やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 この度は「人材育成」についての提案を致します.
 歯科業界の将来が見えにくいという漠然とした不安感は,院長の肩にズシリと重くのしかかっています.
 しかし,私達は何も恐れることはありません.
 歯科医療サービスは,まだ医療保険制度の中で守られています.
 しかし,年金制度と同じく,医療の仕組みも国が耐えられる限界です.
 だからこそ,今の時代に人の育成をしっかりと進め,強い組織に体質を変え,落ちることのない質の高い歯科医療サービスを提供し続ける必要があります.
 この,人の育成は,新人だけを指している訳ではありません.
 院長,チーフ,プロジェクトリーダー,スタッフなどの職位に,また,すべての職種についても求められます.
 「うちは人が育たない」とおっしゃる歯科医院があるならば,このように申し上げます.
 「人を育てる仕組みがない」のだと.
 歯科医療サービスは,毎日患者さんから「ありがとう」という言葉を頂戴する最高の仕事です.地域のために,自信を持って対応していれば,困難な状況など打破することはたやすいことです.
 院長に元気がなければ,歯科医院は活性化しません.また,歯科医師は私達の業界のリーダーであることに間違いありません.
 患者さんによりよい歯科医療サービスを提供している限り,業界がいくら苦しいといえども,不安になったり卑屈になることはありません.他の歯科医院と戦う必要もありません.今通って来てくださっている患者さんを大切にして,何ができるかを突き詰めて行動していくだけです.
 私は,いろいろなところで講演させていただきましたが,終わった後に名刺交換に来られる方々は,揃ってこう言われます.「もっと話が聞きたい」「セミナーを受けたい」
 しかし,私共で対応できる歯科医院の数は限られます.
 デンタルタイアップで持っているノウハウを,隠すことなく提供していきますので,本を読みながらでもスタッフ一丸で行動をおこされてください.私の講演を,チームで聞きにいらした歯科医院が,帰りのJRの中で組織の発展についての話で盛り上がり,理念を作ってからは確かに変わった,というメールを何度も頂戴しています.デンタルタイアップが語ることは,経営学の学問に則った基本です.基本であるので,大きく失敗することなくチームで情報を共有することができます.
 今まで,医歯薬出版で出していただいた『輝く華の歯科衛生士─これからの歯科医院経営をチームで考える─』は,歯科医院経営の総論でありました.また,『歯科医院の活性化─現場で起こる変革のドラマ─』は「理念を語らなければ組織は動かない」という理念創造型経営をまとめたものでした.シリーズで始まった,『マニュアル作りで仕事を視える化』はスタッフ間で情報を共有しながら一丸になるための基盤作りを提案し,『5Sで仕事の視える化』は仕事を行ううえでの常識や基本を述べました.
 すべては,一般社会で普通に語られていることです.
 悲しいかな,私共の業界では,そんなこと…と捨てられきた部分です.しかし,医療であろうとも,仕事に対する取り組みは他の業界と同じです.
 では,組織の最も重要である,「人の育成」について考えていただきたいと思います.
