やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第5版改訂の序

 1999(平成11)年に「第六次改定日本人の栄養所要量―食事摂取基準」が策定され,続いて2000(平成12)年に「第六次改定日本人の栄養所要量―食事摂取基準―の活用」が発表された.さらに同年11月「五訂日本食品標準成分表」も報告されるなど,栄養学に関する基本的な資料が相次いで公表された.一方,2001(平成13)年には栄養士法改正に伴うカリキュラム改正が行われ,今後の管理栄養士・栄養士教育の方向性が示された.このような状況の変化に対応して,本書も見直しと検討を行った次第である.
 本書は,栄養に関する情報が公開される都度,内容の補充・修正に努めてきたが,今回は,従来の修正に加え,公表された資料および活用の仕方の追加,新カリキュラムの趣旨および教育目標等を踏まえて,書名も『演習栄養教育・栄養指導』と改めた.
 内容について再度検討したなかで,とくにこれからの管理栄養士および栄養士の教育上,重要と考えられる分野には力点をおいたが,詳細は次のとおりである.
 1.臨床栄養学の項の充実
 2.栄養所要量を具体的に活用する場合に必要となる食品構成,献立作成部分の訂正と追加
 3.生活習慣や環境の変化に関して,生活時間,生活経済などの資料の紹介
 4.栄養アセスメントの項の見直し
 5.栄養教育における授業計画の紹介
 6.ITの普及に伴う情報収集分野の大幅な見直しと修正
 7.新しい体力テストへの変更
 また,新しい「食生活指針」「健康日本21」についても関係箇所に随時組み込んだ.
 栄養の重要性が認識される今日,本書が,高度化した栄養学の専門家として社会の要請に応えうる,真に実力を身につけた管理栄養士および栄養士の教育養成にお役に立てれば幸いである.
 2002年1月 著者一同



