序
「コミュニケーション」 という言葉は,外来語でありながら日常的な用語としてわが国でも多くの分野で使われています. そのコミュニケーションは,歯科領域の保健医療ではどのように取り扱われているか,あるいはどのような意義があるのかということに応えてみようというのが,本書の当初の企画でありました.
日常の医療におけるコミュニケーションは,端的に言えば 「患者-医師関係」,あるいは「患者-医療関係者」において患者が自らの身体的・心理的な訴えをめぐる意思決定(患者の意思決定権)の場であり,さらに患者が医療や治療の内容を選択するために不可欠な手段(患者の選択権)であり,そして医療関係者が患者に病状や治療経過を伝える重要な場における意思疎通のプロセスであります.
しかしながら,現在の保健医療にかかわる情報には,知らなければ自分の生命にかかわる重要な情報があり,裏を返して言えば,ぜひ人々に知ってもらいたい保健情報および疾病情報があります. したがって,これまでの社会では,知らなければ知らないで済ましていたことが,現在では情報を知る必要があり,知る権利があり,知らなければならないという切実さがあります. そのことは,一方で医療と患者にかかわるマスメディアを発達させています. 20世紀後半から押し寄せてきた情報化社会のなかで,急速に情報手段や情報量が増えてきて,個人を取り巻いています. しかも,情報はいくつもあるが「どの情報が本当か?」とか,「どの情報に頼ったらよいのか?」という個人の情報選択と情報受容の過程が重要になってきています.
基本的に,コミュニケーションは意思伝達の手段であり,言い換えれば情報の送り手(発信者)とその受け手(受信者)の場であり,そしてそのプロセスにおいて個別的な対人関係と,いわゆるマス(集団)を対象とした社会があり,さらに,一方向性の対応と双方向性の対応のコミュニケーションとなっています. そして,現在の情報技術(information technology:IT)では,情報発達としての「対話形式」でのコミュニケーションがコンピュータの分野でも進められています. この方法の特徴は,従来の対話形式の電話とも異なっていて,静かに考えながら,リアルタイムで「間(ま)」をおきながら相手に答えていく,あるいは伝えていく利点があり,今後のコミュニケーションのあり方に相当に影響を及ぼすことが予想されます.
本年は特に,介護保険制度の実施にあたり,21世紀に向かってわが国の医療と福祉の複合政策が法律支柱を得て展開されていく歴史的な年でもあります. 多くの論議を呼んだ「かかりつけ歯科医とその機能評価」が,実際に医療保険に取り入れられ,さらに介護保険でも介護報酬として単位算定されています. 2003年か2005年には,この複合政策の見直しが提案されているようですが,おそらく「診療報酬対介護報酬」の中味の検討が真剣に行われることでしょう. 「かかりつけ歯科医」を要約して端的に核心を突けば,「患者さんに症状や治療内容をよく説明すること」と「病状によっては的確に専門医や病院に紹介すること」になります. そのことは,まさに「コミュニケーション」であり,医療関係者の英知であり,「ケアの本質」であります.
そのような時代的な背景のなかで,本書は歯科医療の領域におけるコミュニケーションのあり方を現時点で包括的に捉えることに主眼をおいて企画されたもので,体系化できるものがあれば,今の時点で体系化を試みてみようということでまとめられています.
1970年代から医療の急速な技術進歩と患者個人の自己尊厳のなかで世界的に強調されてきた「インフォームド・コンセント」は,まさに医師と患者またはその家族とのコミュニケーションへの新たな警鐘となり,従来からの「インプライド・コンセント」による患者と医師の関係を覆すインパクトがありました. そして未だ各方面で問題が発生していながらも,基本的な人権の保障として定着してきています.
本書が,歯科医療におけるコミュニケーションの原理やその技法に役立つことがあれば,所期の目標が達成されたということになります. 本書についてお気づきの点あるいはご叱正などをいただければたいへんありがたく思います.
なお,昨年末に著者の一人である菅原武道先生が急逝されました. 本書の完成の喜びを共に分かち合うことができず,非常に残念に思います.
最後に,本書の企画から出版まで忍耐強く編集作業に奔走された医歯薬出版編集部の牧野和彦氏に謝意を表します.