 デンタルタイアップ 小原啓子
 はじめに
第1章 見て覚えろからの脱出
 組織の財産”ヒト“
  ある歯科医院で起こったドラマ「個別の能力?組織の仕組み?」
 どの段階にも新人のときがある
  こんなことが起こる
 人を育てる意味
   (1)人を育てる言葉のいろいろ
   (2)人を育てる三つの柱
 組織の中で人を育てる(OJT)目的
   (1)スタッフ全員が同じ目標を持つ
   (2)社会人としての常識を守る
   (3)技術だけでない確実な育成を行う
  歯科医院のメンターの役割
 自分の歯科医院は何を目指しているのか
第2章 組織が人を育てるとき
 能力を引き出すために行動しよう
 個人から組織の知識へ─知識創造理論
 スタッフが成長する過程
   (1)新人から信頼されるスタッフへの成長
   (2)ポイントを通過するときに変わることを覚悟する
   (3)第一ポイント スタッフからプロジェクトリーダーへの成長
   (4)第二ポイント プロジェクトリーダーからチーフへ
  こんなことが起こる 「チーフとしての態度」
第3章 新人を育てよう
 新人を育成しよう
   (1)あせらずに育成しよう
   (2)誰が育成を行うのか
  ある歯科医院で起こったドラマ「あるチーフの言葉」
   (3)何をするのか
   (4)何から教えればよいのか
  ある歯科医院で起こったドラマ「何から教えればよいのか」
  ある歯科医院で起こったドラマ「育成担当者の勘違い」
  ある歯科医院で起こったドラマ「新人育成プログラムを使って育成した新人から」
 社会人を経験した新人を受け入れる時代
  ある歯科医院で起こったドラマ「その新人の能力を生かさなければ」
  ある歯科医院で起こったドラマ「ベテランの新人DHの言葉─そして彼女は去って行った」
  ある歯科医院で起こったドラマ「新人のモチベーション」
第4章 プロジェクトリーダーになって仕組みを作ろう
  プロジェクトリーダーになったときに読んでみよう「A歯科医院の場合.歯科医院で担当制を導入するプロジェクトリーダーになったら」
 まず目的を明確にする
   (1)患者さんを深く理解する人
   (2)スタッフ相互の信頼関係を築こう
   (3)プロ意識を育てよう
 歯科として患者担当制導入までの作業
   (1)いつから行うのか
   (2)誰が行うのか
   (3)何をするのか
 何から始めればよいのか
   (1)中期計画を立てる
   (2)短期計画を立てる
   (3)報告,連絡,相談をする
 「一年計画で,患者担当制を導入する」でいい
 患者担当制が敷かれたら
第5章 チーフでも新人のときがある
 新人は新人スタッフだけではない
   (1)まず起きるチーフのトランジション
  ある歯科医院で起こったドラマ「新人を育てるには余裕がいる」
   (2)組織全体に関心を持つ
   (3)事例からチーフとしての役割を考える
    事例1 鈴木チーフの場合「一生懸命働いているのに残念な結果」
    事例2 藤井チーフの場合「違う組織でリーダーシップが発揮できるのか?」
    事例3 岡本チーフの場合「若手の育成での苦悩」
    事例4 藤岡チーフの場合「優しく人材育成することでの問題」
    事例5 佐藤チーフの場合「できるチーフの悩み」
第6章 院長だって悩んでいる
 院長に力(パワー)がないと組織は動かない
  こんなことが起こる「あるセミナー会場での出来事」
   ◆院長は組織をどう考えるのか
  院長の言葉
 語る前に自分自身を見つめ直す一体何がしたいのか
   ◆院長が歯科医院を動かすという覚悟が形になるまで
   A 過去を振り返り,なぜ歯科医師になったのかを思い出そう
   B 未来を描いてみよう
   C 今を見つめる
   D いよいよ理念を考える
  理念なくして組織は動かず
   E チームをまとめるための情報共有の手段
   F 歯科医院を全体の目で確認する
   G 適材適所で能力を発揮してもらう
   H 歯科医院の向くべき方向を確認し合う
   I 組織として持っている力は何なのか
   J 誰に何を提供しているのか
   K 一年をスパッと視えるようにしよう
  時には覚悟する
第7章 数字をみんなで語り合おう
 数字のオープン
  こんなことが起こった
   (1)数字の視える化
   (2)「財務」と「会計」の知識
   (3)経営を表す三つのツール
  外界との接触で視野を広げる知らないことを自覚したとき
第8章 歯科医院から出て外部の研修を受ける
 職場外研修を目標を持って受ける
  こんなことが起こる「Off─JTに参加する」
 自己啓発
 それでも成長しないスタッフがいれば
  こんなことが起こる「歯科衛生士の業務態度の変化」

 さいごに
 参考文献