発刊にあたって
本書は歯学部および歯科大学において,生理学および口腔生理学を学ぶ学生が座学だけでは理解が困難な生理現象を実際に目で見,手で触れて体験することによって,より理解を深めることを目的に編纂された.
生理学では,対象となる臓器や器官の形態,あるいはそれを構成する要素の名称を覚えるだけでなく,それぞれの臓器や器官がいかなる機能を有するか,あるいはその機能がいかなるメカニズムで発揮されるかを理解しなければならない.形態学における標本などとは異なり,生理学では機能やメカニズムを評価するため,動きや力などのエネルギー量を客観的な数値に置き換える必要がある.そのゆえ,観察された様々な現象を,ある単位を持ったエネルギー量として表現し,刺激に対する変化量やエネルギー量の経時的変化など,様々な関連因子との関係を求めなければならない.このように,形態として表すことができないエネルギー変化を座学だけで理解するのは至難の業である.一方で,生理学や口腔生理学では毎日の生活の中で自分自身がいつも経験している身体の働きや感覚を対象としているため,取り扱う対象が非常に身近に存在する学問であるともいえる.本書では,日ごろ経験している全身および口腔機能のメカニズムを理解するという観点から,ヒトを対象とした実際の動きや力,あるいは感覚強度を測定し数値化する実験と,ヒトの機能を模倣した動物モデルを用いた実験を選択した.
各項目は歯科医師を目指す学生にとって特に必要と思われる内容であるが,限られた講義時間の中ですべての実験を行うことは不可能である.それぞれの講座において重要と思われる内容を選択し,講義の内容にマッチした実習スケジュールを組み立てていただければ,本書の目的は十分に達成できるものと考える.
最後に,お忙しいなかご執筆いただいた先生方に深甚なる謝意を表したい.また,医歯薬出版の諸氏に心より御礼申し上げる次第である.
2011年12月
執筆者代表 岩田幸一
本書は歯学部および歯科大学において,生理学および口腔生理学を学ぶ学生が座学だけでは理解が困難な生理現象を実際に目で見,手で触れて体験することによって,より理解を深めることを目的に編纂された.
生理学では,対象となる臓器や器官の形態,あるいはそれを構成する要素の名称を覚えるだけでなく,それぞれの臓器や器官がいかなる機能を有するか,あるいはその機能がいかなるメカニズムで発揮されるかを理解しなければならない.形態学における標本などとは異なり,生理学では機能やメカニズムを評価するため,動きや力などのエネルギー量を客観的な数値に置き換える必要がある.そのゆえ,観察された様々な現象を,ある単位を持ったエネルギー量として表現し,刺激に対する変化量やエネルギー量の経時的変化など,様々な関連因子との関係を求めなければならない.このように,形態として表すことができないエネルギー変化を座学だけで理解するのは至難の業である.一方で,生理学や口腔生理学では毎日の生活の中で自分自身がいつも経験している身体の働きや感覚を対象としているため,取り扱う対象が非常に身近に存在する学問であるともいえる.本書では,日ごろ経験している全身および口腔機能のメカニズムを理解するという観点から,ヒトを対象とした実際の動きや力,あるいは感覚強度を測定し数値化する実験と,ヒトの機能を模倣した動物モデルを用いた実験を選択した.
各項目は歯科医師を目指す学生にとって特に必要と思われる内容であるが,限られた講義時間の中ですべての実験を行うことは不可能である.それぞれの講座において重要と思われる内容を選択し,講義の内容にマッチした実習スケジュールを組み立てていただければ,本書の目的は十分に達成できるものと考える.
最後に,お忙しいなかご執筆いただいた先生方に深甚なる謝意を表したい.また,医歯薬出版の諸氏に心より御礼申し上げる次第である.
2011年12月
執筆者代表 岩田幸一
実験の心得(岩田幸一)
第1編 ヒトを用いた生理学実習
1.血液(岩田幸一)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 血球数の算定
II 出血時間の測定(Duke法)
III 血色素の測定:塩酸ヘマチン法(Sahli法)
IV 血液型の判定
V 赤血球の浸透圧と溶血
2.呼吸と循環(三枝木泰丈)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 肺活量測定と呼吸数測定
II 脈拍数の測定
III 血圧の測定
IV 心電図の記録解析
3.脳波(泰羅雅登)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 自発脳波
II 誘発脳波:聴性脳幹反応
III 誘発電位:体性感覚誘発電位
4.自律神経反射(吉垣純子)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 軸索反射性発汗
II 対光反射
III 皮膚電位反応
5.体性感覚(泰羅雅登)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 重量感覚についてのWeberの法則
II 触-圧点と痛点
III 2点弁別閾
IV 温点と冷点
6.視覚(泰羅雅登)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 視野
II 盲点(盲斑)
7.前庭感覚(泰羅雅登)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I カロリックテスト
8.誘発筋電図(H波,M波)(泰羅雅登)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I H波,M波の記録
第2編 動物を用いた生理学実習
9.神経の興奮伝導(岩田幸一)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 時値の測定
II 閾値,極大値,刺激強度-反応曲線と伝導速度
III 不応期の測定
IV 興奮伝導の中断(神経の挫滅による中断)
V 興奮伝導に対する温度の影響
VI 興奮伝導に対する麻酔薬およびエタノールの影響
10.骨格筋の収縮(三枝木泰丈)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 等張力性収縮
II 等尺性収縮
11.心筋の収縮(三枝木泰丈)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 不応期と期外収縮
II 迷走神経刺激に対する反応
III 自動性の観察
12.感覚神経の興奮(佐原資謹)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 味覚受容器からの活動電位記録実験
II 皮膚感覚神経からの活動電位記録実験
13.内分泌(松本茂二,武田 守)
A 概説
B 目的
C 実験項目
第3編 口腔生理学実習
14.歯の動揺度(西川泰央)
A 概説
B 目的
C 実験項目
15.唾液分泌(松尾龍二)
A 概説
B 目的
C 実験項目
16.唾液の性状(吉垣純子)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 唾液pHの測定