2000年4月 編者一同
「コミュニケーション」 という言葉は,外来語でありながら日常的な用語としてわが国でも多くの分野で使われています. そのコミュニケーションは,歯科領域の保健医療ではどのように取り扱われているか,あるいはどのような意義があるのかということに応えてみようというのが,本書の当初の企画でありました.
日常の医療におけるコミュニケーションは,端的に言えば 「患者-医師関係」,あるいは「患者-医療関係者」において患者が自らの身体的・心理的な訴えをめぐる意思決定(患者の意思決定権)の場であり,さらに患者が医療や治療の内容を選択するために不可欠な手段(患者の選択権)であり,そして医療関係者が患者に病状や治療経過を伝える重要な場における意思疎通のプロセスであります.
しかしながら,現在の保健医療にかかわる情報には,知らなければ自分の生命にかかわる重要な情報があり,裏を返して言えば,ぜひ人々に知ってもらいたい保健情報および疾病情報があります. したがって,これまでの社会では,知らなければ知らないで済ましていたことが,現在では情報を知る必要があり,知る権利があり,知らなければならないという切実さがあります. そのことは,一方で医療と患者にかかわるマスメディアを発達させています. 20世紀後半から押し寄せてきた情報化社会のなかで,急速に情報手段や情報量が増えてきて,個人を取り巻いています. しかも,情報はいくつもあるが「どの情報が本当か?」とか,「どの情報に頼ったらよいのか?」という個人の情報選択と情報受容の過程が重要になってきています.
基本的に,コミュニケーションは意思伝達の手段であり,言い換えれば情報の送り手(発信者)とその受け手(受信者)の場であり,そしてそのプロセスにおいて個別的な対人関係と,いわゆるマス(集団)を対象とした社会があり,さらに,一方向性の対応と双方向性の対応のコミュニケーションとなっています. そして,現在の情報技術(information technology:IT)では,情報発達としての「対話形式」でのコミュニケーションがコンピュータの分野でも進められています. この方法の特徴は,従来の対話形式の電話とも異なっていて,静かに考えながら,リアルタイムで「間(ま)」をおきながら相手に答えていく,あるいは伝えていく利点があり,今後のコミュニケーションのあり方に相当に影響を及ぼすことが予想されます.
本年は特に,介護保険制度の実施にあたり,21世紀に向かってわが国の医療と福祉の複合政策が法律支柱を得て展開されていく歴史的な年でもあります. 多くの論議を呼んだ「かかりつけ歯科医とその機能評価」が,実際に医療保険に取り入れられ,さらに介護保険でも介護報酬として単位算定されています. 2003年か2005年には,この複合政策の見直しが提案されているようですが,おそらく「診療報酬対介護報酬」の中味の検討が真剣に行われることでしょう. 「かかりつけ歯科医」を要約して端的に核心を突けば,「患者さんに症状や治療内容をよく説明すること」と「病状によっては的確に専門医や病院に紹介すること」になります. そのことは,まさに「コミュニケーション」であり,医療関係者の英知であり,「ケアの本質」であります.
そのような時代的な背景のなかで,本書は歯科医療の領域におけるコミュニケーションのあり方を現時点で包括的に捉えることに主眼をおいて企画されたもので,体系化できるものがあれば,今の時点で体系化を試みてみようということでまとめられています.
1970年代から医療の急速な技術進歩と患者個人の自己尊厳のなかで世界的に強調されてきた「インフォームド・コンセント」は,まさに医師と患者またはその家族とのコミュニケーションへの新たな警鐘となり,従来からの「インプライド・コンセント」による患者と医師の関係を覆すインパクトがありました. そして未だ各方面で問題が発生していながらも,基本的な人権の保障として定着してきています.
本書が,歯科医療におけるコミュニケーションの原理やその技法に役立つことがあれば,所期の目標が達成されたということになります. 本書についてお気づきの点あるいはご叱正などをいただければたいへんありがたく思います.
なお,昨年末に著者の一人である菅原武道先生が急逝されました. 本書の完成の喜びを共に分かち合うことができず,非常に残念に思います.
最後に,本書の企画から出版まで忍耐強く編集作業に奔走された医歯薬出版編集部の牧野和彦氏に謝意を表します.
