やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに できるスタッフは,仕事を「視える化」する
 私達は,それぞれのプロが集まっての歯科医療を提供している歯科医院に勤務しています.
 そこで,患者さんに口を通して健康を提供し,末永く幸せな生活が送れるように,病気を治し,予防し,口腔機能を維持向上させるという仕事をしています.
 毎日の患者さんとのふれあいの中で,「ありがとう」と言われる,非常に達成感のある素晴らしい職場です.
 その歯科医院には,「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」という四つの財産が存在しています.
 さて,人間には,生まれてから避けては通れない三つの試練があると言われています.
 一つ目は死
 二つ目は病気や障害
 三つ目が,人間関係です.
 人は生きている限りどのような環境の中にいようとも,人とのトラブルに悩みます.歯科医院の中で「人がいない」「育ってくれない」「言うことを聞かない」「気力がない」など,言ってもきりがありません.しかし,これらの多くは,どの歯科医院においても同じ内容ではなく,状態によって悩みの質が違います.
 経営学においては,組織についての研究がなされていますが,私達の業界は,そんな職場の学問に触れることはありませんでした.
 したがって,悪気がなくても,なにげない言葉で人のモチベーションを下げ,組織を乱してしまい人材を業界から失っていました.
 仕事は,互いに,認め,感謝し,尊重して成り立ちます.
 それは,職種,年齢,勤務年数などには影響されません.
 誰もがやりがいのある職場を作るために,組織を改善することを基本した職場の環境についての提案をしたいと思います.
 すでに,「仕事の視える化シリーズ」では,理念の大切さ,マニュアルを作る意義,5Sの尊さ,人を財産として育てる必要性を述べてきました.この度はその応用です.
 「組織としての文化」について語ります.これはすぐにはできません.やっていることは普通でも,何カ月も,ときには数年かけ築き上げてきたものです.
 組織としての文化は,受け継がれていきます.
 「私達には組織としての文化があります」と言えるまで,ずっと変革を続けていきましょう.

歯科医院における文化とは
 歯科医院の変革の仕事をしていると,この歯科医院に組織としての文化が育ったと感じることがあります.院長に自信がみなぎり,ほほえみが優しい.言葉がけが嬉しく感じ,スタッフがすがすがしく働き,予約時間通りに診療が進められていく.
 なんとも気持ちよく時間は過ぎていくものだと感じるときがその時です.
 組織における文化とは
 「多くのスタッフが,歯科医院の理念,ビジョンや目標を共有し,自らが歯科医院としての判断や方向付け,行動を起こすこと」である.
 しかし,その状態になるまでには,改善を続けるという気力と,たえまない努力と,時間を要します.それは,数年の歳月がかかるかもしれません.
 組織は,不安定さの中で安定が成り立ち,安定からまた不安定へと移行します.いつでも悩みながら,組織は固まるのです.一丸となって,変革に取り組み,素晴らしい歯科医療を提供していきましょう.
 組織に文化が成り立つまでには,永い歳月がかかると覚悟する.
 はじめに
 できるスタッフは仕事を「視える化」する
 歯科医院における文化とは
第1章 文化のある歯科医院は朝が違う
 できる院長は,朝に余裕
 できるチーフは,朝が早い
 できるスタッフは,朝の顔が違う
 「ハイ,姿勢を正しましょ」と言って朝礼を始める
 朝から,緊張感のある朝礼を行おう
第2章 改善は,社会人としての基本を守るところから
 5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)は重要
 前回の治療内容を5秒で把握する
 聞こえる声で返事をする
 鏡で自分をチェックする
 髪は,まとめるか,ショートで
 プロとしての化粧は,清潔が基本
 爪がキレイ?
 地域の方に見られていると意識する
 できるスタッフは仕事を「視える化」する
 本日,担当させていただきます○○です
第3章 ここが違う 受付は歯科医院の華
 柔らかい視線と,美しい言葉と,そのトーン
 立って対応
 受付は,振り向かない?
 受付の花が美しい
 雨の日にタオル
 電話で名前を復唱する
 誰を優先?
 「あと何分待つの?」の質問は難しい
 本日の予約がいっぱい
 カルテを大切に扱う
 カルテの整理
第4章 待合室で診療レベルがわかる…ここだけは外せない
 待合室は,シンプルに
 ガラスや鏡は,磨く
 待合室は新鮮
第5章 誘導だけでも難しい…ホンマヤネ〜
 目を合わせる
 誘導の方法
 「こんにちは」と笑顔
 誘導のタイミング
 挨拶は顔を見て
 ブラケットの上は,レストランのテーブルと同じ
第6章 診療室の環境作り…誰もが見ている清潔感!
 診療室の香り
 スピットンの中は無臭・無色
 白衣を見ると医院の姿勢が見える
第7章 システムはプロ意識を上げる…ホ〜と言わせる何気なさ
 診療室が静か
 待っている患者さんのことを考える
 個人でできていることをシステム化しよう
 信じているから説明ができる
 「在庫管理さえできないんです」と言うな
 すべてをクリーン化して,初めてひとつの評価が出る
第8章 新人教育…「言わんでもわかるやろ」はありえない
 エプロンは,光っているほうが裏
 消毒室にこもる新人
 できないことを言い続けるより,小さな目標を達成させる
 担当の新人歯科衛生士が光る診療室
 患者さんが喜ぶ診療所
 「誰かがやってくれるから」という意識
第9章 認め合う関係…ありがとう!
 職種の尊重
 その人の常識は,歯科医院にとっての非常識のときもある
 大変なことが起こっている
第10章 情報をみんなに伝える…すごいね〜!
 情報をみんなのものにする
 理解してもらいたいときは,みんなの前で発言する
 決めたことは,いったんやってみる
 院長へのお願いの言葉
第11章 リーダーとしての苦労…そんなこと考えていたんだ
 歯科医院の未来
 指示は,明確になぜかを述べる
 院長の片腕としてのチーフ
 チーフの立ち位置は難しい
 やらない場合には,原因がある
 診療室で勤務する姿勢は,ハツラツと
 昼休みの柔軟な使い方
第12章 変革の成果…こんなことが起こる
 患者さんは,院長だけに会いに来ているのではない
 通帳をチーフに預ける
 早く帰れ
 本当の意味での仕事
第13章 離れていく人…見守っているからね
 仕事は,苦しいけれども楽しいもの
 去って行く人へ
第14章 最後に
 魅力ある歯科医院に

 今だからこそ,問い直す