II ヒト唾液アミラーゼ活性の測定(DNS法)
17.口腔の体性感覚(岩田幸一,西川泰央)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 触覚閾値と痛覚閾値
II 触点と痛点の分布密度
III 皮膚触覚の2点弁別閾
IV 歯の位置感覚
18.味覚(杉本久美子)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 味覚閾値の測定
II PTC検査
III 味覚の対比
IV 味覚修飾物質に関する実験
19.嗅覚(佐原資謹)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 嗅覚検査法(オルファクトメトリー)
20.咀嚼運動と顎反射(井上富雄)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 顎運動
II 咀嚼筋と筋電図
III 顎反射
IV 咬合力
21.咀嚼能率の測定(西川泰央)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 試料の粉砕の程度から判定する方法
II 粉砕された試料の表面積の増加度から判定する方法
III 篩分法以外の咀嚼能力の測定法
22.嚥下・嚥下反射(山村健介)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I ヒト水および唾液嚥下時の舌骨上筋の活動
II ヒト水嚥下時の顎位や体位の影響
III ヒト摂食行動に伴う咬筋,舌骨上筋群の活動
23.発声・音声(田ア雅和)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 母音のフォルマント解析
II 口蓋図(パラトグラム)の描記
資料
参考文献
索引
第1編 ヒトを用いた生理学実習
1.血液(岩田幸一)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 血球数の算定
II 出血時間の測定(Duke法)
III 血色素の測定:塩酸ヘマチン法(Sahli法)
IV 血液型の判定
V 赤血球の浸透圧と溶血
2.呼吸と循環(三枝木泰丈)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 肺活量測定と呼吸数測定
II 脈拍数の測定
III 血圧の測定
IV 心電図の記録解析
3.脳波(泰羅雅登)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 自発脳波
II 誘発脳波:聴性脳幹反応
III 誘発電位:体性感覚誘発電位
4.自律神経反射(吉垣純子)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 軸索反射性発汗
II 対光反射
III 皮膚電位反応
5.体性感覚(泰羅雅登)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 重量感覚についてのWeberの法則
II 触-圧点と痛点
III 2点弁別閾
IV 温点と冷点
6.視覚(泰羅雅登)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 視野
II 盲点(盲斑)
7.前庭感覚(泰羅雅登)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I カロリックテスト
8.誘発筋電図(H波,M波)(泰羅雅登)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I H波,M波の記録
第2編 動物を用いた生理学実習
9.神経の興奮伝導(岩田幸一)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 時値の測定
II 閾値,極大値,刺激強度-反応曲線と伝導速度
III 不応期の測定
IV 興奮伝導の中断(神経の挫滅による中断)
V 興奮伝導に対する温度の影響
VI 興奮伝導に対する麻酔薬およびエタノールの影響
10.骨格筋の収縮(三枝木泰丈)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 等張力性収縮
II 等尺性収縮
11.心筋の収縮(三枝木泰丈)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 不応期と期外収縮
II 迷走神経刺激に対する反応
III 自動性の観察
12.感覚神経の興奮(佐原資謹)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 味覚受容器からの活動電位記録実験
II 皮膚感覚神経からの活動電位記録実験
13.内分泌(松本茂二,武田 守)
A 概説
B 目的
C 実験項目
第3編 口腔生理学実習
14.歯の動揺度(西川泰央)
A 概説
B 目的
C 実験項目
15.唾液分泌(松尾龍二)
A 概説
B 目的
C 実験項目
16.唾液の性状(吉垣純子)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 唾液pHの測定
II ヒト唾液アミラーゼ活性の測定(DNS法)
17.口腔の体性感覚(岩田幸一,西川泰央)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 触覚閾値と痛覚閾値
II 触点と痛点の分布密度
III 皮膚触覚の2点弁別閾
IV 歯の位置感覚
18.味覚(杉本久美子)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 味覚閾値の測定
II PTC検査
III 味覚の対比
IV 味覚修飾物質に関する実験
19.嗅覚(佐原資謹)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 嗅覚検査法(オルファクトメトリー)
20.咀嚼運動と顎反射(井上富雄)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 顎運動
II 咀嚼筋と筋電図
III 顎反射
IV 咬合力
21.咀嚼能率の測定(西川泰央)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 試料の粉砕の程度から判定する方法
II 粉砕された試料の表面積の増加度から判定する方法
III 篩分法以外の咀嚼能力の測定法
22.嚥下・嚥下反射(山村健介)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I ヒト水および唾液嚥下時の舌骨上筋の活動
II ヒト水嚥下時の顎位や体位の影響
III ヒト摂食行動に伴う咬筋,舌骨上筋群の活動
23.発声・音声(田ア雅和)
A 概説
B 目的
C 実験項目
I 母音のフォルマント解析
II 口蓋図(パラトグラム)の描記
資料
参考文献
索引