2000年4月 編者一同
序…iii
はじめに 石川達也…1
新しい世紀の口腔保健情報とそのコミュニケーション
Part1 口腔ヘルスケアとコミュニケーション…5
1章 地域のなかの歯科医師の役割と機能…高江洲義矩…7
I かかりつけ歯科医とは… 7
1.「Family Dentistry」と「family dentist」の紹介/7
2.「かかりつけの歯科医」と「かかりつけ歯科医」はどこが違うのか/10
3.2000年4月からの「かかりつけ医(主治医)」・「かかりつけ医機能」と「かかりつけ歯科医」・「かかりつけ歯科医機能」/11
4.かかりつけ歯科医制度の実施とその動向/17
5.介護保健制度における歯科医師と歯科衛生士の役割/18
II 医療におけるコミュニケーションの背景にあるもの…… 23
1.QOL(生活・生命の質)の考え方/23
2.医療経済・福祉経済(厚生経済)からの観点/24
3.QOCとQOTを探ってみたら/25
4.医療におけるコミュニケーション/26
5.医療の求心性と遠心性/27
2章 歯科医療の質を評価する 30
I 歯科医療は変わりつつある……深井穫博… 30
1.変わりつつある歯科医療/30
2.医療の質とは/32
3.医療の質の評価/33
4.クリティカル・パスとは/36
II 歯科医療の技術的質を高めるために…… 37
1.EBMの背景/37
2.歯科医療におけるevidenceとは/38
3.EBDを実践する/39
III 患者さんを知る…… 40
1.患者さんとは/40
2.患者の歯科治療に対する不安/41
3.歯科受診・受療に関する経済的背景/43
4.歯科受診・受療への人々の態度と専門家の判断とのギャップ/44
5.ニードとディマンド/45
6.患者の不満と歯科医院の選択理由/46
IV 人々に受容される歯科医療とは…… 47
1.これからの歯科医師-患者関係/47
2.歯科医師の望ましい態度と望ましくない態度/49
3.患者満足度を測る/50
4.健康情報とインフォームド・コンセント/52
5.人々に受容される歯科医療/55
V 医療経済からみた歯科医療……西村周三… 56
1.はじめに――経済の循環/56
2.産業としての歯科医療業/57
3.むすび/59
3章 人々の健康行動とそれを支える健康教育 62
I 口腔ヘルスケアにおけるコミュニケーション……深井穫博… 62
1.信頼と不信を生むコミュニケーション/62
2.コミュニケーションとは/63
3.口腔ヘルスケアにおけるコミュニケーションとその技法/64
4.問診の技法/66
5.患者さんから質問を受けたとき…患者の訴えを聴く/66
6.解釈モデルとは/67
II 口腔保健行動とは…… 68
1.自らの行動で健康を改善し,コントロールする…Breslowの7つの健康習慣の意味するもの/68
2.保健行動の研究の歴史――保健行動の研究は,歯科保健の分野から始まった!/69
3.口腔保健行動とは/69
4.生涯発達する口腔保健行動/71
5.口腔保健行動のゴールはQOL/72
6.年齢層や性差からみた口腔保健行動/72
7.職種と口腔保健行動/75
III 人々の口腔保健に対する意識…… 77
1.人々の主観的評価と専門家の客観的評価とのギャップ/77
2.市民権を得た口腔保健用語/79
IV 健康教育の歴史と理論……鶴本明久… 80
1.健康教育とは/80
2.教育から学習へ/83
V 健康教育と保健情報――健康教育を確かなものとするために…… 90
1.健康学習を支える保健情報/90
2.コーディネーターと保健情報/92
4章 地域保健とコミュニケーション 96
I 地域における歯科医療・口腔保健とコミュニケーション……筒井昭仁… 96
1.地域の医療・保健が迎えた変革/96
2.新しい事業やアイデアを地域に導入/100
3.フッ化物の応用とイノベーションの普及/103
4.大きな地域におけるコミュニケーション/109
5.まとめ/110
II PRECEDE-PROCEED Model(MIDORIモデル)の理論と実際……藤内修二… 111
1.PRECEDE-PROCEED Modelの歴史的な背景/111
2.モデルに基づく展開の実際/112
3.PRECEDE-PROCEED Model(MIDORIモデル)のメリット/123
4.今後の展開に向けて/124
Part 2 歯科におけるコミュニケーション技法の実際…127
5章 診療室でのコミュニケーション 129
I 診療室でのコミュニケーションの実際…… 129
