やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに

 近年,子どもの食生活についての多面的な問題が氾濫している.そのため問題の背景や問題解決のための方策に苦慮しており,どのように取り組んだらよいかといった“ノウハウ”について,試行錯誤の状態にあるように思われる.
 [食]の問題については,プライバシーや個人の生活様式・習慣など,個人の権利に関する問題が介在するため,その改善方法については,今日まで具体的な指導方法や教育の方法論が確立されないままにいたっている.
 子どもの[食]の改善や子どもの[栄養教育]に直接携わっている栄養士や養護教諭,保母,保健婦などの間で,[食]や[栄養]に関する指導法や教育法についての具体例とその実施方法についての解説書の要望が高く,栄養教育の教材についても,健康教育のなかで子どもの[食・栄養教育]に関する“年齢別““施設別”“教育の目的別”に作られた成書がなく,それらに関するものの出版が待たれていた.
 本書はこのような状況を背景に,幼児や児童らが日常生活のなかで[食・栄養]に関する疑問や不安を抱いている項目を取り上げ,それらの疑問や不安を解消させるための学問的な裏づけを試みている.また子どもたちの理解を容易にするため,記述内容を第I部(栄養教育の学問的裏づけ)と,第II部(教材の活用とその使い方)の2つに区分して解説を試みた.
 第I部では,子どもの[食・栄養教育]の方法について,対象別,問題別にその背景を把握する方法を述べながら,それぞれの問題について具体的な指導法を解説している.また第II部では,教材に焦点をおいて,年齢別,施設別,(食の)問題別に適正な教育法に沿った教材の種類や,効果的な活用の仕方と作り方,教育の評価などについて紹介した.また,これらの教材は個人を対象とした場合と集団を対象とした場合とに分けて,適正な活用のケースや指導場面など,その対象ごとに第I部で取り上げた問題と連結(リンク)させながら教育できるように,教材を用いる対象,場面などを示した.
 対象となる子どもの年齢は,3歳から小学生までの幼児・児童とし,指導の実施場所は,保健センター,小学校,保健所,保育園(所),幼稚園などで,個人指導や集団指導を想定している.
 なお,教材の最後に,参考に供するために,アメリカで使用されている教材の一部を掲載した.
 教育項目や教材の数は,まだまだ十分とはいえないが,今後さらに新しい教材などを増やし充実化を図る予定である.
 本書の作成にあたり,先輩諸氏の文献を利用させていただいたことや,多くの企業から教育用教材の使用および製品のキャラクターなどの使用許可をいただいたこと,また,沼田市学校給食共同調理場,静岡県大井川町立西保育園,上越市立東本町小学校などで活用されている教材を利用させていただいたことに謝意を表する.
 また,本書の企画から制作までの出版に協力していただいた医歯薬出版に感謝する.
 2001年6月 著者代表 坂本元子
食生活指針……表見返し
食習慣調査票……裏見返し
はじめに
 (123):IとIIの相互に関係するページ数を表しています.

I――栄養教育の基礎的な知識と心構え
1 栄養教育を始める前に
 1.教育の対象の実情を知る
 2.子どもの教育の心得
2 栄養教育の基礎的知識
 1.子どもの発育過程と食
  1)子どもの発育過程
  2)年齢別の理解できる教育の内容
 2.子どもの栄養問題と基礎的な知識
  1)栄養と栄養素
  2)栄養素の種類と機能
  3)食品の組み合わせと食事の組み合わせ
  4)食品の栄養成分表示の話
  5)健康をささえる新しい食品
  6)健康づくり
  7)おやつの課題
  8)食べ方が気になる子ども
  9)咀しゃくの重要性
 3.健康問題別教育法
  1)生活習慣病の予防
  2)肥満予防
  3)やせと食欲不振
  4)むし歯予防
  5)アレルギーの子どもの食事
  6)貧血予防の食生活
  7)がんの予防と果物・野菜
  8)減塩の重要性
  9)食品の安全性と衛生的な扱い方
 4.食べ方に問題のある子どもの場合
  1)野菜嫌いの子どもの食事
  2)朝食欠食が気になる子ども
  3)不規則な食事をする子ども
  4)望ましいダイエットの方法
  5)運動部の子どもの食事
  6)好き嫌いのある子ども

II 教材とその活用法
 1.骨を丈夫にしよう
 2.あなたの骨は大丈夫
 3.骨を育てるカルシウム
 4.貧血の予防
 5.貧血児の食事の注意点!
 6.あぶらのとりすぎに注意
 7.ウンチを出そう
 8.きれいなウンチができるまで
 9.クリスマスのできごと
 10.バランスよく食べましょう
 11.食品の組み合わせ1
 12.食品の組み合わせ2
 13.食品の組み合わせ3
 14.朝ご飯は大事
 15.ちゃんと朝ご飯
 16.何でも食べよう
 17.汽車ポッポ“3色の貨車で旅にでよう!”
 18.ピクニックのお弁当
 19.何をどれだけ食べたらいいのだろう
 20.おやつに合う運動はなあに?
 21.おやつを食べて運動しよう
 22.やっちゃん,いっちゃんと遊ぼう
 23.体重を減らすための目標エネルギー,食事量と運動量
 24.食生活指導マニュアル
 25.大ちゃんの歯磨き
 26.薄味になれようしょう太くん
 27.野菜記念日
 28.野菜パワーで元気100倍!
 29.どんなおやつを食べるといいのかな?
 30.おやつでGO!
 31.おやつ好き?
 32.お菓子を食べたら運動しよう
 33.もぐもぐむしゃむしゃ
 34.もぐもぐごっくん
 35.パクパクわんぱくロボット君
 36.3つの食品群のチェックをしよう
アメリカの教材
 37..健康な食事ピラミッド
 37..フードガイドピラミッドの教育教材
 37..ラベルの見方と食品の選び方
 37..スーパービーンとその友達の冒険

参考資料

COLUMN
 カウプ指数
 ローレル指数
 脂肪酸の種類
 必須アミノ酸
 地中海式食事と日本型食事
 消化と吸収
 栄養素の代謝
 食品規格に関する国際的動向
 砂糖・バターを多く使ったケーキより,せんべいやまんじゅうを
 ジャンク・フード
 よく噛んで,ゆっくり食べましょう
 食べすぎないための“べからず集”
 食物日誌
 ヘモグロビンと心臓の助け合い
 赤ワインと健康
 減塩と同時にカリウムを含む食品の摂取を心がける
 塩分はなぜ血圧を上げるのか
 朝食を抜くことの弊害
 外食メニューの選び方
 夕食後の夜食はやめましょう