始時における拒否が強かったため実施しなかった症例.
  ・毎日摂食状況を詳しく観察することにより,日々の変化や異なる食品による摂食状況の違い,患者のもつ癖,性格などを把握することができた.
  ・本症例は栄養士だけでなくリハビリ科医師,STも関わっており,常に情報交換をすることができたためレベルアップが比較的早く進んだと思われる.
症例9:高齢者の栄養
 多疾患を併せもつ高齢者の栄養失調(84歳,女性)〈池谷昌枝〉   ・栄養アセスメント,評価もすべて患者の意欲によって左右され,栄養状態改善へ導くことができるかどうかもこれで決まるといっても過言ではない.その基盤となるのは,定期的な栄養アセスメントと的確な栄養量の補正である.
  ・褥瘡の改善を主目的とした本症例の栄養管理においては,エネルギー,たんぱく質のほかに,亜鉛,銅,鉄の大量投与を実施した.創部からの浸出液が多い場合は,たんぱく質の漏出を考慮した補正が必要である.
症例10:高齢者の栄養
 高齢者の栄養失調:患者の望むものとは(81歳,男性)〈池谷昌枝〉
  ・入院に至るまでの経過はさまざまであり,患者は多様な背景を有している.延命を望み,治療に対して積極的な場合ばかりではない.意識が清明なうちに本人のliving willの確認をする必要があり,それができなければ家族の意向を聞き入れることとなる.
  ・退院後の行き先も家に帰る場合だけでなく,施設,病院などさまざまである.入院中に実施した栄養投与などを退院後も継続できるような環境を整え,送りだすことが大切である.
  ・褥瘡ケア,経管栄養,嚥下食などさまざまな手技が必要となるため,栄養士は少しでもそれに貢献できるようなスキルを身につけておきたい.
症例11:褥瘡
 長期の筋緊張と臥床により巨大褥瘡が発生した栄養失調(60歳,男性)〈守屋貴代〉
  ・統合失調症,緊張病性昏迷により中等度から高度のマラスムス・クワシオコール混合型の低栄養状態に陥った症例.
  ・入院時,巨大褥瘡を有していたが,経管栄養から経口栄養へスムーズに移行することができ,設定した栄養投与量を患者が摂取できることにより順調に褥瘡が治癒した.
  ・栄養評価において身体計測値は,栄養量決定の際の重要な指標となるが,拘縮が強度の場合は筋肉の指標となるAMC,AMAの値は信頼度に欠ける.身体計測値だけでなく血液検査値,CHIと併せ判断する必要がある.
症例12:褥瘡
 両下肢麻痺に伴い褥瘡を発生した栄養失調(54歳,男性)〈守屋貴代〉
  ・身体状況が比較的良好であっても,急性疾患による代謝亢進,食欲低下などの要因により,患者は容易に栄養不良状態に陥る.その状況に応じた必要エネルギー,必要たんぱく質量の設定,モニタリングが重要である.
  ・疾患による代謝亢進および褥瘡状態の悪化によりたんぱく質の必要量が高くなる.創部の滲出液が多ければたんぱく質の漏出を考慮しなければならない.Nバランス,Alb,Tf,PA,TLCの経過を考慮したモニタリングが不可欠である.
  ・褥瘡を有する患者の場合,褥瘡予防や治癒に大きく関与するビタミン・ミネラルの補充が重要である.
症例13:ターミナルケース
 ターミナル期における栄養失調(82歳,女性)〈池谷昌枝〉
  ・高齢者のターミナル期における栄養管理においては,倫理的側面も含めた方針決定が重要である.通常は意識の清明なうちに患者自身のliving willの確認を行う.うつ的または悲観的感情が表出している場合には,的確な判断がつきにくい状況であるため,インフォームドコンセントにもとづいた家族への意向確認が必要となる.
  ・ターミナル期には苦痛を取り除くことが第1優先であり,安らかな状態を提供できるチーム医療が重要である.
症例14:術後
 術後重症肺炎を合併した長期ベンチレータ管理の栄養失調(77歳,男性)〈山本加菜子〉
  ・12年前,胃切除,2年前から肺気腫にて在宅酸素療法導入の既往をもち,入院2週間後ステージIAの右肺癌にて右肺部分切徐術後4日目,肺炎を合併.挿管,気管切開し,ベンチレータ管理となった高度マラスムス・クワシオコール混合型栄養不良の症例.
  ・術後6カ月間,痰,胸水からMRSA,緑膿菌などが繰り返し検出され肺炎を生じ,さまざまな抗生剤によって治療が繰り返された.経過中,計算上の栄養量は十分量と思われたが,Nバランス,Alb,PA,Tfが上昇せず難渋した.
  ・本症例では,感染症再発防止,ベンチレータ施行時間の短縮を期待し,免疫増強栄養剤を選択したが,特殊栄養剤を使用するときには,たんぱく質量にも注意したモニタリングが必要である.