1.こんなときどうする…治療編/130
1 初診の患者さんの対応法……… 130
1)まずは自己紹介から……中村譲治… 130
2)患者さんの事情を把握する……藤田孝一… 131
3)患者さんの疾病解釈モデルを把握する……中村譲治… 132
2 患者さんの不安の質と量を把握する……中村清徳… 134
3 思い込みの強い患者さんへの対応……神崎昌二… 135
4 医療不信の強い人には?……梶谷 彰… 136
5 精神科疾患が疑われる患者さんに対して……大塚政公… 137
6 コミュニケーションのツールとして疾患を捉える……松岡奈保子… 139
7 依存心の強い患者さんには……越智玲子… 140
2.こんなときどうする…予防編/141
1 予防が主訴の人たちとのコミュニケーション……柏木伸一郎… 141
2 子供たちとのコミュニケーション……西本美恵子… 142
3 中学生とのコミュニケーション……川上 誠… 144
4 成人への移行期……中村清徳… 144
5 ストレスを抱えたクライアントへの対応……松岡奈保子… 146
6 フッ素洗口や歯間ブラシがうまく定着しない人への対応……福光保之… 147
7 スタッフみんながコミュニケーター……中村寿和… 148
II 歯周治療におけるプラークコントロールの導入とコミュニケーション……浦口良治… 149
1.仮封とプラークコントロール/149
2.コミュニケーションは本当に必要?/150
3.未知との遭遇/151
4.取り返しのつかない10分間/152
5.歯科医師実力検定/153
6.最大のヤマ場:実態のプレゼンテーション/154
7.治る保証できます/157
8.プラークの総量規制/159
9.早く知りたい実際の方法/160
10.かかりつけ医になるには最低90分はかかる/162
6章 訪問診療におけるコミュニケーション 森田知典 ―― 164
I 訪問診療の実際…… 164
1.生活者の暮らしを訪問する/164
2.生活者の「居場所」を考える/169
3.訪問診療におけるコミュニケーションの特徴/171
4.訪問診療の事例/174
1 居宅の事例…さまざまな在宅生活者の場面,顔,情緒,家族との時間/174
2 病院での事例/180
3 施設での事例…長生園での口腔ケア展開劇:職員との対話/185
II 口腔保健と介護の実際…… 187
1.口腔ケアの可能性は大きい/187
2.口腔ケアと介護の実践/193
3.評価される現場/198
7章 生活のなかでの口腔ヘルスケアとコミュニケーション 中村譲治 ―― 201
I 健康者を相手にする…… 201
1.口腔ヘルスケアとヘルスプロモーション/201
2.健康者に対する口腔ヘルスケアの支援の場とは/203
3.口腔ヘルスケアの目指すゴールは住民のQOLにあります/205
II QOLをゴールにおいた口腔ヘルスケアの事例…… 206
1.診療室での事例/206
2.職場での事例/214
3.地域での事例/220
8章 集団への口腔ヘルスケアとコミュニケーション 川口陽子 ―― 224
I 開業医が担う日本の地域歯科保健活動…… 224
II 集団対象のコミュニケーション…… 225
III 集団対象のコミュニケーションの機会…… 226
IV 集団への情報提供の方法:健康教育…… 227
1.効果的な健康教育を行うためのプロセス/227
2.健康教育を行う際の注意点/229
3.情報量と獲得量/231
4.人の心に訴えるコミュニケーション/232
5.フィードバックの重要性/233
V 集団からの情報収集の方法:フォーカスグループ法…… 234
1.フォーカスグループとの出会い/234
2.フォーカスグループ法とは/235
3.フォーカスグループに関するいくつかの誤解/238
4.フォーカスグループを実施する際の注意事項/238
9章 学校歯科保健とコミュニケーション 鏡 宣明 ―― 241
I 学校という環境を知ろう…… 241
II 児童生徒の特徴…… 243
1.小学校の場合/243
2.中学校の場合/247
3.高等学校の場合/248
III 学校保健におけるコミュニケーション…… 250
1.児童生徒とのコミュニケーション/250
2.学校現場におけるコミュニケーション/251
3.保護者(家族)とのコミュニケーション/253
4.地域開業医(かかりつけの歯科医)とのコミュニケーション/254
5.教育委員会とのコミュニケーション/255
IV 健康診断に求められる保健情報…… 255