 このたび,演習・栄養指導書を刊行するはこびとなった.
 本教科栄養指導は厚生省(現 厚生労働省)規定を基本とし,講義,演習,学内・学外実習など,各栄養士養成施設裁量による開講と教育がなされているが,概念的に共通している点は栄養士教育の要であり,総括(集大成)ともいえることであろう.
 一方,栄養士業務における栄養指導は,指導現場における煩雑な職務のうちでも中枢的位置を占めている.すなわち,栄養士本来の業務が人々の健康を守り,はぐくむための適切な食生活のあり方を指導することから推察して必然の結果であり,相応に位置づけられるべき教科と考える.
 現代の食生活は,社会構造の変化,科学技術の進歩と発展,生活の多様化に加え,氾濫する情報に伴ってますます複雑多岐となり,人々の健康を指標とした食のあり方はまさに重要な今日的課題となっている.その広範囲な食生活分野の指導者を養成するにあたっては,栄養学の理論を基盤とした実践化の手法を的確に,かつ系統的に教育する指導方法が重要となってくる.
 本書は限られた時間内で,栄養士に必要な学理と技術を演習教科の範疇で最大限に消化するべく,効果的教育に重点をおいた.また,内容は可能な限り整理を行い,具体的には以下の点に留意した.
 (1)各章中,必要な領域に演習を設けて問題を提起し,自主演習の型で展開ができるようにした.
 (2)調査用紙は頁数の関係もあったのでモデルを示した.必要に応じ準備いただきたい.
 (3)統計の章では昨今のコンピュータ普及に伴い,数値に関する問題は機械に依存しやすいという危険性を防ぐため,数値の意味,扱いなど,栄養指導に関する統計処理の基礎を確実に理解させることを意図した.
 (4)総括の章では,ライフサイクル別に食生活上の問題点をあげ,指導教育や改善対策,研究課題などの資料提供とした.
 本書が教育施設のみならず,指導現場においても広く御利用いただければ幸いである.なお,不備な点も多いことと思うので,諸先生方の御意見を賜りたいと存ずる次第である.
 終わりに,刊行にあたり御尽力下さった医歯薬出版株式会社に謝意を表したい.
 1983年12月 著者一同
Chapter 1 演習栄養教育・栄養指導の基本概念
 1.演習栄養指導とは
 2.栄養教育とは
Chapter 2 栄養教育・栄養指導の基礎知識
 1.栄養所要量の算定
   1 エネルギー所要量
   2 集団レベルにおける栄養状態の評価への活用
   3 その他の栄養所要量の求め方
 2.食品成分表の使い方
   1 取り扱い上の留意点
   2 成分表使用上の留意点
 3.食品群別荷重平均成分値の求め方
 4.食品構成の作成
   1 つくり方の手順
   2 既成の食品構成表
 5.献立作成
   1 記載の仕方
   2 栄養量の計算方法
   3 栄養所要量の日内配分
 6.健康づくりのための指針
   1 食生活指針
   2 フード・ガイド
   3 健康日本21
   4 健康づくりのための運動指針
   5 健康づくりのための休養指針
   6 世界各国の食事指針
Chapter 3 実態把握の方法
 1.栄養・食事調査
   1 国民栄養調査
   2 食物摂取状況調査
   3 嗜好調査・残食調査
 2.生活調査
   1 生活時間調査
   2 生活環境調査
   3 生活経済調査
   4 わが国における人口構成
   5 食料の需給
 3.身体状況調査
   1 健康調査
   2 身体計測
   3 身体計測に基づく判定
   4 自覚症状による判定
 4.体力測定
   1 最大酸素摂取量の間接測定
   2 新体力テスト
   3 万歩計による方法
 5.心理テスト
Chapter 4 医学的検査法
 1.生化学的検査
   1 栄養状態の充足傾向を示すもの
   2 機能の変化を示すもの
 2.生理機能(生体)検査
   1 血圧・脈拍
   2 心電図(ECGまたはEKG)
 3.臨床診査
 4.疾患別栄養指導
Chapter 5 栄養アセスメント
 1.栄養診断の方法
   1 食物摂取状況調査
   2 食習慣診断
   3 食事診断の流れ
   4 塩分診断
   5 栄養比率
   6 栄養素充足率
   7 食品比率
   8 食品群別充足率
   9 たんぱく質の化学的評価法
   10 脂質の質的評価法
 2.栄養評価の方法
   1 評価の意義
   2 評価の目的
   3 評価の種類
   4 評価の必要性
   5 評価の方法
Chapter 6 栄養教育法
 1.栄養教育の方法
   1 個人を対象とした教育
   2 集団を対象とした教育
 2.栄養教育指導案の作成
 3.栄養教育における媒体
   1 媒体の種類
   2 媒体の使い方・つくり方
 4.カウンセリング
Chapter 7 食生活に関する情報の収集
 1.活字情報
   1 図書目録・出版案内
   2 事典・辞典・便覧
   3 年鑑
   4 政府刊行物
   5 自治体刊行物
   6 雑誌
   7 新聞
   8 その他出版物
 2.音声・映像情報
 3.情報機関
 4.栄養関係法規
Chapter 8 情報処理と栄養統計
 1.情報処理とコンピュータ
   1 栄養指導とコンピュータの役割
   2 コンピュータの機能と構成
   3 パソコンによる栄養価計算の考え方(事例)
   4 コンピュータとのつき合い方
 2.栄養教育・栄養指導と統計学
   1 標本データ
   2 理論的分布
   3 標本分布論と推定
   4 仮説の検定
   5 相関
   6 回帰
   7 χ2検定
Chapter 9 調査研究のまとめ方
 1.論文の構成
 2.論文の書き方,まとめ方
   1 表題
   2 緒言
   3 研究方法
   4 研究結果
   5 考察
   6 結論
   7 文献
   8 抄録

 演習
 付表
 文献
 索引