症例15:術後
 高リスクを伴う術後,さまざまな重症合併症を発症した栄養失調(71歳,男性)〈山本加菜子〉
  ・手術適応外の右肺癌(ステージIIIB)ではあったが,約1カ月間の放射線療法後,本人,家族の強い希望により手術が施行された症例.
  ・アセスメント開始(依頼)時,すでに術後2週間が経過しており,肺炎を合併し気切,ベンチレータ管理の状態であった.生体防御能の改善,免疫能強化を期待し,侵襲時でも可能なかぎり経管栄養を行い,腸管の機能を維持することに努めた.栄養剤は免疫能を増強したり修飾する効果が期待される特殊栄養成分を強化・補充した免疫増強栄養剤を選択した.
症例16:重症内科疾患
 重症心不全を伴った重症内科疾患における栄養失調(68歳,男性)〈池谷昌枝〉
  ・重症うっ血性心不全,不整脈,慢性閉塞性肺疾患,二次性肺高血圧症,慢性低酸素症による二次性赤血球増多症,意識障害などを伴った症例.
  ・(1)急性期:急性腎不全,胸水貯留,四肢浮腫,尿量減少などに対する厳密な水分出納管理.電解質補正,低栄養改善のための栄養補給,(2)慢性期:水分出納,電解質の調整.投与栄養に比較して体重増加が遅延していたため,これに対しての栄養評価を実施した.
  ・急性期はさまざまな制約により栄養摂取のばらつきが多く,栄養指標も改善はみられなかった.慢性期になると栄養摂取は安定し,PA,Tfも上昇したが,体重は著明な増加を示さなかった.退院時にはまだ増加の少なかった体重も退院後順調に増加した.
症例17:重症内科疾患
 難治性重症内科疾患を伴った栄養失調(67歳,男性)〈山本加菜子〉
  ・インスリンにてコントロール中の2型糖尿病を既往にもち,1回日ペースで輸血を必要とする骨髄異形性症候群(MDS)の症例.このほかにもアルコール性肝障害,二次性ヘモクロマトーシス,サルモネラ腸炎,骨粗鬆症などを有していた.
  ・アセスメント当初,e抗体(+)の特殊な輸血まちの状態であったが,輸血後全身状態改善するとともに食欲回復し,栄養状態はデータ的にかなり改善傾向にて退院となった.体重もかなり速いスピードでUBWへ着実に近づきつつあったが,AMA,AMC,CHI%の増加はみられず,筋肉量による体重増加とは評価できなかった.
症例18:慢性呼吸不全症
 慢性呼吸不全の栄養失調(80歳,男性)〈池谷昌枝〉
  ・慢性呼吸不全,多発性脳梗塞,仮性球麻痺などを有する高齢者の症例.
  ・SGA判定では高度栄養不良で筋肉,脂肪ともに喪失著しく,嚥下障害による長期にわたる低栄養状態と推測された.
  ・低栄養改善を第一とし,水分出納のバランスを取りながら栄養補給をした.
  ・慢性呼吸不全のため呼吸代謝と栄養剤との関係を探り,それに適した栄養剤の選択を図った.
  ・Living willの確認ができなかったため,家族の意向で最期まで完全な栄養補給を行った.
症例19:高度認知症
 進行性高度認知症を伴った栄養失調(52歳,女性)〈山本加菜子〉
  ・52歳の年齢にして進行性の高次機能障害(認知症)を発症した,中等度マラスムス・軽度クワシオコール混合型栄養不良例.
  ・アセスメント開始時,ほとんど喫食ゼロの状態であった.混合型栄養不良の場合,とくに腸管利用を第1選択とした早急な栄養管理が必要である.
  ・退院後には家族の負担をできるだけ減らすことを優先すべきであり,常食に近い食形態で退院させることが重要になる.
症例20:神経性食思不振症
 神経性食思不振を伴った高度栄養失調(20歳,女性)〈守屋貴代〉
  ・基礎疾患としてレックリングハウゼン病を有し,高度栄養失調となった神経性食思不振症の症例.
  ・神経性食思不振症で経口摂取のみで必要栄養量に満たない場合は経管栄養法の選択もある.本症例では経管栄養を強固拒否していたため,まず患者との信頼関係を保つことを優先した.
  ・本疾患の治療において重要なことは,患者が積極的に治療に参加し,自己ケアを確立させていくことである.
症例21:肥満症
 高度肥満症の栄養管理(63歳,男性)〈池谷昌枝〉
  ・高脂血症・高血圧症を伴った高度肥満症例.
  ・肥満症の治療は食事の制約だけでなく,運動,生活パターン全体の改善を伴うため,精神的ストレスも大きく関わってくる.コミュニケーションを頻回にとり,ストレス要因を排除していくのがベストである.
  ・肥満症がれっきとした病気であること,その他の病気(高血圧,糖尿病,心筋梗塞,脳梗塞など)との関連についても十分に認識してもらい,モチベーションを高めることが必要である.
  ・身体計測については,体重計測はもちろんのこと,ウエスト計測も重要である.