1.歯科検診と保健指導/255
2.DMFは何を語り何を読みとるか(検診結果から)/256
3.要観察歯(CO)の生かし方/256
4.自己評価の仕方/258
10章 地域での口腔ヘルスケアとコミュニケーション 261
I 地域での連携システムとコミュニケーション……菅原武道… 261
1.はじめに/261
2.地域で開業したら…診療所の近所とのコミュニケーション/263
3.歯科医師会で口腔ヘルスケアを目指す仲間づくり…歯科医師間のコミュニケーション/265
4.歯科医師会事業における関係者とのコミュニケーション/270
5.地域において目指すもの/272
II 他職種との連携,地域での連携システム……渡辺賢治… 274
1.切っても切れない「縁」…保健婦さんとうまくやる/275
2.保育園でのコミュニケーション/277
3.小中学校でのコミュニケーション/279
4.地域でのコミュニケーション/281
5.役場でのコミュニケーション/282
6.マスメディアを活用しよう/283
7.まとめ/285
III 医療ネットワークの実際(医療・保健・福祉のネットワーク)……森田知典… 285
1.伊万里市在宅要介護者歯科保健推進協議会はどのようにして生まれたか? システムなきシステム論/285
2.伊万里市コミュニティ・ケア会議の紹介…市町村における連帯とは何か/288
3.伊万里摂食・嚥下研究会の紹介…在宅ケアチーム形成に向けて/289
IV 海外での歯科保健医療協力とコミュニケーション……中村修一… 290
1.ネパールでの国際歯科保健医療協力/290
2.プロジェクト準備段階/291
3.現地協力機関との関係/292
4.プロジェクト現場での村人とのコミュニケーション/293
5.現地でのメンバーシップとリーダーシップ/294
6.まとめ/296
V 組織をエンパワーメントさせるための上手な会議の進め方……中村譲治・深井穫博・堀口逸子… 296
1.会議やミーティングもコミュニケーションから成立します/296
2.会議の進め方/298
3.記録のとり方・利用の仕方/299
11章 これからの歯科保健・医療のために 瀧口 徹 302
1.はじめに/302
2.これからの歯科保健医療を考えるうえで必要な基礎的認識/303
索引…… 313
はじめに 石川達也…1
新しい世紀の口腔保健情報とそのコミュニケーション
Part1 口腔ヘルスケアとコミュニケーション…5
1章 地域のなかの歯科医師の役割と機能…高江洲義矩…7
I かかりつけ歯科医とは… 7
1.「Family Dentistry」と「family dentist」の紹介/7
2.「かかりつけの歯科医」と「かかりつけ歯科医」はどこが違うのか/10
3.2000年4月からの「かかりつけ医(主治医)」・「かかりつけ医機能」と「かかりつけ歯科医」・「かかりつけ歯科医機能」/11
4.かかりつけ歯科医制度の実施とその動向/17
5.介護保健制度における歯科医師と歯科衛生士の役割/18
II 医療におけるコミュニケーションの背景にあるもの…… 23
1.QOL(生活・生命の質)の考え方/23
2.医療経済・福祉経済(厚生経済)からの観点/24
3.QOCとQOTを探ってみたら/25
4.医療におけるコミュニケーション/26
5.医療の求心性と遠心性/27
2章 歯科医療の質を評価する 30
I 歯科医療は変わりつつある……深井穫博… 30
1.変わりつつある歯科医療/30
2.医療の質とは/32
3.医療の質の評価/33
4.クリティカル・パスとは/36
II 歯科医療の技術的質を高めるために…… 37
1.EBMの背景/37
2.歯科医療におけるevidenceとは/38
3.EBDを実践する/39
III 患者さんを知る…… 40
1.患者さんとは/40
2.患者の歯科治療に対する不安/41
3.歯科受診・受療に関する経済的背景/43
4.歯科受診・受療への人々の態度と専門家の判断とのギャップ/44
5.ニードとディマンド/45
6.患者の不満と歯科医院の選択理由/46
IV 人々に受容される歯科医療とは…… 47
1.これからの歯科医師-患者関係/47
2.歯科医師の望ましい態度と望ましくない態度/49
3.患者満足度を測る/50
4.健康情報とインフォームド・コンセント/52
5.人々に受容される歯科医療/55
V 医療経済からみた歯科医療……西村周三… 56
1.はじめに――経済の循環/56
2.産業としての歯科医療業/57
3.むすび/59
3章 人々の健康行動とそれを支える健康教育 62
I 口腔ヘルスケアにおけるコミュニケーション……深井穫博… 62
1.信頼と不信を生むコミュニケーション/62
2.コミュニケーションとは/63
3.口腔ヘルスケアにおけるコミュニケーションとその技法/64
4.問診の技法/66
5.患者さんから質問を受けたとき…患者の訴えを聴く/66
6.解釈モデルとは/67
II 口腔保健行動とは…… 68
1.自らの行動で健康を改善し,コントロールする…Breslowの7つの健康習慣の意味するもの/68
2.保健行動の研究の歴史――保健行動の研究は,歯科保健の分野から始まった!/69
3.口腔保健行動とは/69
4.生涯発達する口腔保健行動/71
5.口腔保健行動のゴールはQOL/72
6.年齢層や性差からみた口腔保健行動/72
7.職種と口腔保健行動/75
III 人々の口腔保健に対する意識…… 77
1.人々の主観的評価と専門家の客観的評価とのギャップ/77
2.市民権を得た口腔保健用語/79
IV 健康教育の歴史と理論……鶴本明久… 80
1.健康教育とは/80
2.教育から学習へ/83
V 健康教育と保健情報――健康教育を確かなものとするために…… 90
1.健康学習を支える保健情報/90
2.コーディネーターと保健情報/92
4章 地域保健とコミュニケーション 96
I 地域における歯科医療・口腔保健とコミュニケーション……筒井昭仁… 96
1.地域の医療・保健が迎えた変革/96
2.新しい事業やアイデアを地域に導入/100
3.フッ化物の応用とイノベーションの普及/103
4.大きな地域におけるコミュニケーション/109
5.まとめ/110
II PRECEDE-PROCEED Model(MIDORIモデル)の理論と実際……藤内修二… 111
1.PRECEDE-PROCEED Modelの歴史的な背景/111
2.モデルに基づく展開の実際/112
3.PRECEDE-PROCEED Model(MIDORIモデル)のメリット/123
4.今後の展開に向けて/124
Part 2 歯科におけるコミュニケーション技法の実際…127
5章 診療室でのコミュニケーション 129
I 診療室でのコミュニケーションの実際…… 129
1.こんなときどうする…治療編/130
1 初診の患者さんの対応法……… 130
1)まずは自己紹介から……中村譲治… 130
2)患者さんの事情を把握する……藤田孝一… 131
3)患者さんの疾病解釈モデルを把握する……中村譲治… 132
2 患者さんの不安の質と量を把握する……中村清徳… 134
3 思い込みの強い患者さんへの対応……神崎昌二… 135
4 医療不信の強い人には?……梶谷 彰… 136
5 精神科疾患が疑われる患者さんに対して……大塚政公… 137
6 コミュニケーションのツールとして疾患を捉える……松岡奈保子… 139
7 依存心の強い患者さんには……越智玲子… 140
2.こんなときどうする…予防編/141
1 予防が主訴の人たちとのコミュニケーション……柏木伸一郎… 141
2 子供たちとのコミュニケーション……西本美恵子… 142
3 中学生とのコミュニケーション……川上 誠… 144
4 成人への移行期……中村清徳… 144
5 ストレスを抱えたクライアントへの対応……松岡奈保子… 146
6 フッ素洗口や歯間ブラシがうまく定着しない人への対応……福光保之… 147
7 スタッフみんながコミュニケーター……中村寿和… 148
II 歯周治療におけるプラークコントロールの導入とコミュニケーション……浦口良治… 149
1.仮封とプラークコントロール/149
2.コミュニケーションは本当に必要?/150
3.未知との遭遇/151
4.取り返しのつかない10分間/152
5.歯科医師実力検定/153
6.最大のヤマ場:実態のプレゼンテーション/154
7.治る保証できます/157
8.プラークの総量規制/159
9.早く知りたい実際の方法/160
10.かかりつけ医になるには最低90分はかかる/162
6章 訪問診療におけるコミュニケーション 森田知典 ―― 164
I 訪問診療の実際…… 164
1.生活者の暮らしを訪問する/164
2.生活者の「居場所」を考える/169
3.訪問診療におけるコミュニケーションの特徴/171
4.訪問診療の事例/174
1 居宅の事例…さまざまな在宅生活者の場面,顔,情緒,家族との時間/174
2 病院での事例/180
3 施設での事例…長生園での口腔ケア展開劇:職員との対話/185
II 口腔保健と介護の実際…… 187
1.口腔ケアの可能性は大きい/187
2.口腔ケアと介護の実践/193
3.評価される現場/198
7章 生活のなかでの口腔ヘルスケアとコミュニケーション 中村譲治 ―― 201
I 健康者を相手にする…… 201
1.口腔ヘルスケアとヘルスプロモーション/201
2.健康者に対する口腔ヘルスケアの支援の場とは/203
3.口腔ヘルスケアの目指すゴールは住民のQOLにあります/205
II QOLをゴールにおいた口腔ヘルスケアの事例…… 206
1.診療室での事例/206
2.職場での事例/214
3.地域での事例/220
8章 集団への口腔ヘルスケアとコミュニケーション 川口陽子 ―― 224
I 開業医が担う日本の地域歯科保健活動…… 224
II 集団対象のコミュニケーション…… 225
III 集団対象のコミュニケーションの機会…… 226
IV 集団への情報提供の方法:健康教育…… 227
1.効果的な健康教育を行うためのプロセス/227
2.健康教育を行う際の注意点/229
3.情報量と獲得量/231
4.人の心に訴えるコミュニケーション/232
5.フィードバックの重要性/233
V 集団からの情報収集の方法:フォーカスグループ法…… 234
1.フォーカスグループとの出会い/234
2.フォーカスグループ法とは/235
3.フォーカスグループに関するいくつかの誤解/238
4.フォーカスグループを実施する際の注意事項/238
9章 学校歯科保健とコミュニケーション 鏡 宣明 ―― 241
I 学校という環境を知ろう…… 241
II 児童生徒の特徴…… 243
1.小学校の場合/243
2.中学校の場合/247
3.高等学校の場合/248
III 学校保健におけるコミュニケーション…… 250
1.児童生徒とのコミュニケーション/250
2.学校現場におけるコミュニケーション/251
3.保護者(家族)とのコミュニケーション/253
4.地域開業医(かかりつけの歯科医)とのコミュニケーション/254
5.教育委員会とのコミュニケーション/255
IV 健康診断に求められる保健情報…… 255
1.歯科検診と保健指導/255
2.DMFは何を語り何を読みとるか(検診結果から)/256
3.要観察歯(CO)の生かし方/256
4.自己評価の仕方/258
10章 地域での口腔ヘルスケアとコミュニケーション 261
I 地域での連携システムとコミュニケーション……菅原武道… 261
1.はじめに/261
2.地域で開業したら…診療所の近所とのコミュニケーション/263
3.歯科医師会で口腔ヘルスケアを目指す仲間づくり…歯科医師間のコミュニケーション/265
4.歯科医師会事業における関係者とのコミュニケーション/270
5.地域において目指すもの/272
II 他職種との連携,地域での連携システム……渡辺賢治… 274
1.切っても切れない「縁」…保健婦さんとうまくやる/275
2.保育園でのコミュニケーション/277
3.小中学校でのコミュニケーション/279
4.地域でのコミュニケーション/281
5.役場でのコミュニケーション/282
6.マスメディアを活用しよう/283
7.まとめ/285
III 医療ネットワークの実際(医療・保健・福祉のネットワーク)……森田知典… 285
1.伊万里市在宅要介護者歯科保健推進協議会はどのようにして生まれたか? システムなきシステム論/285
2.伊万里市コミュニティ・ケア会議の紹介…市町村における連帯とは何か/288
3.伊万里摂食・嚥下研究会の紹介…在宅ケアチーム形成に向けて/289
IV 海外での歯科保健医療協力とコミュニケーション……中村修一… 290
1.ネパールでの国際歯科保健医療協力/290
2.プロジェクト準備段階/291
3.現地協力機関との関係/292
4.プロジェクト現場での村人とのコミュニケーション/293
5.現地でのメンバーシップとリーダーシップ/294
6.まとめ/296
V 組織をエンパワーメントさせるための上手な会議の進め方……中村譲治・深井穫博・堀口逸子… 296
1.会議やミーティングもコミュニケーションから成立します/296
2.会議の進め方/298
3.記録のとり方・利用の仕方/299
11章 これからの歯科保健・医療のために 瀧口 徹 302
1.はじめに/302
2.これからの歯科保健医療を考えるうえで必要な基礎的認識/303
索引…… 313